天平以来１２００年余りにわたって続けられてきた東大寺二月堂の「お水取り」を、これまで公開されていなかった行事を含めて紹介。その全貌を明らかにする。◆大和路に春を呼ぶといわれる火と水の祭典として有名な行事だが、１１人の僧侶が２週間堂にこもって数々の知られざる行法に取り組むことはあまり知られていない。別火と呼ばれる準備期間から満行までおよそ１カ月のあいだ僧たちの生活を追う。

１９８７年４月に国鉄が民営化され、観光旅行の形態も序々に変わろうとしている中、日本再発見をめざし地方のバラエティーに富んだ旅情報を探る。今回は従来の伝統的な観光地に加え、価値感の多様化した現代人に合わせて新たにリストアップされた「新日本観光地百選」の中から、石川県和倉温泉、和歌山県の中辺路（なかへじ）、青森県の古牧温泉、大分県の由布院温泉を紹介する。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日〜１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第２１回は日本水泳連盟会長の古橋廣之進さん（５８歳）。

女舞を特徴とする上方舞・吉村流の中にあって男の家元となった吉村雄輝に芸の道を聞く。◆振り袖姿で出征したという逸話を持つ吉村雄輝は、戦後も女舞の伝統を男の舞に生かそうと独自の芸風を確立した。やさしい中にも無駄のない動きは、花柳章太郎の「衣裳が借り物では芸も借り物になる」という心が生きているのかも知れない。

超電導にかける男たちの熱い夏を、東大の田中昭二研究室の動きと、国際会議に集まる米・ヒューストン大学チュー教授の動きを軸に描いた。◆１９８７年８月、超電導の研究で世界をリードする科学者たちが京都に集まった。この国際会議では、果たして室温で超電導現象が起こるような夢の物質を誰かが発表するかどうかが最大の関心事となった。２１世紀の産業を変える技術的発見といわれる超電導をめぐって、世界で激烈な新物質発見競争が続けられている。基礎研究の分野で初めて世界のトップクラスになった日本の研究は、どこまで進んでいるのか。

東京・神田生まれの泉清吉は、先祖が仙台藩の下級武士。刷毛作りの内職をしていた。馬の毛を人の髪に変えて以来評判となり、家業とした由来を持つ。漆工芸を陰で支える漆刷毛作りの八代目。漆芸家大河原光之助は、「家が焼けても漆刷毛だけは持って出ろ」という。精魂こめて作られた道具は、芸術家の分身である。◆神田明神で髪供養をする姿に、念入りで気っぷのいい手さばきと根性が重なる。

自然を巧みに取り入れて建造された浄土寺を作家の安西篤子さんが訪ね、阿弥陀来迎の荘厳な美の世界を体験する。◆浄土寺浄土堂の１９５７年（昭和３２）から１９５９年にわたる解体修理によって蔀戸（日光をよけ風雨を防ぐために格子の裏に板を張った戸。今の雨戸に当たる）が現在のように復元されるまでは、浄土堂の西側は板壁で覆われていた。この蔀戸を開け放つと西日がふんだんに差し込む構造で、落日のころ堂内は朱と金色の光に包まれて阿弥陀三尊の体が隅々まで浮かび上がる。それはあたかも金色の阿弥陀三尊が現世に来迎したかのような不思議な感動を見る人に与える。

近代化の中で消えつつある伝統技能、今も脈々と受け継がれている職人技術を横浜市内各地に訪ね、手作りの工程や職人さんたちへのインタビューを交え、年一番組という地道なペースで記録しているシリーズ。◆象牙に下絵を張りその型にそって切り取り、更に箱にうめ込み立体的に飾りを作っていく独特な手法の芝山漆器。西洋人に好まれたことから現在も横浜に残る数少ない伝統工芸を紹介する。指物師、塗師、蒔絵師など何人もの技師により、漆器が完成される。