「大福願書」と表書きされた詫び状がある。署名には、当時の井上演劇道場を代表する人々の名が連らねてあり、女優の岡田嘉子の名もある。井上道場は、俳優井上正夫が主宰し、中間演劇の確立をめざした集団として名高い。劇的な樺太越境で井上正夫の元を去った岡田嘉子さんが、帰国後初めて、舞台の父である彼の足跡を関係者の証言を得ながらたどる。

１９８０年代を迎え、これからの１０年がどのような時代になるかを、各種アンケートや統計データをもとに分析し予測する。司会は鈴木健二。◆各界の著名人や若手ホープが登場して８０年代の予想や１０年後の自分を語るほか、葛飾柴又の帝釈天、江東区大島団地など東京都内数か所から、１９８０年を迎えた人々の意見を中継、即座にデータに変えて伝える。スタジオゲストは作家の堺屋太一。

教育テレビ開局２０年を記念した大型企画として乗りものの技術史を取りあげた１０回シリーズ番組。第７回は、「たった３６メートルの初飛行〜飛行機・前編」１９０３年、ライト兄弟が人類最初の飛行を成功させたフライヤー１号のレプリカ（複製）の飛行実験を軸に、グライダーから始まった大空へかける人間の夢の歴史を描く。この実験では２４メートルの飛行に成功した。

初老の男が自分の出生に疑問を抱き、そのルーツをたどっていくドキュメンタリータッチの異色作。作家・山口瞳氏の自伝的・母への賛歌。小林桂樹が主人公ほか４役を演じる。（全５回）◆第１回。少年の頃から不安感を覚えていた私・山口瞳（小林桂樹）。昔夫婦で家に住み、息子・庄介（小倉一郎）の乳母のようなことをしてくれた小久保ハル（夏川静枝）の死によって、母・静子（小川真由美）も教えてくれなかった「遠い血のつながり」がわからないままになってしまった。心の中には大きなわだかまりが残る。

お人好しで持ち前の屈託のない明るさで女としての「生」を力いっぱい生きてきた母親・セツ（乙羽信子）。そしてその母親にハラハラさせられたり傷ついたりしながらも、遠く離れた母親を想っている息子・圭司（西城秀樹）。この２人が念願の同居生活をはじめる。が、互いに相手を気遣うあまりきゅうくつな生活になり、２人は立ち往生してしまうのだった。

「日中友好手をつなぐ会」の訪中団が、１９８０年（昭５５）７月中国東北部を訪れ、敗戦直後の混乱の中で生き別れた日本人孤児３００人に会った。北京、吉林、長春、ハルピン、瀋陽を回り、団員の２人が娘と涙の再会をした模様を同行取材した。３千人とも５千人ともいわれる中国残留孤児の問題を提起し、肉親捜しの貴重な手がかりを伝える。

信念をもって行動した一人の女性の半生を、テレビ初の日中合作ドラマで描く。制作協力：中華人民共和国中央広播事業局。◆１９３６年（昭和１１）奈良女子高等師範学校を中退した長谷川テル（栗原小巻）は、エスペラント語が縁で中国人留学生の劉仁（高飛）と結婚し、中国へ渡るが日中戦争が始まる。排日運動が激化する中でも夫婦はしっかりと結ばれ、激しい戦火の中でテルは日本人兵士向けに、日本語で反戦を呼びかけた。

語り手自らが名作文学ゆかりの地を訪ね、風景やそこに暮らす人々に直接ふれることで、その作品世界を再認識してもらおうという文学紀行番組。第１集～４集まで制作・放送された。（第４集／１９７９年１０月６日～１９８０年３月２９日放送、全２６回）◆この回は、小川未明の「赤い蝋燭と人魚」（１９２１年）を取り上げる。女優の吉行和子が未明のふるさと越後高田を訪ね、ゆかりの地を巡りながら物語の背景を探っていく。童話としても知られるこの物語独特の世界観を、吉行自身がいつしか物語に入り込み、人魚のお母さんら登場人物にインタビューするという形で表現していく。それぞれの立場が明らかになるにつれ、人間のエゴイズムや身勝手さが浮き彫りになっていく。