国内に残された唯一の原生林地帯・知床、ここは国立公園でありながら大半の樹木が国有林でもある。この原生林の大規模な伐採を林野庁が計画している。原始の森を守れという声、経済苦況打開のため伐採せよという声など、激しく対立する意見の中、番組ではこの森は一体だれのものかを問う。

明治維新に出発した近代日本は、アジアの大国になりながら、昭和で敗戦の破局に至った。作家・司馬遼太郎氏がその昭和へ至る歴史を、明治・幕末まで遡って語るシリーズ。（全１２回）◆第１０回は、幕末動乱期に、唯一人新国家の青写真をもっていた坂本龍馬の、民権尊重の思想が、明治維新では骨抜きにされ、日本が英米よりドイツに傾斜して行く姿を明らかにする。

１９８７年３月幕を閉じた南氷洋商業捕鯨の最後の船団に同乗取材。捕鯨全般について紹介するとともに、捕鯨ひとすじに打ち込んできた人々の姿を追う。◆１９８６年１０月２８日、捕鯨母船第３日進丸が横浜港を出航、１０月３０日に下関港から４隻のキャッチャーボートを従えて南氷洋に向かった。ノルウェイで建造された日進丸は全長１９４メートル幅２４メートル、ノルウェイで開発された捕鯨技術が満載されている。船団は１１月２６日南氷洋に到着。大発生するオキアミを求めて南下してくる数１０万頭の鯨群を追う。狙うのは体長１０メートルほどのミンククジラ、捕獲した鯨は解体し、余すところなく利用する。

お遍路さんから厚い信仰を寄せられている善通寺。弘法大師空海（７７４〜８３５）が唐から帰国後、８０７年に建立したその寺を作家の竹西寛子さんが訪ねる。◆善通寺には空海が唐の恵果和上から授かったといわれる「金銅錫杖」や、空海が書写し母がその文字の脇に仏像を描いたと伝えられる「一字一仏法華経序品」など空海ゆかりの品々が多く残されている。錫杖は僧侶が持って歩く環（かん）のついた杖で、獣や毒ヘビを追い払う道具として用いたが次第に悪魔を退治する法具として重要な意味を持つようになった。人々は錫杖の音を響かせ、その音に空海の心の声を聞きながら四国八十八カ所のへんろ道を巡る。

両側大腿骨頭壊死、それに慢性肝炎という重病を克服、新曲のレコーディングも果たした美空ひばりの退院後初のテレビ出演。年末特別番組。◆「愛燦燦」にはじまり、懐かしいヒット曲も含めて全１６曲を歌う。ゲストには萬屋錦之介、山城新伍、松方弘樹、横山やすしらを迎えて激励の言葉を贈る。

江戸から明治へと大きく変化する時代に翻弄され続けた男の一生を描くドラマ。島崎藤村の原作を回想形式に脚色。◆明治１９年、木曾・馬篭本陣の当主・半蔵（財津一郎）は、維新以来の心労のため精神に変調をきたしていた。冬の夜、ついに錯乱して菩提寺の万福寺に火を放ち、住職らに取り押さえられる。以来、半蔵は座敷牢に幽閉される。新時代に学問を生かしたいと思っていた半蔵にとって、人生は束縛の連続だったのだ。

静まりかえった秋の武蔵野の雑木林を描いた、菱田春草の代表作「落葉」の誕生に秘められた、画家の内面のドラマを描く。◆春草は１８７４年（明治７）長野県に生まれた。１５歳のとき画家を志して上京、翌年東京美術学校に入学する。のち、没骨描法を試みるなど、日本画に新境地を拓いた。１９０８年に視力が哀えはじめるが、「目を病んで不自由になり思いがけなくも自然に対する心の目がひらけた」と言い、１９０９年に大作「落葉」を制作する。

日本の高度経済成長を支えた陰の主役の一つは、全国に８７万軒以上あるといわれる中小の下請け製造業者である。いま、それらの町工場に何が起こっているのか。３５年間旋盤工として働くかたわら作家活動を続ける小関智弘さんが、東京都内にある町工場を訪ね、そこに生きる人々の意見と生活を３日間にわたってリポートする。（１９８７年５月１２〜１４日、全３回）◆第２回目は、戦後間もなく創業し、高度経済成長以降のドルショック、石油ショック、円高不況というきびしい経営環境の中で工場を育て守ってきた経営者から生き残り方法などを聞く。