夏目漱石の妻・鏡子の書いた「漱石の思い出」や、娘・筆子の手記からお金に関するエピソードを拾い出し、夏目家の家計簿や漱石の金銭感覚を通して、漱石の人生哲学をドラマ仕立てで描く。◆１９８４年１１月１日、２１年ぶりに紙幣のデザインが新しくなった。千円札の肖像は夏目漱石。一方、漱石単身赴任の地・英国ロンドンでは８月２５日「漱石博物館」がオープン。新たな漱石ブームの兆しがある。番組では、漱石を文豪としてではなく、転勤や単身赴任を繰り返したサラリーマン・夏目金之助としてとらえ、最後まで自分と他人との関係に苦悩し続けた彼の実像に迫る。

ポーランドで戦争の悲しさ、悲しみを今に語りつごうとする大阪の新聞記者たちによる“戦争展”と同時に「ヒロシマ・ナガサキ戦争に反対する原爆記録展」が開かれた。これを機会に現地を訪れた４人の新聞記者を追うドキュメンタリー。◆ワルシャワのスタレ・ミヤスト（旧市街）は１６世紀の美しい町並み。しかしこの町は第２次大戦で破壊されつくした。戦後、市民は７年６カ月の歳月をかけてこの美しい町を再現させた。ワルシャワの東、マイダネック収容所ではナチス撤退までに３６万人が殺された。トリブリュカ収容所の碑には、「我々の運命があなたたちへの警鐘です」という文字が刻まれている。

文学作品のゆかりの地を訪ね、風景やそこに暮らす人、その作品に影響を与えた人にふれることで、文学作品のもつ「もうひとつの世界」を探る、文学紀行番組の新シリーズ。第２集まで制作・放送された。（第２集／１９８３年１０月８日～１９８４年３月３１日放送、全２６回）◆第１７回は谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」を取り上げる。東京生まれ東京育ち、生粋の江戸っ子ながら、谷崎は関西に長く住んだ。激しく移り変わる時代の中で、地味で静謐な日本の伝統的美に焦点を当て描いた代表作「陰翳礼賛」から、彼の文学論に迫る。様々な女性遍歴を経て、生涯の妻となった谷崎松子さんへのインタビュー、評論家松永伍一の解説とともに、谷崎ゆかりの地や日本の歴史的建造物である知恩院、本願寺を紹介。文学論とともに谷崎の豊かな人間性も追いかける。

愛知県北設楽郡東栄町は深い山ひだの中にある。天に至る石垣、切り開いた段々畑。人々はきつく辛い労働を強いられる。◆樹齢２５０年のしだれ桜で名高い龍洞院では、春の到来の遅い中で４月１０日の『潅仏会（花祭）』に御詠歌を歌う。うら淋しい音色が本堂を包む。山里に日差しが戻り山菜採りが始まる。寺の裏山には満開のしだれ桜。点々と座る石仏の回りを、霊場を訪れる人々が春風に乗って巡る。◆【重要無形民俗文化財】花祭〔愛知県〕

“山原（やんばる）シャンソン”の歌い手・石坂真砂さんが、学童疎開船「対馬丸」の沈没で失われた友の遺族を訪ね、思い出を語る。◆１９４４年８月、沖縄からの学童疎開船「対馬丸」は、鹿児島県悪石島沖で米潜水艦の魚雷攻撃により沈没、８００余りの幼い命が失われた。そして４０年後、海に沈んだ友を想う石坂真砂さんのＬＰが完成した。石坂さんは沖縄本島北部の出身で、彼女の唄うシャンソンはその地名をとって山原シャンソンと呼ばれ親しまれている。

何不自由なく育った現代っ子のいとこたちに突然ふりかかった、戦後の混乱の痛ましい悲劇のつめ跡を描く。康子は、母方のいとこたちと正月に集まった時、自分たちにはもう１人、どこかにいとこがいるらしいという疑問を抱く。康子の母も、叔父や叔母も、長い間そのことを隠してきた。康子と拓磨は、秘かに祖母の戸籍から調べはじめた。やがて意外な事実につきあたる。

東はカスピ海、西は黒海、２つの海の中間を走る大コーカサス山脈。中国とローマを結ぶシルクロードには、税金の高いササン朝ペルシャを避けて、カスピ海北岸をう回しコーカサスを縦断する道があった。コーカサス北ろくの遺跡で、唐時代の中国製の絹と漢字が書かれた紙片が出土した。中国製絹が発見された地点としてはシルクロードの最西端。古来、東西の戦いの歴史を刻んできた地帯である。アゼルバイジャン、アルメニアを経てトルコへ。◆死者の町、モシチェバヤ・バルカ（亡骸の谷間）、ワルジア岩窟都市の遺跡、シエマハ門、アルメニア使徒東方聖教会

日本三景の一つとしてたたえられてきた宮島の春を、様々な春の行事を通して紹介する。◆１月５日の朝、厳島神社正面の高舞台で舞楽「抜頭」が舞われる。これは奈良時代、大陸から渡ってきて宮廷の手厚い保護のもとに日本にだけ残った舞楽。「抜頭の舞」の紀元はインドである。猛獣に殺された父のかたきを討って山から帰ってくる息子の姿を舞に仕立てたもので、厳島神社の宮司・野坂家に代々伝えられてきたものである。