貴子（山本陽子）は３９歳、広告代理店で制作の仕事に携わっている。食品メーカーの研究所に勤める俊彦（伊武雅刀）と結婚して８年目。５歳の花子と４歳の太郎の２児の母でもあるが、同居している姑の直枝（菅井きん）が子供の面倒をみてくれるので、貴子は安心して仕事に専念できる。和田はつ子「よい子できる子に明日はない」より。◆ある日、花子が幼稚園で男の子にけがをさせられた。貴子は娘の将来を考えて、花子を私立の女子大付属小学校へ入れようと努力をはじめる。（１９８７年１０月９日終了、全３０回）

日本最古の絵巻「源氏物語絵巻」の作画技法にスポットを当て、その豊かな芸術性の秘密に迫る。◆源氏物語絵巻の柏木の第三段、生まれたばかりの薫を手に抱いている源氏の図がある。これをＸ線写真で見てみると、眠る姿に描かれている赤子が、手を伸ばして源氏の方に微笑みかけているという図柄に描きかけられていることが分かった。つまり段々塗り重ねながら絵を変えていく。ちょうど西洋のレンブラントの絵などが、やはりＸ線撮影すると元の違う絵が出てきたりするのと同様である。これは日本の絵では大変珍しいことといわれる。

吉四六噺で有名な大分県野津町で家族劇団を結成、マイクロバスで移動公演を続けている野呂さん一家、三男の天平君（４歳）を中心にその日常を描く。◆野呂祐吉さんはかつて東京で喜劇役者としてならしたが、都会になじめず土を求めて帰ってきた。そしてこの地方に伝わる吉四六噺を柱にして家族劇団を旗揚げした。５人の子供たちはみな芝居が大好きで、野良でも風呂でも食事の後でも芝居のセリフが自然に口を突いて出る。

画家・安野光雅さんが「鳥獣人物戯画」が伝えられてきた京都の高山寺を訪ねて、その独創的なおもしろさ、風刺性を語る。◆サル・ウサギ・カエルなどが遊び戯れる姿を擬人化し、力強い線で描いた鳥獣戯画・甲巻は１２世紀半ばに鳥羽僧正覚猷（１０５３〜１１４０）によって描かれたとつたえられる。その技法や自由奔放な精神を受けついで、乙・丙・丁の３点が描かれた。「戯画の中の動物を仮に子供の姿と考えると、私たちにとってはもはや戻れない子供の世界、失われたものへのあこがれの世界が描かれているのではないか」と安野さんは思う。

日本の高度経済成長を支えた陰の主役の一つは、全国に８７万軒以上あるといわれる中小の下請け製造業者である。いま、それらの町工場に何が起こっているのか。３５年間旋盤工として働くかたわら作家活動を続ける小関智弘さんが、東京都内にある町工場を訪ね、そこに生きる人々の意見と生活を３日間にわたってリポートする。（１９８７年５月１２日開始、全３回）◆シリーズ最終回は、そこで働く人たちに話を聞く。職人たちの創意工夫で生き抜いてきた町工場だが、今ＭＥ化が進み自動機械が導入されている。今後の職人の必要性、生かしかたなどを考える。

明治維新に出発した近代日本は、アジアの大国になりながら、昭和で敗戦の破局に至った。作家・司馬遼太郎氏がその昭和へ至る歴史を、明治・幕末まで遡って語るシリーズ。（全１２回）◆第１０回は、幕末動乱期に、唯一人新国家の青写真をもっていた坂本龍馬の、民権尊重の思想が、明治維新では骨抜きにされ、日本が英米よりドイツに傾斜して行く姿を明らかにする。

神奈川県立自然公園に指定されている真鶴半島や春を待つ真鶴町を紹介する。◆番組では、真鶴町の魚の干物を売るみやげもの店、名物「ウマツラハギ」の干物や真鶴港でのワカメの選別作業の様子など、町と港でくらす人々を追う。また、真鶴は小松石と呼ばれる良質の石材の産地としても有名であり、石材店での小松石の墓石研ぎも紹介する。他に、松やクスの木の原生林、三ツ石海岸、珍しい貝の展示場なども含めて真鶴方面の小さな旅を伝える。

敗戦後、中国大陸に取り残された日本人が、悲惨の極みを味わったという歴史的事実を、中国残留孤児と実の母との再会を通して描く。カネボウ創立１００周年記念・ヒューマンスペシャル。原作：良永勢伊子。◆かつて大陸に娘を残してきた石渡芳子（池内順子）は、テレビで娘・孫美華（二木てるみ）の来日を知るが、引き揚げ後再婚した夫の手前名乗り出ることができず、隣家の主婦・相沢久美子（竹下景子）に頼んで事情を調べてもらう。まもなく美華は芳子と対面、母親だと直感するが、芳子は逃げるように立ち去る。数日後、美華を自分の娘だと認めた芳子は、中国で起きたことを語り始める。