口語歌集がベストセラーになったことで注目を集める口語短歌だが、６０年前の大正期にも口語で短歌を詠んだ少女がいた。１６歳で亡くなった歌人・山川弥千枝の短歌を紹介しながら、それを生んだ時代背景と彼女の人物像を探る。◆文語による短歌が全盛だった時代に出した作品集「薔薇は生きてる」は当時ベストセラーとなり、川端康成や高見順らから高い評価を受けた。歌人の母を持ち、ドイツ語教授だった父を早くに亡くした９人兄弟の末っ子。１３歳から短歌を作り始め、８０余りの歌を残して１９３３年（昭和８）３月に肺結核のため早逝した。

名古屋市有松町は隣の鳴海町と共に、江戸時代から絞りの名産地として名高い。広重の『東海道五十三次・鳴海』には、必ず絞りの風景が登場する。ここの絞りは世界に類がないほど種類が多く、独特の風格がある。◆たくさんの工程はすべて分業制で、営々と作り続けられてきた。多くの人の熟練した技が結集して３８０年の伝統を誇りながら、「有松鳴海絞」は多彩な絞り模様を現代に受け継ぐ。

「昆虫記」で名高いファーブルゆかりの地を、画家・安野光雅氏が訪れ、その水彩画にビデオによる風景や昆虫の姿を重ね合わせて構成するシリーズ。（１９８８年９月２６日終了、全２回）◆前編では、苦学していたファーブルの前半生と、昆虫記の冒頭に登場するフンコロガシの珍しい生態を紹介する。フンコロガシはその名の通り、動物のフンを玉にして転がし、自分のエサとしたり卵を産みつけて幼虫のエサにしたりする昆虫。日本にはおらず、ファーブルの国フランスにも５種類ほど住むだけだが、農業や牧畜のあり方の変化から減ってきている。

新緑の中にたたずむ室生寺の五重塔や優美な仏像を紹介し、記録映画作家の羽田澄子さんが女たちの祈りの跡をたどる。◆かつて女性は高野山をはじめ多くの仏教の聖地への立ち入りを拒まれてきた。そうした中で室生寺は女たちの心を受け止めるかけがえのない寄り所であった。金堂に安置された堂々たる釈迦如来は、黒漆で塗られた端正な顔立ちでカヤの一木造り、平安時代始めの作である。ここで女たちは子に恵まれ、乳を授かるよう祈ったのだろうと羽田さんは考える。創建当時のものと考えられる朱色の五重塔の高さは１５メートル余りで、女人高野にふさわしく日本最小の可憐な塔である。

１９８８年秋に初来日したゴッホの絵「タンギー親爺の肖像」の背景に描かれた浮世絵の謎を通し、ゴッホの日本への思いを探る。◆「タンギー親爺の肖像」は、ゴッホが愛した画材店の主人タンギーを華やかな色彩で描いた傑作である。この絵の背景には、富士・桜・朝顔などを題材にした浮世絵らしきものが６枚、描かれている。ここに浮世絵が描かれた秘密は、１００年前ヨーロッパに巻き起こった日本ブーム「ジャポニスム」にあった。ヨーロッパ各地に現存する浮世絵を訪ね、この６枚の原典を解きあかす。

冷たく澄んだ水の川底に住むトビケラの幼虫は、種類ごとに異なった生活を営んでいる。それぞれの一風変わった巣づくりから、成虫になるまでの意外な生態を追う。◆川底の石をひっくり返すと、枯葉のかたまりが出てくる。その中に隠れ住んでいるのがトビケラの幼虫。日本には約３００種のトビケラがいる。小枝を切り揃えて束ねたような巣を持ち歩くトビイロトビケラ、流れが早く石の多い場所には小石を固めて巣にするニンギョウトビケラ、クモのように石のあいだに網を張るヒゲナガカワトビケラなど。やがて蛹をへて成虫となり、水面近くを群れ飛ぶ。

斬新な映像表現にアーティストの素顔を浮き彫りにするトーク・メッセージを加えて、ポップス・ロックミュージックを届ける若者向けスタジオ音楽番組。（１９８８年４月９日〜１９８９年３月２５日放送）◆第１回の曲目は、「ＭＯＯＮ」レベッカ、「ＭＡＹＢＥ　ＢＬＵＥ」ユニコーン、「君が心配」ザ・ペッパーボーイズ、「ＧＵＡＮＢＡＲＥ」酒井法子、「刹那主義」立花理佐、「ＶＩＳＩＯＮＳ　ＯＦ　ＢＯＹＳ」松岡英明、「ＫＩＬＬＩＮＧ　ＭＥ　ＷＩＴＨ　ＹＯＵＲ　ＶＯＩＣＥ」「ＭＯＮＯ　ＴＯＮＥ　ＢＯＹ」レベッカ。

冬なお暖かい温泉の街・湯河原を訪れ、静かな街並みと人びとの暮らしを伝える。◆神奈川県湯河原町は静岡県に接し、箱根の外輪山と相模湾に囲まれた温泉地である。静かな佇まいの街並み、万葉亭、文豪や歌人が逗留した宿、また、町を流れる千歳川、土肥城跡の城山などを紹介する。他に、湯河原みかんのとり入れの様子、夕方の芸し芸妓さんたちの出勤、福浦漁港でのせり風景、カマスの干物づくりなど、温泉街の様々な暮らしを紹介。