古来より日本に様々なものをもたらした「黒潮」の源流、九州の南１０００キロに点在する島々に仮面・仮装の行事をたずね、そのルーツをニューギニアの文化にたどる。◆黒潮の流域に点在する島々を訪れる来訪神は、独特の仮面をつけたカミであったり、祖先の霊であったり、妖怪であったりする。人々は海の彼方・異界から訪ねてくる仮面神との出会いを楽しみ、お祭り騒ぎで歓待した。島人たちと来訪神との出会いは、黒潮の流れのサイクルの中で行われているように思える。人間と来訪神との出会いは、黒潮海流にのって遠い赤道直下の島々から渡来した「共通した文化要素」とみる人々もいる。そして、南の果ての黒潮のふる里と日本列島との間に、単に来訪神だけでなく、社会と文化のさまざまな分野で親しい関係があったことをうかがわせる。

１９９１年１月１７日に火ぶたを切った湾岸戦争はしだいに長期戦の様相を呈している。ハイテク技術を駆使した現代兵器はどのように使われたのか、イラク軍の装備と兵力はどの程度か、予想される地上戦のシナリオを衛星中継とスタジオでの解説を交えながら分析する。

ノルウェーの首都オスロ。画家エドワルド・ムンクは、フィヨルド（峡湾）という独特の地形が広がるここ北欧の地で絵を描いた。オスロの丘の中腹で夕陽を見た彼は「叫び」を描いた。空が人の血で染まり、人間が耳をふさいでいる。この画は全世界に衝撃を与えた。「私は自然が大きな叫び声をあげているのを聞いた」と書いている。およそ１００年前、急速に変貌する文明社会を鋭く批評し、彼は強烈なメッセージを画に込めたのだった。◆エドワルド・ムンク（１８６３〜１９４４）「叫び」２８歳作、「病める子供」２２歳作、「浜辺のメランコリー」、「マドンナ」、オスロ国立美術館エドワルド・ムンクコーナー、ムンク美術館

人間国宝を中心に第一線で活躍中のベテラン出演者で構成された、初春らしい舞と箏曲の演奏を紹介する。◆「吉原八景」は、近江八景になぞらえて吉原の四季の情景を描いた作品。◆「千里の梅」は、九州太宰府へ流された菅原道真の徳をたたえた作品。◆「尾上の松」は、名松・尾上の松の長寿にちなみ、人々の幸せを願い祝った作品。◆「詩曲一番」は松村禎三作曲、古典の技法と古典の持つ音楽性を新しい感覚でとらえた作品。

男女雇用機会均等法が施行されて５年。人手不足を背景に企業への女性進出が進み、その職種も拡大しているといわれる。そんな現代社会に生きる女性たちの本音を、サラリーマンの悲哀を交えてユーモラスに切なく描く。◆本社から栄転してきた新任部長・杉一平の歓迎会をかねて一泊の社内旅行が計画された。バスの中から男たちは大騒ぎ、目的地に着くころにはすっかり酔いが回っている。おまけに杉部長の「女性登用論」は女性をおだてるジェスチャーにすぎないと知ったＯＬたちは総反撃に出る。

人間国宝、蒔絵の田口善国。１９２３（大正１２）年、東京麻布で医師の家に生まれる。幼い時から蒔絵に興味を寄せ、蒔絵を松田権六に絵画を奥村土牛に学び、日本の伝統工芸・蒔絵の研さんを積む。古法の上に現代感覚を取り入れ草花や動物の小宇宙を題材にざん新な作品を発表し、細密な「割り貝」技法に新境地を開く。光の陰影を強く意識した表現技術を確立、伝統の蒔絵の継承に情熱を注ぎつつ光の世界を開く執念は衰えを見せない。◆【重要文化財】群鹿蒔絵笛筒（伝本阿弥光悦作）〔大和文華館〕◆【その他】蝶文蒔絵平棗（田口善国作）、ピアノとルリ鳥蒔絵盃、すすき野蒔絵飾箱、鮒蒔絵切貝水指

京都国立博物館で開催された、平安末期から鎌倉初期までの仏教彫刻の変化をたどる「院政期の仏像−定朝から運慶へ」展から、その時代の名作を紹介する。◆１０５２年は末法の世の始まりとされ、朝廷や貴族は極楽往生を願って次々と寺や仏像を造りはじめた。平等院の阿弥陀如来坐像は仏師定朝の作で、定朝様といわれる様式の理想型を示している。定朝の弟子たちは、定朝様に忠実な院派、独自の様式をつくっていった円派、のちに康慶・運慶をだしてダイナミックな鎌倉新様式につながっていく奈良仏師の三派に別れ、日本独自の仏教美術を生み出していった。

「読書する少女」。肩越しに窓の光が差し込み、本に反射して彼女の顔に柔らかく当たる。光と少女たちをこよなく愛し、広いキャンバスに描きつづけた印象派の画家、オーギュスト・ルノワール。描く表情や服装に世紀末の移りゆく時代相・風俗が活写されている。彼の絵にはくつろいだ表情と、素朴な生き生きとした市民がいる。「私は絵筆で愛を交わすのだ」と語っていた。近代化していくパリは変わり、以後暗い絵画が多くなる。◆ピエール・オーギュスト・ルノワール（１８４１〜１９１９）「読書する女」１８７４、「ピアノを弾く娘たち」１８９２、「ぶらんこ」１８７６、「雨傘」１８８１−８６、「赤い道化師」１９０９、アンドレ作「家族を描くルノワール」１９０１