二人暮らしに戻った熟年の夫婦。夫は友人の娘に、妻は知り合った青年にと、それぞれが若い相手に恋を感じていることに気づきとまどう。◆定年後、閑職勤めの米村彰一（杉浦直樹）は、妻・文子（白川由美）と二人暮らし。子供たちは独立し、何不自由ない生活だが、夫婦の会話は途切れがちで何となくむなしい。友人の朝川隆介（名古屋章）から、娘の翠（中村あずさ）に結婚相手を捜してほしいと頼まれ、引き受ける。文子は脱サラして大工となった芝山滋彦（橋爪淳）と知り合い、翠に似合いそうな相手と思いつつ、自分も心ひかれる。

昭和５０年代後半から６０年代にかけての、大和路にある古寺の復興造営・解体修理の記録をたどる。◆奈良の西の京にある薬師寺では、天平時代の７３０年に建立された東塔のみが残り、西塔は１５２８年に焼けて失われたままになっていた。この西塔が１９８１年（昭和５６）、見事に再建された。先に再建された金堂とあわせ、東西両塔の並び立つ姿は、天平の昔をしのばせてくれる。西塔の再建と相前後して、桜の名所・吉野では金峯山寺蔵王堂の解解体修理と、修験道で知られる大峯山寺の解体修理が行われた。

日本庭園の中で類まれな名園・桂離宮。後陽成天皇の弟で運命的な生涯を送った智仁親王と、智忠親王の親子二代にわたって築いた日本初の回遊式庭園である。王朝の美を再現しようと雅な趣向を凝らし、寸分のすきもない風雅な庭園を構成する。一時忘れ去られていたものを１９３３（昭和８）年、ブルーノ・タウトによって絶賛され再び注目を集めた。池を巡り建物配置の妙を見ていくと、訪れる人々は美のドラマの世界に誘いこまれ感動し驚嘆する。◆桂離宮〔京都府〕、智仁親王尊像〔相国寺慈照院〕、洛中洛外図屏風〔林原美術館〕

中国・東南アジア・中近東に取材し、宝物に潜む古代の高度な工芸技術や東西文化の交流の跡をたどり、“シルクロードの終着点”といわれる正倉院の世界を描く。◆小さな器の中に異文化が出会い、それぞれの原材料が結合して一つの工芸の世界を形作る。１２００年もの長い年月、人類の至芸を完全な姿で保存し続けた校倉造りの内部に初めてハイビジョンカメラが入り、今日の姿を余す所なく捉えた映像文化財。

古代エジプトの全盛期を築いた「ラムセス二世」の像や『ネバムンの壁画』、『死者の書』などの遺物からファラオの時代を描く。◆生きながら神としてあがめられ、エジプト史上まれに見る大王として君臨したラムセス二世。巨大な建築の造営に力を注ぎ、神の化身となって国家を支配、独特の現人神文明を形成した。太陽神と一体になった『アブ・シンベル神殿』は歴史に名高い。

１３００年以上の歴史を持つ長野県山ノ内町の湯田中・渋温泉郷を訪れる。◆この地の源泉の数は１８５か所、全国有数の湧出量を誇る。善光寺参りの奥座敷として栄えてきたその名の通り、温泉と共に歩んできた町である。冬の寒さが厳しいこの地方では、猿も温泉に入り、見る人の笑いを誘う。温泉に雪が舞う頃、湯けむりの中で暮らす人々の生活を描く。

打出の小づちを持ち、米俵に乗ってにっこり笑う福の神・大黒天。そのルーツは、ヒンズー教の破壊と再生の神・シヴァ神とも、食料を守る厨房の神とも、さらに神仏習合によって大国主命と結び付いたともいわれる。室町時代以降、日本の経済体制の変遷の中で次第に富と結び付いた福の神として日本化し、全国津々浦々にふくよかな姿を見せるようになる。また江戸期七福神信仰の流行とともに、その一員となり定着していく過程を追う。◆【重要文化財】大黒天立像〔観世音寺〕、毘沙門天立像〔浄楽寺〕◆【その他】大黒天半跏像〔西大寺〕、大黒天像〔観世音寺〕、布袋尊〔弘福寺〕、桐野大黒天祭り〔佐賀県〕

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆山本直純：音楽家。１９３２年東京生まれ。クラシックからＣＭ音楽にいたるまで幅広い分野で活動。また、日本フィルハーモニー交響楽団客演指揮者を経て、新日本フィルハーモニー交響楽団指揮者。主な作品に映画音楽「寅さん」シリーズ。