万葉集最古の歌人・柿本人麻呂の歌には、一般に知られている意味とはまったく別な裏の意味が、暗号のように隠されていた。漢字で書かれた歌の原文を、朝鮮語で読むことによって解読できるという。この大胆な仮説を発表したのは、６カ国語を一度に勉強している多言語研究のグループで、日本語と朝鮮語との類似を万葉集の中に探っていくうちに、この仮説にいきついた。その解読作業をもとに新たな人麻呂像を描きだし、古代日本語の世界に光を当てた。

金属細工・彫金の技術は古墳時代に既に見られ、その源は古代エジプトといわれる。◆各種の技法の中でも、目切りの技法は鹿島家伝来のもの。鏨と金づちを用いて、地金に縦横斜めと細い布の織り目のように切り込んでいく。◆東京・下町で帯留め、かんざしなどをつくり生計を支えた経験のある鹿島一谷は、おう盛な研究心によって装飾を芸術にまで高めた。

文明開化の地・横浜。開港とともにいち早く外国文化を導入して発展してきたために、横浜を発祥地とする事柄は数多い。様々なモノの事始めをテーマに、スタジオでのトークや解説、「はじめて劇場」のコントの他、関連の事跡や場所を訪ね、関係者へのインタビューなども含めて、紹介していくシリーズ番組。◆「日刊新聞（新聞広告）」の回では、１８７０年（明治３）に日本で最初に創刊された邦字日刊紙・横浜毎日新聞の足跡を追う。他に、発祥の記念碑や神奈川新聞社での新聞ができ上がるまでなどを紹介する。（企画：横浜市教育委員会文化財課）

山口県出身の画家・香月泰男の生涯を童話風に構成し、家族そろって見られるよう影絵を使って映像化した異色のドキュメンタリー。物語は、香月が戦争に駆り出されるところからはじまる。敗戦後シベリアへ抑留された香月は、帰国の日、帰任に捕虜の食料であった豆を持ち帰った。イギリスの童話「ジャックと豆の木」に出てくるサン・ジュアンの豆である。香月家の庭にまかれた豆の１つぶが芽を出し、すくすくと育った。彼は「この豆の木には、戦争をしてはいけないという願いがこめられている」と、子どもたちに話した。戦争で死んだ者への鎮魂と平和への祈りをこめた作品を描き続けた画家は亡くなったが、平和のシンボル、サン・ジュアンの豆の木は、空高く枝を広げている。

長崎県五島列島に、人里離れて住む老夫婦の自然に溶けこんだような淡々とした毎日を追い、現代では忘れられてしまった心のふるさとを描く。◆五島列島の福江島に住む小畑さん夫婦の家には、電気も電話もひかれていない。古い漁船のエンジンをまわして電球をともし、水はせせらぎから引く。シケの日には漁を休んで家の中で凪ぐのを待つ。自然に逆らわずに生活する老夫婦のもとへ、正月には子供たちの家族が集まり賑わう。皆が帰ったあとは、また静かな日々が過ぎる。

経済停滞が続く社会主義国の中で、唯一経済的発展を遂げている東ドイツ。西側に追いついた国民生活を持ちながら、いまだに厳然と「ベルリンの壁」の警備が続いている。なぜ、同じ民族、かつては同じ国であった大地を隔てる壁に固執するのか。この「壁」を警備する警察、離散家族、そして大国化する東ドイツの現状を追う。

東京から北海道の原野に移り住んだ父・息子・娘の家族生活を中心に描くドラマ。１９８１年（昭５６）１０月から半年間、連続ドラマとして放送された彼らの“その後”。今回は、思春期をむかえた息子・純の初恋物語。◆黒板吾郎（田中邦衛）一家が北海道・富良野に来て６年の歳月が流れた。長男の純（吉岡秀隆）も中学３年生になり、高校受験や将来のことについて悩みはじめた。そんな純がひそかに思いを寄せる少女・れい（横山めぐみ）が、自分は東京で働きながら定時制高校に通うつもりだと純に打ち明ける。ある日、れいの母親がトラクターの下敷きになり死亡する事故が起きた。れいの胸中を思う純。だが、クリスマスの前夜、れいの一家は夜逃げしてしまう。

「ペレストロイカ」、ロシア語で「再建・改革」を示すこの言葉を合言葉に、ソビエトはゴルバチョフ書記長の下、広範な社会改革に取り組んでいる。すでに映画・文芸など文化政策は紹介されてきたが、この番組では初めて政治・経済の実態に切り込んだ。初登場の個人営業レストランや複数候補による工場長選挙など経済改革の現状を紹介。またマルクス主義を「狂信主義」と批判する市民たちの自由な討論会も紹介、合わせてペレストロイカに反対する勢力が根強く存在することもモスクワの市民運動を通して描き、困難な改革への道のりを報告した。