蒔絵と違い、器に一切の装飾を加えない漆芸・きゅう漆技法。優美な曲面と漆の放つ光沢だけでき然とした美を漂わせる。形の持つ力強さは他の装飾が入る余地がない気品がある。◆粘土と石こうで原形を作り、和紙と布を漆で塗り重ねていくという乾漆技法を得意とする増村益城。素材を生かした塗肌を出すまでには高度な美術センスに加え、同じ工程を何度も繰り返す根気が要求される。

エイズは、治療の決め手がない中で、医療の問題である以上に社会問題になろうとしている。１５０万人以上のエイズ患者を抱えるアメリカの対応を追い、日本への教訓を探る。◆アメリカの社会の意識は、エイズをただ恐れる段階から冷静に対処する段階へと変わりつつある。カウンセラーの養成、患者の世話をするボランティア、受け入れる企業などがそれである。日本でも女性患者の出産が行われるなど、対岸の火事と言ってはいられなくなっている。人権を守りながら効果的なエイズ予防策を進めるためには何をすればいいのか考える。

子育ても終わり、自分の人生を歩みたいと思った主婦（若尾文子）が、ケチでうるさい夫（小林稔侍）と別れるために一計を案じる。浮気をするように仕向けて現場をおさえようという計画はうまく進むが、後悔の念が強まり、ついに夫のあとを追って旅に出る。◆「軽井沢・湯田中・佐渡」

調和のとれた伽藍配置を見せる唐招提寺を作曲家の三善晃さんが訪ね、その清澄な美を味わう。◆奈良の唐招提寺は唐から渡って来た僧鑑真によって創建された寺である。境内には天平後期の遺構である金堂を中心に、平城京の朝集殿を移築した講堂、校倉造りの経蔵、宝蔵などの国宝建造物が、異なった時代の作であるにもかかわらず、調和のとれた伽藍配置を見せている。三善さんはこれら建造物を、虚飾がなく、平易かつ品格があると話す。

遊び好きで浪費家の妻に頭が上がらない武将・伊藤七蔵政国の出世物語。◆信長（伊吹吾朗）の家臣・七蔵（西田敏行）は、妻の小梅（坂口良子）にぞっこん惚れている。半年ぶりに戦から戻ってくるなり大声で呼ぶが、実家に戻っていて留守だという。翌日ようやく帰ってきた小梅はさっそく買い物をねだり、たしなめられてへそを曲げる。七蔵は結局妻のいうなりになってしまう。戦場での働きが認められ加増はされたが、小梅の浪費のため新しい馬さえ買えない。それでも七蔵は小梅を「気に入っている」。そんな七蔵が、友人の助右衛門（目黒祐樹）の勧めで側女を持つ決心をする。

子どもたちの興味を引く海の生物のミステリアスな生態を、バラエティー豊かなコーナーで紹介する。生物がもっとも神秘的な姿を見せる受精や産卵、孵化、誕生に至る場面などを、様々な映像技術で多角的に研究する。（１９８７年３月３日開始）◆第一回は“海ヘビ”を取上げる。海ヘビは猛毒を持っているといわれているが、その毒の強さはどれくらいか。いくつもの実験でそれを明らかにする。“アドベンチャー・コーナー”では、海蛇の巣に突入する。また、珍味ともいわれている海ヘビ料理や、海を渡るコモドドラゴンなども紹介する。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日〜１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第２９回は東京大学名誉教授・小平邦彦さん（７２歳）。

交通事故で胸から下がマヒしたきりになるというハンディを背負いながらも、婚約者をはじめとした人々の励ましに支えられてリハビリに取り組み、みごとに立ち直ってついに挙式した鈴木（旧姓・戸沢）ひとみさんのその後を紹介する。◆車椅子用に工夫を凝らした新居も完成、ひとみさんは主婦として充実した毎日を送っている。支え続けてくれた夫・伸之さんの愛情に応えるため、行き届いた心配りで家事万端をこなしていく。また、スキューバダイビングやスキーにも挑戦。一つ一つ生活範囲を広げて人生を豊かにしていこうとする彼女の姿を通して生きることの素晴らしさを描く。