第９０回の直木賞を受賞した、神吉拓郎の短編集「私生活」から５編を原作とする２０分完結５日連続のドラマシリーズ。各回の主人公を田中邦衛が通して演じる。（１９８０年１０月７日～１１日、全５回）◆第３回は「もう一人の私」。住みこみの家政婦は、夫が女と出て行き、子供は姉に預けていると云っていたが、ある日出ていったきり戻らなくなる。夫とよりを戻したのかと思っていたが、近所の人の話ではむしろ彼女のほうが男好きなのだという。そういえば、夜中に手洗いに行ったとき、浴室から出て来た彼女が意味ありげに歩いていった事があった。あれは私を誘っていたのか、それともそんなことには縁のない男と思ったのか、と私は考えるのだった。

貧困の中で美しく花開き、花の盛りに夭折した“時代の天才”樋口一葉の鮮烈な青春を描いた全５回のドラマの第１回。１８９１年（明２４）、歌塾「荻の舎」発会の席に貧しい夏子（大原麗子）の姿もあった。師・歌子（久我美子）の代げいこをするほど和歌に優れた才を持つ夏子だったが、一家の生活苦は目を覆うほどだった。そのころ、和歌の先輩格で元老院議員の娘・竜子（二宮さよ子）が小説で大成功したことを知った夏子は「身分はともかく才能では負けない」と、自分も小説を書く決意をする。そして妹の邦子（大場久美子）の友人の紹介を得て、朝日新聞の作家・半井桃水（石坂浩二）に弟子入りした。

四国の小さな田舎町から眺めた庶民の昭和史を温かくつづったドラマシリーズ、第一章・全７回の第３回。（１９８５年４月１３日〜５月２５日放送）◆勝二（河原崎長一郎）は遊び人の昭一（中条静夫）と違って人情味のある人間だった。靴屋の花井（イッセー尾形）と女郎のおこう（永島暎子）が一緒になれるよう金を出してやったり、行き倒れたお遍路が残していった口のきけない少女（内田也哉子）を引き取ってやったりする。静子（桃井かおり）は少女を巡子と名付け、自分が母代わりになるつもりだ。そのころ、井原ドクター（小林亜星）は義妹の文子（佐藤友美）がアメリカ人と交際しているというので焦っていた。

都会に住む孤独な人々、病める心を抱えた人々の満たされない心の空洞を埋める“疑似家庭”の営みを通して、管理社会の息苦しさ、先行き見えてしまう世の中の生きづらさのなかで、人間の自由と幸福の問題を、繊細で都会的なメルヘンタッチで見つめるドラマ。ハナコ、タロー、ヒロ、そして今雄の４人が、奇妙な縁でタローの社宅で“疑似家庭”の共同生活をはじめる…。

わずか２２歳の生涯を火だるまの如く駆けぬけた個性豊かな画家・村山槐多と、彼によって自らの魂を揺り動かされ、人間本来の生き方を模索する現代のひとりの男の、６０年という歳月を超えてふれあう魂の物語。◆上田市の郊外にある「信濃デッサン館」には早逝した画家の作品が数多く集められている。そのなかでひときわ異彩を放つのが大正時代の詩人画家・村山槐多の作品。１８９６年横浜生まれで、京都一中に学ぶ。従兄弟に当時売出し中の画家・山本晶がおり、その影響もあってか両親の反対を押し切って画家を志し上京、日本美術院に学んだ。個性豊かで自由奔放な若者を大正前期の時代風潮が迎えた。１９１９年、２２歳５ケ月で短い生を終える。

第９０回の直木賞を受賞した、神吉拓郎の短編集「私生活」から５編を原作とする２０分完結の連続ドラマシリーズ。各回の主人公を田中邦衛が通して演ずる。（１９８５年１０月１１日終了、全５回）◆第１回は「つぎの急行」。はめを外さず、平凡な暮らしを続けて「ブレーキしかない人」と妻にも言われている男。ある日、乗り換え駅でつぎの急行を待つ間に、いつもきちんとしている隣家の主人がしたたかに酔っているのを見かける。自分もたまにはアクセルを踏みこんでみたいと思いつつ、結局はできない。部下の女の子にプレゼントされた手編みのセーターを持って帰っても、妻は嫉妬もしない。やはり自分にはブレーキしかないのかとおもう男であった。

奈良・法隆寺で１９８２年から行われている「昭和の資財帳」づくりを独占取材、記録したドキュメンタリー。◆資財帳づくりとは寺の財産目録作成のこと。天平の資財帳以来１２３５年ぶりの、法隆寺文化財の本格的調査となった。番組ではこの調査で次々と発見された国宝・重要文化財級の秘宝を紹介。なかでも、聖徳太子ゆかりの古代染職「太子間道」や「蜀江錦」、世界最古の印刷物といわれている「花羅尼経」、聖徳太子の真筆が納められているため今まで開けられたことのない箱の調査など、いずれもスクープ性が高く話題をよんだ。

フランスの劇作家ジャン・ラジーヌの古典戯曲「ブリタニキス」をもとに、現代性のある創作舞踊を組み立てていく。ローマ宮廷を舞台に若き日の皇帝ネロが権力欲の権化である母親に抵抗し、圧力をはねのけて自立しようとする過程を描いた愛憎のドラマである。権力欲、母子の愛情、母性からの自立、近親相姦、サディズムなど現代に通ずるテーマを、日本舞踊の様式美の中でドラマチックに表現する。