平凡なサラリーマン夫婦が、まるで西鶴の世界に滑り込んでしまったような体験をする物語。◆集太郎とサチ子はアパート住まいの夫婦。その隣りには、バーのママ・峰子が住んでいた。峰子は、複数の男性と奔放な生活を送っている。ある日、サチ子はそのうちの１人の誘うままホテルに行き、かつてない性の愉悦を味わった。峰子は集太郎に真相を告げ誘惑するが、集太郎は応じなかった。

鹿児島県の知覧飛行場を舞台に、太平洋戦争末期の陸軍特攻隊員と残された者たちを描いたドラマ。原作：高木俊朗、脚本：木下恵介。◆特攻基地知覧には２軒の旅館があり、出撃を前にした隊員の家族が今生の名残を惜しみに次々と訪れた。そのうちの１軒の富屋旅館に川西少尉の妻静子が訪れた。二人は親の反対を押し切って一緒になった仲で、そのためまだ入籍していない。出撃の朝静子はハンカチをちぎれるほど振って夫を見送った。しかし川西機は故障のため途中から引き返してきた。そして２度目の出撃、川西機はまたも引き返した。上官から「故障を偽る卑怯者」とののしられ、川西少尉は衝動的に操縦席に走り、飛び立ち、両親の住む鹿児島の生家の上空を旋回した後、地上に突っ込む。

病いに冒されながらもひたむきに生きる夢千代と、それぞれ暗い過去を背負いつつもしたたかに生きる芸者たちの姿を、山陰という独特の風土の中で描くドラマ。（１９８１年３月１５日終了、全５回）◆夢千代こと永井佐千子（吉永小百合）は、被爆２世。母のあとを継いだ春屋という芸者置屋を細々と営んでいる温泉芸者。自分の病状をつぶさに日記につけている。春屋には、なぜかユニークな芸者ばかりが集まってくる。

地元の旅回り劇団の夢と実生活を描くドキュメント。戦後の混乱のころから、人々に夢を売る旅役者をやってきた１人の男と、彼が築いた一家の悲喜こもごもの舞台人生。ここには、今ではすっかり姿を消してしまった“家父長制度”が生きている。カメラはそのなかでの親子の葛藤、芝居の世界に自分の“夢”を託す熱心な観客たちとの熱っぽい交流などを追っていく。

かつては水量豊かで、人や物資の水運路であった太田川。木材を流した筏師たちが歌った流し唄を紹介する。◆戸河内町から可部に至る太田川本流の流域には森林が広がり、産出される木材は筏流しによって運ばれた。大正時代には川舟が３５０艘上下し、筏は１日平均１０組が下る賑わいであった。源流に近い奥地で切り出された材木は「筏場」や「筏浜」と呼ばれる箇所に集められ、筏に組み上げられて、広島へ向かった。筏流し唄は急流や早瀬では棹使いに忙しく歌う暇も無いが、流れが緩やかになると自然に口を突いて出た訳である。戸河内の唄に比べ、それより下の加計あたりの唄が更に緩調子なのも面白い。

一年間、テレビを中心に活躍した演芸界の芸能人を各部門から選び、新人賞・名人賞を贈って精進をたたえる。◆新人賞は春風亭小朝、紳助・竜介、最優秀新人賞がザ・ぼんち。功労賞は林家彦六、大衆賞は林家三平、特別賞は芦屋雁之助。名人賞は桂三枝、ツービート、三遊亭円楽、広沢瓢右衛門。第１回の花王名人大賞は横山やすし・西川きよしと決定した。

未婚の母になった１人の素朴な女性の成熟過程を軸に、女はこの現代をいかに生きるべきかを問いかけるドラマ。原作：津島佑子。◆２１歳になる多喜子（大竹しのぶ）は、さして好きでもない相手の子を身ごもる。両親の反対を押し切り、１人で準備して出産した多喜子は、新しい子育てを実行していく。やがて多喜子は助けてくれた神林（緒形拳）のいる造園会社に就職。神林にひかれる多喜子だが、彼にはダウン症の子どもがいることを知る。

国際政治の仕組みと全体像を解明しながら、複雑に絡みあう国際社会の中で、いま日本に何が求められているかを考える。全３回。２回目は、ソ連のアフガン介入以来、対決の度合いを増したと見える米ソ両超大国間を結ぶ多重多層のつながりを探る。ソ連のアフガン侵攻に使われたトラックは、アメリカの資本と技術で製造された。アメリカ製の精密工作機械が、ソ連の戦略ミサイルの精度を高めた。１９２１年レーニンと親交を結んで以来、米ソ貿易を手がけてきたオクシデンタル石油ハマー会長へのインタビューを交え、技術・資本・経済をめぐる、入り組んだ両国関係を検証し、日本への示唆としたドキュメント。