損害保険金総額７，０００兆円。高度に複雑化した日本社会が抱える危険の値段である。人口衛星落下保険、原子力輸送事故保険、隣人保険、離婚保険など、現代を象徴する巨大な危険から巷の危険まで、細大もらさず探し出されて作られる保険の数々、その数は１，０００種類にのぼり、さらに年間３０種類の新保険が生まれている。◆番組では、損害保険会社の商品開発部を舞台に、新保険が抱えるさまざまな危険や不安をあぶり出し、年々肥大する危険先進国・日本の姿を描いた。

昭和３年、チョッちゃんこと北山蝶子（古村比呂）は、北海道岩見沢の女学校を卒業、上京して音楽学校へ進んだ。北海道の大自然と心豊かな家庭とに育まれたチョッちゃんは、自由奔放そのものだ。やがてオペラのコーラスガールとして知りあった天才的バイオリニスト・岩崎要と結婚。戦時色が濃くなるなか、いつの時代にも子どもは心豊かに個性的に育てていきたいと願うチョッちゃんの子育て奮戦記が始まる。夫の出征、青森への疎開、終戦。苦を楽に変える名人・チョッちゃんの涙と笑いの半生記。原作：黒柳朝。ＮＨＫ連続テレビ小説第３８作。（１９８７年４月６日〜１０月３日放送、全１５６回）

漆の上に金粉や美しい貝、卵の殻を蒔いて文様を描く蒔絵。金沢出身の寺井直次は、幼いころから漆や加賀蒔絵の魅力に取りつかれた。◆理化学研究所で漆の器に金属を用いる研究に取り組み、狂いを生じない理想の金胎蒔絵を完成させる。奈良朝以来さまざまな素材と結びつけてきた蒔絵だが、寺井は好んで「卵殻」の技法を用いて鮮やかで奥の深い白を生み出すことに成功する。

「家」を中心に生きてきた日本の家族は、経済の高度成長が始まった頃を境に大きく変わってきた。個を追求した結果、いま家族はどうなっているのか、評論家・川本三郎さんが、ユニークな視点から家族を見つめてきた人びととの対話の中から、この３０年の日本の家族関係の移り変わりと、問題を浮き彫りにする。（１９８７年６月９日開始、全３回）◆第３回は、家族の中に企業の論理が入り込んでしまった現状を探り、行き過ぎた産業文明にどう歯止めをかけるかを考える。ゲストは経済学者で、福祉や教育の問題にも提言をしている正村公宏さん。

白磁・青白磁は、中世中国を代表する磁器で、空を思わせる色合いから、「空青」などとも呼ばれる焼き物。美濃の窯元で生まれた塚本快示は、小山富士夫との出会いがきっかけで独自の道を切り開いた。以来４０年、一貫して白磁・青白磁の美を追求してきた。◆一色の世界に彩りを添えるとすれば彫りしかない。刻まれる独特の紋様は神品と評される。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日〜１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第２９回は東京大学名誉教授・小平邦彦さん（７２歳）。

三井三池争議をたどり、幾多の大惨事や鉱害と闘ってきた炭鉱労働者たちの苦闘の歴史を描く。国の石炭政策に翻弄された炭鉱の男たちの声が伝わってくる。１９２８年（昭３４）１２月、三井鉱山は組合に指名解雇の通告をした。これが激しい三池闘争の始まりであった。以後のヤマの歴史は合理化とその背中合わせにある爆発事故、鉱害そして失業の嵐である。産業の衰退は人々の荒廃、地域の崩壊へとつながっていく。

終戦直後、笠置シヅ子の歌う「東京ブギウギ」は敗戦に打ちひしがれた大衆に勇気と希望を与えた。そのエネルギッシュなリズムは、戦時下の抑圧からの解放感ともあいまって日本中を巻きこんだ。激動の時代を芸ひとすじに生きたブギの女王・笠置シヅ子の半生を、人情味たっぷりに描く。（１９８７年６月５日終了、全２０回）◆昭和１２年、大阪松竹歌劇団に憧れて、芙美子（藤吉久美子）は家出し大阪へ。入団したい一心で、毎日劇場の前に座りこんだ。トップスターのシヅ子（順みつき）はそれを見て１０年前の自分を思い出して放っておけず、自分の楽屋へ連れてきた。