１９８５年４月１日、電電公社は官業から民間企業ＮＴＴへと変身する。その内幕と情報化社会の現状を報告する。◆新通信事業時代を迎えて民営化されるＮＴＴが収入を増やしていくには、データ通信、情報ネットワーク作りといった成長率の高い部門に力を注ぐことになる。酪農やスーパーとのネットワーク作り、リクルートとのＩＮＳ（高度情報通信システム）に力を入れる新電電の様子などを紹介。

ラジオのＤＪを担当している夏子（岸本加世子）は、脳血栓で倒れた父の見舞いに故郷へ帰り、不倫の恋を清算する決心をする。そのドラマの中で、向田邦子の９編の作品が朗読される。（１９８５年８月５日〜８月９日放送、全５回）◆第四回。「字のない葉書」「丁半」「知った顔」の３つを朗読する。情愛溢れるエピソードから浮かびあがる父親像を、脳血栓のあとのリハビリに励む自分の父に重ねて、夏子は何としてもまだ死んでほしくないと思い、秩父の札所めぐりを始める。

ジャズとアフリカを愛する男性が難病を発病した。彼のさすらい旅“テンベア”を通して、生きることの意味を問うドキュメンタリー。◆ジャズ喫茶を経営する榊原吉明さんは、富山からアフリカへ放浪の旅に出た。かつてベース奏者として活躍した彼は、１０年前に原因不明の難病「バージャー病」を発病し、両手の指先８本と両膝から下を失った。４０歳を迎え、自分自身の生き方を貫くために日本を出る決意をしたのだ。榊原さんは杖をつきつつケニアに向かう。

天正１０年の武田家滅亡から、大阪夏の陣とその戦後に至る戦国末期を生き抜いた真田一族の波乱万丈の物語を通して、乱世の男たちの夢とロマンを壮大なスケールで描いた新大型時代劇第２回作品。（１９８６年３月１９日終了、全４５回）戦国の雄・武田信玄はすでに亡く、その虚に乗じた織田・北条・徳川の前に武田家は滅びようとしていた。信玄の恩を受けていた上州の真田昌幸（丹波哲郎）は武田の再起を図るがかなわず、二人の息子・信幸（渡瀬恒彦）と幸村（草刈正雄）と共に真田家の生き残りの方法を模索する。

関千枝子さんは広島県立第二女学校の数少ない生き残りの１人。勤労動員中に被爆し死亡した３９人の級友と３人の先生の状況を克明につづった著書「広島第二県女二年西組」でエッセイストクラブ賞を受けた。被爆４０周年の夏、クラスメートの慰霊祭に出席するため関さんは広島にやって来た。１３歳の少女だったあの日から、生き残ったことを負い目と感じて生き続けた関さんの胸中をさぐるドキュメント。

老いながら生きていくことの意味を、晩秋の東北地方を旅する老人の出会いと別離の中に描くドラマ。圭作はかねてからあこがれていたひとり旅に出た。東北新幹線でみちのくへ。美しい鳴子の紅葉。東北の秋は冬を迎える前の静けさで彼を包む。冬は死であり、冬を迎える前の安らぎは快くしかし哀しい。旅先ではさまざまな人に出会う。２人の若い恋人同士。かつての同僚はガンの床に伏していた。

大正１２年９月１日、帝国ホテルが完成した。奇しくも同日、関東大震災が襲ったが影響はなかった。設計者はアメリカの著名な建築家、フランク・ロイド・ライトである。深い軒や独自の装飾によってつくられる濃い陰影。建築用材として省みられなかった日本産の大谷石の巧みな使用。自由な空間構成と東洋的性格が調和した見事な建造物である。ライトの構想の中には宇治の平等院の姿が重なっている。光と陰の生み出す濃淡や独特の造形美からは、天才ライトの日本へ寄せる思いが伝わってくる。◆帝国ホテル中央玄関

長崎・諫早の名家、楠木一族が幕末に私財をなげうって干拓した十万坪の新開地。一族に分け与えられたその土地をめぐる謀略、巻き込まれていく“フーケモン”の楠木雲太郎、そして楠木家の親戚たちの大騒ぎのひと夏を描く。（１９８５年７月４日～９月２６日放送、全１３回）◆最終回。矢上（根津甚八）と伸子（手塚理美）の関係を聞いた雲太郎（役所広司）は、矢上に殴りかかるがかわされる。矢上の昔話と本当の思いを聞いた雲太郎は、最後の最後で賭けに出た。夏の終わり、盆踊りの櫓の上で「月の本明」を歌う雲太郎と順子（田中好子）。そして諫早に秋が訪れる。