第９０回の直木賞を受賞した、神吉拓郎の短編集「私生活」から５編を原作とする２０分完結５日連続のドラマシリーズ。各回の主人公を田中邦衛が通して演じる。（１９８０年１０月７日～１１日、全５回）◆第３回は「もう一人の私」。住みこみの家政婦は、夫が女と出て行き、子供は姉に預けていると云っていたが、ある日出ていったきり戻らなくなる。夫とよりを戻したのかと思っていたが、近所の人の話ではむしろ彼女のほうが男好きなのだという。そういえば、夜中に手洗いに行ったとき、浴室から出て来た彼女が意味ありげに歩いていった事があった。あれは私を誘っていたのか、それともそんなことには縁のない男と思ったのか、と私は考えるのだった。

貧困の中で美しく花開き、花の盛りに夭折した“時代の天才”樋口一葉の鮮烈な青春を描いた全５回のドラマの第２回。桃水（石坂浩二）に弟子入りした夏子（大原麗子）はひたすら作家修業に励むが、思うにまかせぬまま時が過ぎる。その間に、いたわり深い師に対する熱い思いが次第に夏子の胸に芽生えるが、独身の桃水にはまたとかくの女性関係の噂があった。夏子は自分の恋を隠し続けているが、そんなある日、桃水は雑誌創刊のための題字と原稿を夏子に依頼する。夏子を世に出そうという桃水の思いやりに夏子は胸をふくらませるが、そのころ世間には桃水と夏子についての噂が流れる。

太平洋戦争開戦に踏みきり、日本を破滅に導いた東条英機内閣は、１９４１年（昭和１６）１０月１８日に成立。１９４４年７月１８日に総辞職している。ＮＨＫは、東条内閣の秘書官が東京・世田谷に埋めて保存してきた、同内閣の内部の動きを伝える極秘記録を入手した。そこで、この未公開記録をもとに、太平洋開戦と戦争を指導した東条内閣の１００５日間を再現、また当時の関係者の証言と学職者の解説により、この戦時内閣の実相に迫る。

横浜市中区の山手は異国情緒あふれる観光地で、休日は多くの人で賑わう。この地を愛し住み続ける人々や、訪れる若い人々の姿などを紹介する。◆開港後、日本の海の玄関として大きく発展したヨコハマで、貿易を営む外国人の居留地として開けた山手は、ゲーテ座、カトリック山手教会、外人墓地、そして港が見える丘公園など、訪れる人々を魅了する。横浜港に寄港するアメリカの大型客船・サガフィヨルド号や日本丸の改装風景、大棧橋などの様子とあわせて紹介。

徳光和夫アナウンサーがキャスターを務める情報番組。この回はカルガモの母と１２羽の子どもたちの大冒険の様子を軸に、引っ越しにそなえて子ガモを特訓する母ガモの姿をドキュメントする。◆１９８５年（昭和６０）６月１６日午前９時２０分ころ、東京大手町のビルの谷間をカルガモの母と１２羽の子どもたちが歩きだした。内堀通りを横切って皇居のお堀へ引っ越すのだ。その模様を撮影しようと毎日つめかけていた報道陣や見物人の、一瞬のスキをついて親子は移動を開始した。

ＮＨＫ放送開始６０周年を記念して、６０年の歴史の中で生まれた人々の出会いとふれあいを、技術の進歩にからませて構成したステージショー。◆第１部は「ラジオ放送の誕生」。昭和初期、マイクロフォン１本で歌を放送した藤山一郎のエピソードなどを紹介。第２部は「森繁名作座」。アナウンサーから俳優に転じた森繁久彌が朗読を披露。第３部は「茶の間にスターが」。美空ひばりが自選の３曲を歌う。第４部は「放送・今そして未来」。ＮＨＫ番組のテーマ音楽を数多く手がけた冨田勲が登場。最新の電子サウンドを科学万博つくば８５の映像にのせて夢をつなぐ。

西独ライン川のほとり、ルール炭田地域に働く日本人炭鉱労働者の生活を描きながら、日本の石炭産業の盛衰とそれに翻弄された人々の歴史をつづる。◆２５年前、西ドイツ最大の重工業地帯であるルール地方に日本からおよそ４５０人の炭鉱労働者が派遣された。技術研修という名目だったが事実上西独の人手不足に応じたものだった。派遣員は３年の契約だったが、西独女性と結婚してそのままドイツに留まった人もいる。ＲＡＧローベルク鉱で働く７人の暮らしを追いつつ、人々の上に流れた時間をたどる。

長崎・諫早の名家、楠木一族が幕末に私財をなげうって干拓した十万坪の新開地。一族に分け与えられたその土地をめぐる謀略、巻き込まれていく“フーケモン”の楠木雲太郎、そして楠木家の親戚たちの大騒ぎのひと夏を描く。（１９８５年７月４日～９月２６日放送、全１３回）◆最終回。矢上（根津甚八）と伸子（手塚理美）の関係を聞いた雲太郎（役所広司）は、矢上に殴りかかるがかわされる。矢上の昔話と本当の思いを聞いた雲太郎は、最後の最後で賭けに出た。夏の終わり、盆踊りの櫓の上で「月の本明」を歌う雲太郎と順子（田中好子）。そして諫早に秋が訪れる。