文明開化とともに味覚の世界も広がり、牛肉が本格的に登場した。神戸元町で人気を集めた大井牛肉店もその一つである。それまで一寒村にすぎなかった神戸に外国人居留地ができ、異人さんが最も不自由したのは牛肉の購入だった。明治４年創業の大井牛肉店は、明治２０年頃に異国情緒を感じさせる装いに変わった。木造であっても石造に似せてつくられた明治洋風商店のたたずまいは、時を越え、食文化の軌跡として伝わってくる。◆大井牛肉店

占領軍兵士の花嫁となった日本人女性たちの消息とその家族たちを訪ねて、花嫁たちの軌跡と深く重なっている祖国ニッポンの戦後史をみつめなおす。◆１９４５年（昭２０）８月１５日、日本がアメリカに無条件降伏をしたとき多くの都市は焦土と化していた。間もなく占領軍が進駐し、やがてＧＩと日本の若い女性たちとの間に数々のロマンスが生まれた。戦後４０年間に、海を渡った日本人花嫁はおよそ１０万人と推定されている。

お年寄りの楽しみといえば、ゲートボールや民謡。しかし、幼稚園児さながらにチャーミングな制服に身をつつみ、歌い踊っている高齢者たちがいる。彼らの活動を取材し、老後の過ごし方、シルバーグループのリーダーのあり方などを探っていく。長崎市の郊外にある団地に住む高齢者たちが健康クラブ、通称「老稚園」を作ったのは６年前。園児たちの平均年齢は７３歳。空缶回収で得た現金は、園の活動資金の一部になっている。

ラジオのＤＪを担当している夏子（岸本加世子）は、脳血栓で倒れた父の見舞いに故郷へ帰り、不倫の恋を清算する決心をする。そのドラマの中で、向田邦子の９編の作品が朗読される。（１９８５年８月５日〜８月９日放送、全５回）◆最終回。朗読は「三角波」。波多野との結婚を控えた巻子は、波多野の部下・達夫の態度が変わったのに気づく。やがて二人は結婚し、巻子は達夫の執着が波多野に対するものと判って、愕然とする。朗読しながら、夏子は不倫を清算しようと決める。

ＮＨＫが入手した「男女雇用均等法」成立に至る審議の極秘メモをもとに、法案作成までの全過程を再現するドキュメント。◆雇用面の男女差別を規制する男女雇用均等法が１９８５年５月１７日、成立した。労働大臣の諮問機関である婦人少年問題審議会では、労働者・使用者・公益の３つの立場を代表する９人の委員が、７８年以来審議を続けた。雇用のすべての面での平等を主張する労働者側に対し、使用者側は労働基準法上の女子保護規定も見直すべきだと対抗するなど、審議は難航した。

「食」をめぐる営みは、最も根源的な「文化」であり、それぞれの民族がそれぞれの風土の中で何千年にもわたって練り上げた知恵の結晶である。このシリーズは、人間が有史以来“何をどのように食べてきたか”を世界各地の食生活と風土の中に探り、食べものがいかに民族の精神を形づくり、文明の質を規定してきたかを明らかにし、飽食の日本人に「食」のあり方を問いかける。◆第１集は「肉」。ドイツの農村でブタの処理、解体、ソーセージづくりの過程を丹念に追い、１滴の血も無駄にしないヨーロッパの肉食の伝統を紹介する。

日本社会のなかで自らの生き方を求める韓国人高校生、年老いた在日１世と３世の間の溝、指紋押捺にゆれる彼らの複雑な心理の葛藤を浮き彫りにしていくドキュメンタリー。◆１６歳になって、初めて外国人登録を迎えた在日３世の高校生。韓国語は話せない。「日本に生れ育った僕が、なぜ犯罪者のように指紋をとられるのか。差別の糸を僕らの世代でたち切りたい」と彼はいう。

変動の激しい夜７時半ワクで１０年間の長寿を誇った、コントと歌でつづるバラエティショー。３０分間にレギュラー、準レギュラーを合わせて１０人以上の人気タレントが出演、アイドルも歌だけでなくコントに挑戦する。◆この回は「お笑いカックラ劇場　ルスバン三世・田原、堺、研、秀美エッ！？」と題したコントがメイン。人材レンタル事務所に留守番の仕事が入り、田原がその仕事を引き受けた。昼になり、堺と研が昼食を持って田原の陣中見舞いに行く。そこへ荷物が届き、印鑑を探すため田原が戸棚を開けると…。他に「カックラ幼稚園」「ナオコお婆ちゃんの縁側日記」「堺先生のドクター記録」「刑事！ダーティー・トシ！！」など。