李氏朝鮮王朝の血を受けて生まれ、日本化教育を受けて帝国軍人となっても民族の誇りを失わなかった李グウ（李?／グウは金へんに禺）の一生を追うドキュメンタリー。◆広島に投下された原爆では、韓国人も多く命を落とした。平和公園の対岸にある慰霊碑には、「李グウ公殿下以下二萬余霊」と刻まれている。李グウは朝鮮王朝最後の皇帝の甥として生まれ、日韓併合に伴う強制措置として幼いときに単身日本に連行された。日本では皇族に準ずる李公家の当主として日本人化教育を受けたのち、帝国陸軍軍人に仕立て上げられた。しかし彼は強い意思をもって韓国女性と結婚、民族の純血と誇りを守り抜いた。

故郷・沖縄の思いを表現する彫刻家・金城実さんたちが制作した「平和の像」が破壊された。像は沖縄の人々がようやく語り始めた集団自決の犠牲者に対する慰霊の碑として造られたものであった。◆兵庫県西宮市の定時制高校で英語を教える金城さんは、彫刻家でもある。１９７０年のコザ暴動のとき、耐えることに慣れた沖縄の人たちが占領軍である米兵相手に立ち上がった姿に打たれ、自分を表現しようと彫刻を始めた。１９８７年、民衆の思いを彫り続けてきた金城さんは、沖縄戦で集団自決の壕となった読谷村のチビチリガマに「世代を結ぶ・平和の像」を遺族らと共同制作した。しかしそれは完成から半年で、沖縄国体の日の丸・君が代論争の余波を受けて破壊されてしまった。

四方を山に囲まれた甲斐に生まれ、あと１０年生きていれば天下をとれたといわれる武田信玄。本音の生き方を求めて肉親や家族との間で悩みながらも、人材育成や領国経営に近代的な手腕をふるったその生涯を描く。ＮＨＫ大河ドラマ第２６作の総集編。全５回。原作：新田次郎。◆第４回「二重の死」。信玄（中井貴一）と嫡男・義信（堤真一）との確執が表面化しはじめた。甲斐を強くするためには手段を選ばぬという信玄と、潔癖な息子。義信に「父を葬る」と聞かされた傅役・飯富兵部（児玉清）は、信玄を狙うが果たせず切腹。幽閉された義信も自害する。甲斐では三条の方（紺野美沙子）が病に冒され、息を引きとる。ひたすらに三条の方を守ってきた八重（小川真由美）も遺体の前で胸を突いて後を追う。

東京は新橋・烏森にある小さな業界新聞社に新米記者“シーナ君”を中心として、ユニークな先輩・同僚、憧れのマドンナが絡んで繰り広げるほろ苦くも大騒ぎな日々をコメディタッチで描く。原作・語り：椎名誠。（１９８８年１１月２１日〜１２月９日放送、全１５回）◆椎名誠（緒形直人）は、烏森にある「百貨店ニュース社」の新人記者である。社員２３人の小さな会社だがまわりは変わった人間ばかり。ビルの地下の喫茶店ではウェイトレスのマイコ（城戸真亜子）を紹介され、“マイコを守る会”に入らされてしまうなど、戸惑うことの連続である。

現代っ子のホステスと彼女を見守る孤独な老紳士との心のふれあいを通して、人と人とのつながり、思いやりの大切さ、生きていくことの厳しさを描く。◆麻子は自分の店を持つことを夢見ているホステスである。店の常連客で元駅長の中原は、今は鉄道模型作りと週末に麻子に会うことを楽しみにしている。中原は麻子に店の資金の提供を申し出る。しかし数日後、麻子のもとに中原の訃報が届いた。

本当の父は別にいた。肉親と信じて帰国した後、人違いと分かった中国残留孤児のとまどいと、間違えられた男のせつない思いを描く。◆紀代子は中国残留孤児。肉親捜しの結果、下谷で小さな惣菜店を営んでいる茂が父親と判明し、日本に帰国した。茂の姪の正代は一人暮らしの茂の土地を当てにしており、帰国した紀代子をうとましく思う。茂は紀代子との生活を喜んだが、自分にも亡き妻にも少しも似ていない彼女に一抹の不安を感じていた。ある日、弁護士が訪ねてきて紀代子は茂の子供ではなく、今は資産家になっている保子という人の子供・清子だと告げる。

世界の政治や経済に影響力を持つ一流の学者や知識人が、現代の様々なテーマを論じる。第１シリーズは５人の学者による「時代を読む」。（全３回）◆歴史上の大国崩壊のメカニズムを追求した「大国の興亡」でアメリカの没落を暗示した、エール大学教授ポール・ケネディ。世界経済に占めるアメリカのシェアが低下する中で、アメリカは今後も海外での軍事的責務を担い続けられるのか。領土を拡げすぎたローマ帝国、スペイン、イギリスなど覇権国家の歴史を振り返り、“帝国の手の伸ばしすぎ”という言葉で危険を論ずる。◆副音声は英語

第一線で活躍している友禅染色家・羽田登喜男さん。その創造の現場にカメラを持ち込み、作品が作られていく様子を紹介する。羽田さんは、故郷の金沢で７年間加賀友禅の修業をしたのち上京、京友禅を一から学んだ。彼の作品は京風の華やぎだけでなく、加賀友禅の持つ繊細さと写実性が加わった独特の世界を作り出している。羽田さんは「京と加賀のよいところを合わせて、私の友禅にしたい」、「持っている心を表現できる職人でありたい」と語る。