オランダ東インド会社の極東戦略の中で、はからずも世界の“イマリ”が誕生した背景をドキュメントする。１６～１７世紀、ヨーロッパでは中国産磁器（チャイナ）が珍重された。中でも「芙蓉手」と呼ばれる絵皿は、その薄さとあざやかな文様によって特に高価に取り引きされた。ところがこの中に多数の日本産の製品が混じっていた。現在の総合商社に似た機能を持っていたオランダ東インド会社が、明の衰退で景徳鎮という重要な交易品を失ったため、出島のオランダ商館を通して有田で“偽チャイナ”を作らせたのだ。

明治１４年の陸軍参謀本部地図課をめぐる不可解な一連の事件の真相を探る、歴史推理ドキュメント。◆明治１４年（１８８１）陸軍参謀本部で、地図課の職員が清国に地図を密売したという疑いをかけられ、自殺者が相次いだ。しかし、その死はなぜか病死とされた。以後地図は国家機密とされ、敗戦に至るまで参謀本部が管理した。参謀本部は極秘裡に大陸の地図を作成し、大東亜共栄圏が地図上に姿を現す。最初から戦争の刻印をおされた地図の数々と、奇妙な事件に迫り、日本が軍国主義へと傾斜していく時代の転換期を描く。

８年前に婚約しながらなぜか結婚に踏み切れない男女と、今まさに婚約しようとする若いカップルがそれぞれに入り乱れる。シリアスな問題である「婚約」をめぐるコメディ。（１９８７年１月１０日〜２月７日放送、全５回）◆ＦＭラジオ局の編成局長・加納一馬（山城新伍）と、「クラシックサロン」という番組のＤＪ・保科レイ子（秋吉久美子）は婚約者どうし。結婚に踏み切れないまま８年という月日が経っていたが、一馬の母が急死して多額の相続税がかかってきたこと、また「クラシックサロン」をやめて歌番組にしたいという番組編成上の都合から、一馬が結婚を迫り出す。魂胆を見抜いたレイ子は婚約解消を申し込むが、一馬は承知せず、かえってレイ子が困って泣きついてくるように裏から手を回す。

一定温度の環境下で電気抵抗がゼロになるという超電導現象をめぐって、世界の科学者が超電導物質の開発競争を続けている。もし常温で超電導現象を起こす物質が開発されれば、電気の送電ロスがなくなり、コンピューターの高速化も可能になる。エネルギーと情報の両面に革命をもたらすであろう超電導研究の現状を伝え、将来を展望する。

清水焼きの卸問屋の家に生まれた清水卯一は幼い頃から陶器に興味を持ち、１４歳で名陶・石黒宗麿の門をたたいた。◆鉄釉陶器は、陶器のうわ薬に鉄分を多く含むものを塗ることによって、ガス窯の火加減、鉄の酸化と還元の作用で様々な色合いを出すことができる。窯の中の“雰囲気”をチェックしながら、約１２時間つきっきりで１，３００度の炎を操る。

円高に経済摩擦と世界中から激しく揺さぶられる経済大国・日本。問題はすでに対外的なものだけでなく、日本全体のシステムにかかわるものとなった。国際協調型の産業構造への転換を要求される日本の現在と未来に迫る。（１９８７年５月１７日終了、全３回）◆加速する円高で急激に国際競争力を低下させた日本企業の課題は、モノづくりから消費にいたる全過程の見直しである。消費動向がただちに商品開発にフィードバックされ、生産は国境を越えて点在する工場群の中で効率よく分業され、在庫は最小限に抑えて消費者へ送り出す。それに欠かすことのできないのが情報ネットワーク。高度情報ネットワーク社会の実態に迫り、そこから追い出される人間の問題を考える。

新潟県の山間豪雪地の安塚町が取り組んだ大イベントの舞台裏を描き、過疎地の地域おこしのあり方を問う。安塚町は町起こしの起爆剤として東京の後楽園球場に大量の雪を運び込み、ジャンプ台やカマクラをつくって都会の人に雪を楽しんでもらおうというイベントを企画した。役場の総務課長を本部長とする実行委員会を中心に、町内の多くの人たちが何らかの形でこの企画に参加し、イベントは見事に成功した。

本場結城紬は、古くは天平の昔から、結城を中心とした地帯で農家の副業として織られてきた絹織物。真綿から指先で紡ぎ出す糸つむぎから織りまで４０以上ある工程を家族ぐるみですべてが手作業。◆きらびやかさを押さえた手触りと使うほど深まる味わいとぬくもり。「糸紬」「絣くびり」「織り」の３工程が技術指定されている。茨城と栃木にまたがる１４００戸の機屋、２千人以上の織り子など２万人の手により伝統の誇りを守る。