「シリーズ・４１年目の夏に」の３回目。応召先の旧満州から内地の妻あてに出されたもと音楽教師の葉書の裏にしたためられていた楽譜にスポットを当て、改めて戦争を見つめ直す。シリーズ４１年目の夏に。◆読売新聞が募集した“昭和の遺書”には約千通の応募があった。佐倉久隆さんもそのひとり。望郷の思いを込めて軍事郵便葉書にしたためられていた父の歌を、一人でも多くの子供たちに歌ってほしいと思ったのがきっかけだった。久隆さんの父・晴夫さんは小学校で音楽を教えていたが、１９４１年（昭和１６）に召集を受け中国大陸へ向かい、戦後になって現在の黒竜江省の地で病死、帰らぬ人となった。久隆さんの思いを受け、かつて晴夫さんが教えていた小学校に唱歌「遠足」が響いた。

映画監督・篠田正浩さんが愛媛県大三島の大山祇神社を訪ね、展示されている大鎧を紹介し、その背後にある「滅びの美学」を探る。◆西洋の甲胄が寸分のすき間もなく防御できるよう合理的・科学的に作られているのに対し、日本のそれは非常に動きがあり、すき間が大きい。「鎧という衣裳に、死を覚悟する人間の壮絶な魂のうごめきを感じる」と語る篠田さん。中世の総合芸術であり、戦場に赴く武将たちの華麗な死装束であった大鎧に日本人の美意識と精神性をみる。

九州・福岡の小さな町に伝わる伝統の奉納能に、小学校最後の夏休みをかけて取り組む４人の子供たちの７７日間を、そのうちの一人の日記という形で描く。◆福岡県三池郡高田町開は、柳川藩が累代にわたって干拓し開拓した土地で、有明海をのぞむ人口１万８千人の小さな町。鎮守さまの宝満神社へ奉納される新開能の起源は１７１６年と古く、父から子へ子から孫へと伝えられてきた。しかし仕事の少なさから地元を離れる若者も多く、今では出演者に困ることもあるほど。開小学校６年生の末吉隆弥君、末吉茂君、只隈慎一郎君、西山幸祐君の４人はこの能に出演することになった。８月５日の持寄り（配役決定）から１０月１７日の奉納の日までの７７日間を追う。

徳光和夫アナウンサーがキャスターを務める情報番組。この回の特集では、小笠原諸島の中心をなす父島とその周辺の島にスポットをあて、人々の生活や島の様子を紹介する。◆小笠原諸島は、東京から南南東約１０００キロの太平洋上に浮かぶ太陽と海と緑の楽園である。海底火山の隆起でできた島々は変化に富む景観をなし、亜熱帯性気候で１年中泳げる。また海の透明度は世界有数を誇っている。

地方巡業の奇術師夫婦と弟子の少年の心温まる人情喜劇。原作：井上ひさし（１９８６年６月２日〜６月２０日放送、全１５回）◆奇術師・天坊はお浜と旅まわりの一座にいる。お浜は元サーカスの曲芸師だったが、ケガをして引退、天坊と夫婦になった。東北の米沢公演で天坊の奇術が評判になり、客も増える。天坊の自慢は焼いた鉄棒をつかむ気合術や物品取り寄せ術である。そのタネと仕掛けを見破る少年・浩志が現れた

１９８６年３月２２日に放送された「今、あらためてテレビとは」に対する反響を紹介、再討論する。◆３月２２日の番組で問題になったのは、センセーショナルな扱い、人権やプライバシーの侵害などの過剰報道、また真実を伝えているか、ジャーナリズムとしてなすべき事をしているか、であった。その日に寄せられた反響の電話だけで６００本に上った。テレビの現状を憂うもの、人間性の欠落を非難するものなど厳しい批判も多かったという。

何百という小さな穴を彫った型紙を一分の狂いもなくつなぎ合わせて、のり置きをする。このような超技法を駆使して作られる江戸小紋は、武家から町方のしゃれ着となり、明治以降は高級品として人々から愛された。◆機械全盛の現代、型紙も型彫りも染め付けも、伝承通りに限界まで挑戦する職人の心意気。「機械によるからっぽの芸でなく人の手を大事にし、温かさ、親しさあふれる人の心を後世に伝えたい」と小宮康孝は言う。

アパルトヘイト、人種隔離政策をとり、世界各国から非難の対象となっている南アフリカ。大多数の黒人を除外してインド系、混血系と白人だけの議会を作ってから人種暴動が激化し、今や路線をめぐって黒人同士の殺し合いまでに発展している。白人だけの都市・ヨハネスバーグ近郊の黒人居住区ソエトには、１５０万の黒人が、完全に白人から隔離された生活を送っている。殺人が殺人を生み、抗争はエスカレートするばかり。また白人側も右翼と進歩派の亀裂が深くなっている。取材の難しい南アフリカでの動きを伝えた番組。