かつてネパールで密教修行の経験を持つ宗教学者・中沢新一さんが、真言密教の寺・東寺（教王護国寺）を訪ねる。◆東寺には、５０点の国宝がある。寺の中心・講堂の２１体の仏像は平安初期、空海が仏師に造らせたもの。このほか寺には空海が密教を広めるため中国から持ち帰った大量の図像や曼陀羅が納められている。ここを都で布教するための拠点とした空海は、やがて本来の山岳仏教に帰り高野山へ去る。しかし不動明王を始めとする東寺の仏たちは、密教の教義を超えて日本人の心をとらえ、今も人々の厚い信仰を得ている。

筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）という難病を背負いながらも、同じ病に苦しむ全国の患者たちの組織化を目指して活動を続け、ついに「日本ＡＬＳ協会」の設立を果たした川口武久さんの４年間を描く。（１９９４年に逝去）◆川口さんがＡＬＳにかかったのは１９７３年。全身の運動神経を侵されていく毎日のなかで全国にメッセージを送って患者組織の結成を目指した。また治療法の解明や機器開発のために、北海道や山陰地方、さらにグアム島までも車椅子の旅を続けた。その熱意と努力は１９８６年春の協会設立となって実を結んだ。

第一次世界大戦が終わり、初めて国際政治の表舞台に登場した日本が、その後どのようにして太平洋戦争に突入していくのかを国際的視野で描くドキュメンタリーシリーズ。◆第３集。昭和初期、それはアメリカ文明との出会いでもあった。その重要なものの１つが、フォードの恩恵による自動車時代の到来であった。しかし、中国大陸での戦争を予期し始めた日本は、軍事目的にもつながる自動車の国産化をはかった。フォードを締めつけようとする日本。日本に大工場建設計画を持つフォード。自動車をめぐる秘められた昭和初期の日米経済戦争の実態と、産業的にも孤立化していく日本の姿を描く。

毎週日曜の朝に、岡山・香川県下の町おこし、村おこしにつながる新しい動きを、産業や観光の面から捉えて伝える。また、その週のホットニュースにもスポットを当てる。

米ソの市民を衛星中継で結び、あらゆる問題を話し合う「米ソ市民サミット」。２回目は、ボストンとレニングラードの女性ばかりの討論。◆それぞれのスタジオに２００人ずつの女性が出席して、日常生活やアフガン問題、軍縮、妊娠中絶、言論の自由など広範な話題を話し合った。話し合いは、すれ違いが見られ、まとまりに欠けたが、衛星中継（スペース・ブリッジ）によって直接話し合う意義は大きい。司会は第１回と同じく、アメリカ側はフィル・ドナヒュー、ソビエト側はモスクワ放送のポズナー解説委員。

歴史的転換期にある日本が直面する政治・経済などの問題を、世界的視野で取りあげる大型企画。この３夜連続のシリーズは、日米関係をテーマに構成する。◆第３夜は、“日本は香港になれるか”“日本はアメリカになれるか”“日本人はイタリア人になれるか”―これら３つの大胆な仮説をもとに、国際化への課題を探るルポと構成討論。外から日本につきつけられているいくつかの問題点、その中で、「市場開放」「移民受け入れ」「働きすぎ日本人」という３つのテーマについて、日本と最も対照的な国とそこに住む人々の生活観のルポを鏡とし、複眼的に「国際国家としての日本」を探る。

人間国宝・磯井如眞の子として生まれた親子二代の至芸の持ち主・磯井正美。◆点や線で彫った紋様に色の漆をはめこんで染め上げる「蒟醤」は、漆工芸の中でも独特な技法。東南アジアに始まったというその古い技法を時代の感覚に合わせ、次々と新しいデザインを考案。技法との接点を探っていく。色鮮やかな２羽のチョウをあしらった『蒟醤涼風箱』の、半年をかけた制作過程を追う。

“ライスカレー”に夢を託し、カナダの大地を駆けぬける若者たちの青春遍歴を描く。（１９８６年４月３日〜６月２６日放送、全１３回）◆高校時代、野球部で一緒だったアキラ、ケン、ブンタの３人組。今は東京で板前やコックの修業中だが、何かもの足りなく生活に張りがない。そんな矢先、高校の先輩の次郎から「カナダでライスカレー屋をやろう」と誘われた。不安と希望がないまぜの３人に郷里の銚子の仲間が送別会をしてくれた。その席上、唯一英語の出来るブンタが抜けるといいだした。