象嵌とは文字通り、象り、嵌めこむこと。秋山逸生は木材の地に金属や貝、象牙などの素材をはめこみ、木目の変化に調和させながら様々な彩りを飾る。正倉院に木画として多くの作品が残っているほど古い技法の一つである。◆ち密で繊細なうえに繰り返しが多く、余程忍耐力がないと勤まらない。高齢にもかかわらず指先の細かい作業に精魂をこめる。

オランダ東インド会社の極東戦略の中で、はからずも世界の“イマリ”が誕生した背景をドキュメントする。１６～１７世紀、ヨーロッパでは中国産磁器（チャイナ）が珍重された。中でも「芙蓉手」と呼ばれる絵皿は、その薄さとあざやかな文様によって特に高価に取り引きされた。ところがこの中に多数の日本産の製品が混じっていた。現在の総合商社に似た機能を持っていたオランダ東インド会社が、明の衰退で景徳鎮という重要な交易品を失ったため、出島のオランダ商館を通して有田で“偽チャイナ”を作らせたのだ。

確たる物的証拠もなく、一貫して否認を通しているにもかかわらず、山中事件の犯人として１・２審で死刑判決を受け、最高裁へ上告中の霜上則男被告の無実の訴えを検証する。◆１９７２年７月、石川県山中町の林道でタクシー運転手が他殺死体で発見され、ある青年の自供から霜上被告が主犯として逮捕された。事件から１５年を経て行われた現地調査や支援の人たちによる救援運動、鑑定書の検証、両親の心情などを通して“凶器なき殺人事件”といわれる山中事件の捜査と裁判の問題点を探る。（その後、１９８９年６月の上告審で死刑判決は破棄され、審理やり直しが命じられた。１９９０年差し戻し審で無罪確定。）

離婚から２７年、人生の秋を迎えた男女が、一人息子の死を目前に再会。二人は初めて家族の絆の重みを知る。◆宮島鉱造（笠智衆）は、２７年前に他の男のもとへ走った妻・タキ（杉村春子）と離婚し、今は蓼科の別荘に独り暮らしをしている。ある日、一人息子の隆一（杉浦直樹）がガンであと３カ月の命と知らされて上京。隆一の家でタキと再会し、追い払おうとするが「お父さんに何ができるの」と逆に詰め寄られる。つき離したものの、８０歳を過ぎても息子にろくな言葉ひとつかけられない自分に気づくのだった。◆「老いと死をみつめ、人生の秋をしみじみと」

農作物・水産物・輸入食物などの食品の安全性を検証するシリーズの第３弾。この回はグルメブームのなかでの生食による寄生虫、チェルノブイリ原子力発電所事故による放射能汚染食品、建築資材石綿（アスベスト）の危険に焦点を当てる。◆グルメブームで目先の変わった調理法を工夫するところは多い。ところが魚貝類には寄生虫がいることもあり、うかつに生で食べると害になることもある。特に淡水魚は農薬の改善が皮肉にも寄生虫の増加につながり、被害が続出している。また関心を集めている発ガン物質アスベストの危険性、処理方法を報告する。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日〜１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第３２回は王子製紙会長の田中文雄さん（７７歳）。

隅谷正峯は技術的、理論的にも現代刀剣界を代表する一人。伝統や家柄を重んじるこの世界で、独力で今日の地位を築いた。◆従来からの定説を覆し、鎌倉期に使われた「和銑」の鉄を鍛え、古刀の再現に挑戦。鎌倉期をしのぐとさえいわれる美しい丁字刀紋を世に問うた。伝統世界に身を置きつつ、しばられることのない柔軟な科学者の目を持って、常に明日へ向かって美意識の真価を探る。

子どもたちの興味を引く海の生物のミステリアスな生態を、バラエティー豊かなコーナーで紹介する。生物がもっとも神秘的な姿を見せる受精や産卵、孵化、誕生に至る場面などを、様々な映像技術で多角的に研究する。（１９８７年３月３日開始）◆全長２０００キロ、日本列島もすっぽり入ってしまう世界最大のサンゴ礁、オーストラリアのグレート・バリア・リーフから、サンゴのなぞに迫る。昼間は石のようなサンゴだが、夜は触手をなびかせ、動物プランクトンを捕まえて食べる。また、サンゴの赤ちゃん・プラネラ幼生は、波に乗って遠くの岩礁へと旅立つ。このような珍しい生態を紹介していく。ほかに、佐渡にある魚の温泉リポートも紹介。