庶民信仰の聖地としてにぎわってきた信州信濃の善光寺。全ての道は善光寺につながるといわれたその１つ、北国西街道の宿場町・更埴。善光寺の鐘が聞こえる所にはどこにも見られたアンズの木。昔、松代藩が薬の原料として栽培を奨励した。更埴は日本一のアンズの里である。また１８４７年の善光寺地震以来、町は土蔵造りの家が多い。◆３年に１度の古式ゆかしい『雨宮神社の神事』に沸く町と、甘酸っぱいアンズの香りの里を描く。◆【重要無形民俗文化財】雨宮の神事芸能〔長野県〕

明るい記事を書けと編集局長に迫られた記者が、ある集落に毎年ひっそりと現れているサンタクロースのことを記事にしてしまう。静かな集落は大騒ぎになり、サンタの正体を暴こうとする。◆北国新聞北狩支局に赴任した六助（平田満）は、赤提灯のママ（いしだあゆみ）から「毎年１２月２４日の晩、市街地から２０キロほど離れた美水に、馬ソリに乗ったサンタクロースがやってくる」という話を聞く。ほのぼのとしたいい話だと思った六助は、ママが止めるのも聞かずに原稿を上げてしまった。とたんに美水は大騒ぎになり、その年末、ついにサンタは現れなかった。六助は深く反省する。

雪をかぶった天山山脈を北に、ウズベク共和国のフェルガナ盆地はある。東西３００キロ、南北１５０キロの大盆地。ここに昔、天馬がいたという。漢の武帝は天馬欲しさに大軍団を派遣した。『馬踏飛燕』といわれる漢時代の駿馬像が出土している。「大宛の天馬」は、キルギス共和国のオシ市にある弐師城の岩肌にもその姿が刻まれている。回教寺院で祈りを捧げる現代の回教徒たち、砂に埋まった仏教寺院跡。興亡の歴史の中で、天馬の里は絹の国に変わっていった。◆アフシケント遺跡、弐師城、クワ遺跡、ファヤズテペの仏教寺院址、ザルマラの仏塔跡

日本美術史上最大の謎のひとつ“写楽はいったい何者なのか”という問いは、明治以来多くの人々の興味をよんできた。戦後２度目の写楽ブームの中で、版画家であり小説家でもある池田満寿夫さんが、自らの製作体験と作家としての直感をもとに、この謎に挑んだ。写楽全作品の分析と検証、そして文献資料の発掘から、写楽はその描いた役者絵に自らの肖像を残しているに違いないと推理し、１人の無名の役者を浮かび上がらせる。写楽探しに新説を提示した、知的エンタテインメント。

信州信濃の『追分宿』の道しるべ、「是より左伊勢」。左へ向かうと中山道。右へ向かうと北国街道。追分宿は中山道の中でも大いににぎわった宿場である。今では緑一面の浅間山のふもとだが、その昔は不毛の火山灰地だった。宿場には涙と笑いの人間模様が繰り返されてきた。それも昔話。◆堀辰雄ゆかりの樹下の石仏に信濃追分の原風景を探り、浅間山周辺の姿を描く。◆追分宿〔長野県〕

町の半分が水没するダム計画が山間の町を揺さぶっている。苦悩する小さな町の４年間の姿を追い、地方自治の厳しい現実を問いかけるドキュメント。岡山県奥津町。人口３８００人の過疎の町は、１９５７年（昭３２）に建設省が示した苫田ダムの計画によって、町の南半分４７７戸が水没することになっている。計画を強行しようとする国や県に対して、町はダム阻止を“町是”に掲げて阻止条例をつくり、あくまで抵抗する。

初冬、北風が津軽の海をたたく。海辺はまるで廃村同然。しかし、数カ月前までの浜は穏やかだった。夏の日、浜辺には一家総出でコンブ漁と天日干しの作業をする姿が見られた。夏と冬の海の対比。◆竜飛崎の印象を「ここは本州の袋小路だ」と、太宰治の一文を引用。ひと夏やっと１０日ばかりのコンブ漁。冬、閉ざされた土地からの出稼ぎ。厳しい自然風土の中で暮らす津軽・竜飛崎の人々を紹介する。◆竜飛崎〔青森県〕

大阪府・堺市倫理条例の、１年間にわたる全体像を描くドキュメンタリー。◆１９８３年（昭和５８）２月、堺市で全国初の政治倫理条例が制定された。しかし前年公開された１回目の資産報告書は、預貯金、贈与などは「該当なし」の空白だらけで、議員の倫理感の欠如を市民に強く印象づける結果となった。