雲霧仁左衛門（松方弘樹）は名うての大盗賊。火盗改方にとっては、十数年末の仇敵だった。その仁左衛門が江戸に舞い戻ってきた。狙っているのは、以前から目を付けていた札差・越後屋の金蔵だ。そのための裏工作には手を尽くした。越後屋に滞在している名古屋の豪商・松屋（財津一郎）にも自分の女であるお千代（浅野ゆう子）を近づけ、次の仕事の準備も怠りなかった。ところが、買収して役人の動きを報告させていた与力の岡田（横内正）が裏切り、仁左衛門の隠れ家を急襲した。その日仁左衛門は、警戒する火盗改の裏をかいて、かねての計画通り越後屋から３万両を盗み出す。原作：池波正太郎。

岩手県矢巾町に住む佐藤力子さんは、体中の筋肉が衰える筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）という難病に苦しんでいる。この病気は原因や治療法がわからないために絶望的な気持ちに陥る患者も多いが、力子さんはわずかに動く足の指にクレヨンをはさんで絵を描き続けている。出来上がった絵は見る人の心を打つものばかりである。力子さんは、夫の誠一さんや家族に支えられて、前から行きたかった北海道のスケッチ旅行にでかける。

円高に経済摩擦と世界中から激しく揺さぶられる経済大国・日本。問題はもはや対外的なものだけでなく、日本全体のシステムにかかわるものとなった。国際協調型の産業構造への転換を要求される日本の現在と未来に迫る。（１９８７年５月１５日～１７日、全３回）◆日本経済と他のアジア諸国の経済とは密接にリンクしている。技術の成熟した日本の地方企業は続々とアジアへ生産拠点を移し、技術移転が着々と進行している。発展を遂げるアジア諸国の中で、日本がその一員としてどのような共存の道を築きうるか、今後の日本経済の課題を探る。

１９８６年１２月に起こった、国鉄山陰線余部鉄橋の脱線転落事故を、実験を通して分析し、原因を解明、今後の問題点をさぐる。◆事故にあった列車は、余部鉄橋手前の駅で乗客をおろし、回送で鉄橋へさしかかった。７車２１８トンの列車が、強風にあおられて高さ４１メートルの鉄橋から転落し、下の工場と民家を直撃して死傷者１２人をだした。◆当時の瞬間最大風速は３３メートルであった。流体力学的には下から吹き上げる風は、車両のような箱型構造物を下に押しつける力となるが、急速な風速の増大があった時、瞬間的に大きな上向きの力がはたらくという。風と車両の関係の落とし穴をとりあげる。

日本の高度経済成長を支えた陰の主役の一つは、全国に８７万軒以上あるといわれる中小の下請け製造業者である。いま、それらの町工場に何が起こっているのか。３５年間旋盤工として働くかたわら作家活動を続ける小関智弘さんが、東京都内にある町工場を訪ね、そこに生きる人々の意見と生活を３日間にわたってリポートする。（１９８７年５月１２日開始、全３回）◆シリーズ最終回は、そこで働く人たちに話を聞く。職人たちの創意工夫で生き抜いてきた町工場だが、今ＭＥ化が進み自動機械が導入されている。今後の職人の必要性、生かしかたなどを考える。

日本人が作りだした「かたち」とそれを育んできた「心」を、第一級の素材と豊富な国際比較で解明するシリーズ。案内役は評論家・加藤周一。（１９８３年３月３１日終了、全５回）◆第１回は、雄大で呪術的な造形で人を魅了する縄文土器について。このかたちを生みだした縄文文化を、メキシコ・マヤ文明と比較し、他文化からの孤立にその手がかりを求める。

上方と江戸の芸を極めた片岡仁左衛門が上方歌舞伎の将来や芸の継承について語る。◆“江戸の荒事と上方の和事”といわれながら上方歌舞伎が衰退していくことに心をいため、私財を投げ打って始めた仁左衛門歌舞伎は６年続き、上方歌舞伎の再興に大きな役割を果たした。◆「芸に終点はない」と語り、今なお、みずみずしく舞台をつとめる片岡仁左衛門を描く。

アメリカの人々に原爆に対する理解を深めてもらうため、原爆映画を上映してまわるキャンペーンに参加した若者の姿を通して、この運動が何を伝えようとしているのかを考える。◆「ヒロシマって何？花の名前？」アメリカの子供たちからはこんな答えが返ることもある。ネバー・アゲイン・キャンペーンは、こんな子供たちに核の恐ろしさ、人の命の大切さを知らせようと始められた。自らもアメリカで平和行脚の体験をもつ宝塚市の北浦葉子さんの呼びかけに応じて選ばれた男女７人が、１９８６年（昭和６１）夏から翌年春にかけてアメリカで活動した。