一介の薬行商人だったメディチ家に風雲児が現れる。商業技術の才に長けた開祖ジョバンニ（１３６０〜１４２９）の登場により、巨大な富を築き経済を支配する。初代の死後、二代コジモの公共投資による散財、三代ロレンツォの人文主義など経営体質は悪化する。世界初の共和制都市国家・フィレンツェの栄光保持派とメディチ家との確執。その間、ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』など美の世界は休みなく高揚する。◆サン・マルコ修道院、捨子養育院、メディチ家カレッジ別邸（プラトン・アカデミー）、受胎告知（フラ・アンジェリコ作）、ヴィーナスの誕生（ボッティチェリ作）

日常の中にまぎれこんでくる奇妙な出来事、不思議な事件、おかしな人物を描く、オムニバス形式のドラマシリーズ。ストーリーテラーはタモリ。◆「時間よ止まれ」：ある朝、高校生の勇一（山本淳一）はクシャミをすると数十秒間だけ時間が止まることに気付く。早速、学校で先生に恥をかかせたり、更衣室をのぞいたりしてイタズラを楽しむ。しかし、同級生の夏子（東いづみ）だけは止まった時間の中で動くことができた。◆「あの日に帰りたい」：小さな工場の研究員・和彦（松尾貴史）は、妻の玉枝（村上里佳子）や子供たちに大事にされず、過去の選択を後悔する日々を送っている。一方、大学時代に和彦と一緒に研究していた佐藤（五代高之）は、なんとタイムマシンの開発に成功したという。◆「視線の町」：一年前に妻を亡くした有二（林隆三）は、娘の蛍子（林美穂）とともに東京から郊外の町に引っ越してきた。ある日、父娘でいつものように散策を楽しんでいると、突然に霧が立ち込めて、二人は時代劇に出てくるような古い村に迷い込んでしまう。原作：綾羽一紀。

討入を前に、兄を訪ねた赤垣源蔵は、兄の不在を聞くと、持参の徳利の酒を一口残して寝酒にと置いて帰る。帰って来た兄は弟の心中を察して悔やむ。眠れぬまま朝を迎えた兄は、討入の報せを聞いて、下男に弟が参加していたか見に行かせる。下男は源蔵から形見の品を渡されて帰ってくる。この話が脇坂侯の耳に入り、形見の品は脇坂家の家宝になったという。◆口演／京山小圓嬢、曲師／西崎恵美子、ギター伴奏／菊地高士

アフリカ・コンゴ人民共和国の密林に調査に入る京都大学霊長類研究所の調査隊に同行、絶滅の危機にあるローランドゴリラをキャッチしてその生態を追う。

日本政府に棄てられた形になって戦後を生きてきたサハリン残留日本人の女性三人の半生を追い、彼女たちにとって「祖国」とは何であったのかを問いかける。◆終戦時にサハリンにいた韓国・朝鮮の人々に対し、ソビエトは朝鮮半島の南北問題を理由に祖国との接触を禁止した。それによってこの人たちと結婚していたり養女になっていたりした日本人女性とその家族も同じ運命を強いられた。日本政府はこれを知りつつ無関心を通して彼女たちに深い絶望感を抱かせた。労苦の末目が不自由になった女性は「祖国はない」と屈託なく答える。もう一人は一時帰国して両親の墓に詣でたが、痴呆症に冒されつつある。三人目の女性は望郷の念を抱いたままサハリンの土にかえった。

平手造酒は剣聖と言われた千葉周作の一番弟子であったが、酒の上の間違いが多く破門されていた。笹川繁蔵にその腕を見込まれて用心棒として傭われ、鹿島の捧祭りの間、平手は親分の名代として現場の目付を頼まれた。しかし祭の間だけは酒を絶つという約束を、一杯の甘酒から破ってしまい、大立廻りをやってしまう。◆「天保水滸伝」・作／畑喜代司・玉川勝太郎

“天の国、木の国、川の村”といわれる奈良県天川村から吉野町まで、自然を生かした手作りの工芸品と人々の暮らしを訪ねる。天川村では、床柱や建材に使う“磨き丸太”の絞模様の人工加工や吉野杉の鷹一刀彫、芸能の神として有名な天河辨財天社の神宝五十鈴などを見る。下市町では桶づくり、吉野町では“紙漉の唄”に合わせて漉き舟がゆれる和紙の工房を訪れる。独特の製法の寿あめと葛粉を使った吉野葛菓子を紹介し、巨大な国宝・蔵王堂に至る。旅人は早坂あきよ。◆第１０３８回　◆金峯山寺本堂【国宝】天河大辨財天社みたらい渓谷

幾多の戦火をくぐりぬけてきたユダヤ人一家、イスラエルを「約束の地」と信じる彼らの暮らしを描く。◆イスラエルは１９４８年の建国以来、中東和平の焦点であった。ヨルダン川西岸地区ではユダヤ人入植地がパレスチナ人の村に隣接し、争いが絶えない。１９５１年に移住したアンスバッハさんはナチスドイツの虐殺を逃れた経験をもつ。家の壁には４世代の家系図が掛けられ、顔写真は年々増えている。国民を一人でも多くすることで国が強くなると多産が奨励されていることもあり、８４歳のアンスバッハさんにはひ孫が５６人もいる。