修学旅行で広島に行った大阪の高校２年生たちが、翌年の夏休みに再び広島へ行こうと運動を起こす。修学旅行では、年老いた被爆者たちが生徒たちを広島の平和公園に案内し、今まで誰にも話さなかった被爆体験を語った。すさみがちな高校生たちと原爆で青春を失った被爆者との交流が芽生えた。生徒たちは幾多の試練を乗り越えて感動的な再会を果たす。番組では、生徒たちに与えたヒロシマの衝撃は何だったのか、旅行実現までの１年間を記録し、平和の大切さだけでなく人を見る目の原点を問いかける。

信州人物風土記は、明治～昭和期に各界で活躍した長野県ゆかりの人物を取り上げ、その功績と生涯を解説するシリーズ。◆今回は、日本最初の山岳案内人組合を結成し、北アルプス登山ルート開発、大沢小屋と針ノ木小屋を建てるなど、わが国の近代登山に多大の影響を与えた百瀬慎太郎を紹介する。◆百瀬慎太郎（１８９２～１９４９）は、長野県北安曇郡八日町の旅館「対山館」経営者の長男として生まれた。旧制大町中学在籍時に白馬岳に二度登ったことを契機に、登山に強く惹かれるようになり、日本山岳会に入会。家業の旅館を経営しながら１９１７（大正６）年に日本最初の山岳案内人組合である「大町登山案内人組合」を設立した。その後、１９２６（大正１５）年に大沢小屋、１９３０年（昭和５）に針ノ木小屋を建設し、近代登山の先駆者として活躍した。また、若山牧水門下の歌人でもあり多くの歌を残した。「人を想えば山恋し　山を想えば人恋し」と北アルプスへの思いを詠んだ歌は、人々に親しまれている。大町の風景や、山小屋などゆかりの地を訪ねて、百瀬慎太郎の業績と人となりを紹介する。

日立市には、豪華絢爛たる笠鉾の上で操り人形芝居が優雅にくりひろげられる「日立風流物」が伝えられている。５層の城郭をかたどった唐破風造りの屋形を取付けた山車の上では、３０～４０体の人形が同時に早がわりをする。前館のせり上げ開き、山車の回転による表館と裏館の早がわりは、日立風流物にしか見られない。保存会初代会長の根本甲子男さんの話をききながら、祭りを楽しむ日立市民の表情を追う。

ポーランドの首都ワルシャワのパビアック博物館に１体の日本人形が展示されている。その名は「タイカ・キワ」。人形を作ったのはポーランドのレジスタントでカミラという女性だ。カミラがパビアック収容所の中で作ったこの人形には、愛する夫への想い、はるかな日本への憧れ、そして平和への願いがこめられていた。日本人形「タイカ・キワ」のたどった道を追いかけながら、日本とポーランドとの関係、平和の尊さを考える。

核燃料輸送をめぐる安全対策を取材・特集したニュースリポート。◆原子力発電所の燃料が加工工場から東京都心を通って各地の原発へ運ばれる。その回数は１年に２００回にのぼる。輸送のたびに大勢の警察官がものものしく警備する一方で、事前には一切明らかにされていない。核燃料は使用済燃料に比べて危険度は低いといわれているが、核燃料をのせたトラックが都心をまかり通る現実は無視できない。◆星野誠記者によるレポート部分（６分間）を公開。

文学作品のゆかりの地を訪ね、風景やそこに暮らす人、その作品に影響を与えた人にふれることで、文学作品のもつ「もうひとつの世界」を探る、文学紀行番組の新シリーズ。第２集まで制作・放送された。（第２集／１９８３年１０月８日～１９８４年３月３１日放送、全２６回）◆第１７回は谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」を取り上げる。東京生まれ東京育ち、生粋の江戸っ子ながら、谷崎は関西に長く住んだ。激しく移り変わる時代の中で、地味で静謐な日本の伝統的美に焦点を当て描いた代表作「陰翳礼賛」から、彼の文学論に迫る。様々な女性遍歴を経て、生涯の妻となった谷崎松子さんへのインタビュー、評論家松永伍一の解説とともに、谷崎ゆかりの地や日本の歴史的建造物である知恩院、本願寺を紹介。文学論とともに谷崎の豊かな人間性も追いかける。

作家・檀一雄が晩年を過ごしたサンタクルスを高倉健がたずねる。サンタクルスは檀にとってどんな土地だったのか。高倉健の目を通して、檀の作家としての苦悩、孤独、愛を描く。◆彼は晩年の１年４カ月を、ポルトガルの海浜の町サンタクルスで過ごした。そしてこの生活を「生涯でこれほどの至福の期間はなかった」とエッセイで述懐している。

七宝町周辺の水郷の風景と、黙々と七宝焼に取り組む職人の姿を描く。◆土をはう熱気が蒸れる尾張の水郷。水郷の響きはすがすがしいが、ここに住む人々の歴史は水を治める闘いの日々でもあった。石垣の土台高く築いた水屋造り、湿地に植えたレンコン。水に恵まれ、その水に泣かされた農民には、ハスの花の美しさに似た七宝焼の技が伝わった。◆七宝焼は１３０年ほど前から農民の副業であった。◆七宝焼〔愛知県〕