高松塚をしのぐ大発見といわれる“束明神”を完全復元した実験考古学の試みをつぶさに記録、当時の築造技術に迫ろうというドキュメント。あわせて古代史上のロマンに満ちた被葬者推定もくりひろげる。取材班は、３カ月がかりで復元を追い続けた。

役者から裏方まですべて村人によって演じられる、大鹿村に伝わる伝統歌舞伎を長期取材したドキュメンタリー。長野県の伊那谷は、かつて芸能の里といわれ、各村々で歌舞伎が演じられてきたが、今では下伊那郡大鹿村に残るだけとなっている。

国際的に活躍している日本のジャズ界のトップスター渡辺貞夫は、“ナベサダ”と呼ばれ親しまれている。その人間的な魅力と、彼のつくり出す音楽の普遍的な美しさの秘密を、音と映像で描いていく。ひとりの音楽家がベストの音を創造するまでのプロセスを、海外から一流メンバーを迎えて武道館で大コンサートを開くまでのリハーサルに打ち込む姿の中から浮き彫りにするヒューマンドキュメント。

新しい郷土玩具造りに精を出す２人の心の交流を通じて、物質文明の中で忘れ去られつつある日本人の心の原点を探る。中谷さんが帰郷した１９７０年（昭４５）、利賀村は高度成長の波に取り残された典型的な過疎村として、村中が未来を摸索し悩んでいた。そこに、全国を放浪する絵本作家の金沢さんがやって来た。故郷の心を残そう、冬の出稼ぎを少しでもなくそうと話しあった２人の結論が郷土玩具造りであった。

御嶽信仰独特の祈とうや、冷水に打たれる寒の滝行など厳しい修業の模様を通して、霊山・御嶽の神秘的な風景をつづる。◆木曽御嶽、標高３，０６３メートル、ここには今も神秘な山岳信仰の姿が残る。参道には御嶽特有の石碑が並ぶ異様な光景が展開する。魂の依り代として建てられた『霊人碑』である。魂は死後、御嶽に帰り霊人として鎮まるという。御嶽は魂の住む霊山である。◆御嶽山〔長野県、岐阜県〕

画家・丸木夫妻の、沖縄の地上戦を描いた「沖縄戦の図」が完成するまでを追ったドキュメンタリー。「原爆の図」で知られる丸木位里さん（８３歳）、俊さん（７２歳）夫妻は、沖縄に渡り、縦４ｍ×横８．５ｍという大作に取り組んだ。「沖縄戦を描くことこそ、戦争の本当の姿を描くことになると気づいたから」という。夫妻は那覇市の首里に滞在し、戦争の爪痕の残る沖縄各地を訪ね歩いた。そして人々の証言を基に、スケッチを重ねていく。

戦後３０年余、開かれた皇室といわれ、国際的なつきあいも多くなった皇室の公の機関としての役割、それを陰で支える宮内庁の職員の日常の仕事など、皇居のこれまでテレビカメラが入れなかった部分まで紹介する。外国大使が信任状奉呈の際に皇居まで乗る馬車を管理する車馬課、晩さん会の料理を担当する大膳課、式典を受け持つ式部職、歴代の皇室に伝わる文書を守る書陵部、天皇の御公務を補佐する侍従職そして侍医たちなど、皇室を支える人々の知られざる日常を描く。

飛騨の春を呼ぶ『高山祭』。この年、上二之町の石橋会のカラクリ人形が百年ぶりに上演され、大きな話題を呼んだ。美女が獅子に変じ再び美女に戻るという、山車の上の匠の超美技である。高山には享保の大火以来２５０年間、町を挙げての火伏せ信仰がある。３０を超える秋葉山の社があり、常夜灯には当番制で年中火を絶やさない。◆華やかな高山祭。高山は町そのものが文化財であり、毎夜の夜警が町を守り続ける。◆【重要無形民俗文化財】高山祭の屋台行事〔岐阜県〕