貧困の中で美しく花開き、花の盛りに夭折した“時代の天才”樋口一葉の鮮烈な青春を描いた全５回のドラマの第３回。夏子（大原麗子）と桃水（石坂浩二）の仲が荻の舎の噂になり、いたたまれない夏子は師の歌子（久我美子）に相談した。師は無関係なら桃水と縁を切れと言うが、夏子自身は病気や生活苦で小説が書けない桃水を見捨てられず悩む。だが桃水自身の口からさとされ、夏子はひとりで小説を書きはじめる。やがて作品が雑誌や新聞でとりあげられるようになり、いささかの注目も集める。しかしそのころから夏子は激しい頭痛に見舞われだして筆は進まず、生活はますます苦しくなる。

陶芸家、田村耕一のアトリエを訪ね制作風景を紹介すると共に、田村をスタジオに招き話を聞く。◆「技術的に新しい試みをした壺が焼き上がると、枕元に置いて寝る。静かな夜更けにピンピンという音がする。ゆう薬が割れ、貫入（ひび割れ）が入る時の音である。まるで壺が生きているような感じがする」と田村は語る。

明治４２年５月、伊勢神宮外宮前に、神宮と向かい合う形で宇治山田郵便局が登場した。この木造平屋のモダンな洋風建築は、全体を円形に統合して事務能率の向上を図った構造になっている。中央ドーム屋根の内部は公衆溜として親しまれた。建物が完成する以前からの貴重な業務日誌が残っており、文字裏から当時の世相が偲ばれる。伊勢神宮のそばで活躍した郵便局のモダンな美しさに、伝統ある伊勢の町並みを重ね合わせながら、明治の郵便配達夫の面影にも迫る。◆宇治山田郵便局

第９０回の直木賞を受賞した、神吉拓郎の短編集「私生活」から５編を原作とする２０分完結５日連続のドラマシリーズ。各回の主人公を田中邦衛が通して演じる。（１９８０年１０月７日～１１日、全５回）◆第３回は「もう一人の私」。住みこみの家政婦は、夫が女と出て行き、子供は姉に預けていると云っていたが、ある日出ていったきり戻らなくなる。夫とよりを戻したのかと思っていたが、近所の人の話ではむしろ彼女のほうが男好きなのだという。そういえば、夜中に手洗いに行ったとき、浴室から出て来た彼女が意味ありげに歩いていった事があった。あれは私を誘っていたのか、それともそんなことには縁のない男と思ったのか、と私は考えるのだった。

四国の小さな田舎町から眺めた庶民の昭和史を温かくつづったドラマシリーズ、第一章・全７回の第６回。（１９８５年４月１３日〜５月２５日放送）◆巡子（内田也哉子）を見にきた母親の女遍路（樹木希林）は、巡子のへその緒を置いて行った。それを見た静子（桃井かおり）は女遍路が二度と現れないことを直感し、巡子の母親になろうと決意。折からフサ子（藤村志保）が妊娠５か月になった蝶子（磯野洋子）にイヌの日の帯をさせ、神社でおはらいを受けさせる。静子と巡子も同行し、神前で母子の誓いを立て４人で記念写真を撮った。その最中に吐き気に襲われた静子は、待望の妊娠に気づいて大喜び。早速、赤飯を炊いてお祝いをする。

昭和１５年から昭和３１年、戦中戦後の時代に大人へと成長していく女性の目を通して見つめたさまざまな愛のかたちを描く。（１９８５年１月９日〜２３日放送、全３回）◆第二夜「夜中の薔薇」。昭和２２年早春、女学校５年生・１８歳になった陽子（石原真理子）は尊敬できる教師・スミ子（いしだあゆみ）に出会って充実した毎日を送っていた。スミ子は陽子を家へ招き、戦死した恋人の話を聞かせてくれた。あこがれの先生の打ち明け話に大人びた気持ちになった陽子だが、その夜、寝静まったはずのスミ子の部屋に男が忍び込むのを見てしまう。

厳格な明治の気骨を持った父親と息子の確執。年老いてゆく父親との絆を息子の視点で描くドラマ。◆雄一（中村嘉葎雄）の父・義道（小沢栄太郎）は元海軍の艦長であった。雄一は作家を志したため父と意見が合わず、弟・憲二（伊武雅刀）に父母を託していた。老いても頑固な父の扱いに困った母や弟たちは、父を病院へ入れてしまう。艦長の誇りを捨て切れない義道は、息子たちの厄介者になるよりは死を選ぼうとする。

誰もが持つ古き良き故郷への郷愁。その思いとは裏腹に、地域の姿とそこに暮らす人々の生活は、時代の変化とともに変貌する。このシリーズは中国地方５県の特色ある地域を選んで故郷の今と昔を描く。中国地方ＪＮＮ系列４社（山陽放送、中国放送、山陰放送、テレビ山口）の共同制作、放送番組センター協賛番組。◆広島県福山市鞆町は、沼隈半島の突端にあり、対岸の仙酔島、阿伏兎観音に囲まれた美しい港町である。古くから瀬戸内海の海運・漁業の拠点として栄え、神功皇后の「三韓征伐」ゆかりの沼名前神社（ぬなくま）の神話や万葉集にも登場する。中世には水軍の拠点となり、江戸時代には福禅寺の対潮楼に朝鮮通信使が宿泊した。幕末には七卿都落ちの三条実美が逃れ、十返舎一九、坂本竜馬らゆかりの遊郭跡など多くの歴史・遺跡が残る街である。５月の鯛網、旧暦６月の御手火祭など民俗行事も保存されている。これら鞆の浦の風景と文化をこよなく愛す画家・藤井軍三郎氏を通じて瀬戸内の暮らしを紹介する。