秋、北海道の川に北太平洋での４年におよぶ長旅を終えたサケの大群が戻ってくる。今、日本の川に帰ったサケは全て、人工ふ化事業のために捕獲される。撮影班は、人間の手の及ばない知床最深部に自然産卵するサケを追う。きびしい冬を河床の砂礫の下で過ごした稚魚は、春に川を徐々に下って海へ向かう。ふ化場からも多くの稚魚が放たれる。しかし川には多くの危険が待ち受けている。再び母なる川に戻れるのはほんのわずかだ。

写真家・土門拳氏の著書「死ぬことと生きること」をもとに、被取材者たちの証言や足跡を訪ねながら彼の原点を探っていくドキュメンタリー。◆土門氏は山形県酒田市出身、“写真の鬼”と形容されている。主な作品は「室生寺」「古寺巡礼」、そして「ヒロシマ」「筑豊のこどもたち」に代表される報道写真家である。“仏像とリアリズム”土門氏はなぜ対象的とも思える２つのテーマを追い、そして鬼といわれるのか。

沖縄の地酒・泡盛の見直しを図るべく、そのルーツを探すために、タイ国や鹿児島、沖縄県内各地を訪ねる、そして琉球王国が東シナ・南シナのふたつの海をまたにかけて栄えた、１４世紀から１６世紀の大航海時代を探る。◆１４６０年、貿易風と黒潮に乗って伝来したという泡盛。以来、沖縄の先人たちは独特の黒こうじをつくり出し、製造法を根づかせ、伝統の酒にまで高めた。戦後はアメリカの占領によって洋酒文化が流入してきたが、“島酒”はいまも人々に愛されている。琉球放送創立３０周年記念特番。

古代シルクロードの東西交易を担った天性の国際商人・ソグド人。８世紀、アラブの襲撃を受けソグドの都は壊滅し土砂に埋まった。現代、中央アジアの最深部に位置するタジク共和国にその痕跡がある。一部生き残ったソグドの民は山奥深くに逃げ延び、以来千年余り、その末えいはひっそりと暮らしていた。タジク共和国の首都ドシャンベ市やレニナバード市の近況とともに、その昔栄えたペンジケント遺跡やサファラバード地区でソグド人と会う。◆ペンジケント遺跡、ムグの塔、「赤い川」遺跡

町の半分が水没するダム計画が山間の町を揺さぶっている。苦悩する小さな町の４年間の姿を追い、地方自治の厳しい現実を問いかけるドキュメント。岡山県奥津町。人口３８００人の過疎の町は、１９５７年（昭３２）に建設省が示した苫田ダムの計画によって、町の南半分４７７戸が水没することになっている。計画を強行しようとする国や県に対して、町はダム阻止を“町是”に掲げて阻止条例をつくり、あくまで抵抗する。

２０世紀初頭のフィンランド。９歳の少女カトリは３年前、出稼ぎに出たまま帰らぬ母を待って、祖父母と一緒に暮らしていた。カトリは苦しい家計を助けるために家畜番として屋敷に雇われることになる。カトリの持ち前の明るさと聡明さは多くの人々の心をとらえる。色々な人との出会いや別れを体験していく中で、カトリは成長していく。その後、次に雇われた屋敷の奥さん・ロッタに気に入られたカトリは、屋敷の主人が亡くなった後、ロッタの実家のあるトゥルクに一緒についていき、そこから学校に通わせてもらえるようになる。そしてある日、音信不通だった母サラがトゥルクの病院にいるという連絡が入り、カトリは母と６年ぶりの再会を遂げる。原作：アウニ・ヌオリワーラ。世界名作劇場。（１９８４年１月８日〜１２月２３日放送、全４９回）

物質的には恵まれている日本の子供たちに現れ始めた身体や心の問題を追う。（１９８４年４月２９日〜５月４日放送、全３回）◆第３回は都市化の進む農村部の子供たちがテーマ。秋田県本庄市の由利組合総合病院では、昭和５０年ごろから原因不明の頭痛や腹痛、おう吐などを訴える子供たちが増えてきた。生活環境調査などの結果、昭和４０年代に入って本格化した企業進出などで急激に、しかもいびつに都市化している農村部の生活が子供の心にさまざまな影を落としていることが分かってきた。番組では、由利組合総合病院のカウンセリング・ルームに５０日間カメラを据え、子供たちの生の声を通して今日の農村の素顔を探った。

えん罪を晴らした後、社会復帰した免田栄さんの生活とその証言を軸に、えん罪事件の起こる構図と無罪が証明されるまでの軌跡を追ったドキュメンタリー。◆免田栄さんは、日本初の死刑囚に関する再審裁判（免田事件）の被告だった。２６歳から５７歳半ばまでを獄中で恐怖を背負って生き抜いた。◆戦前の自白強要の思想が残る中で起きた冤罪事件は数多い。