山奥の温泉旅館に泊まった二人の男が巻きこまれる不可解な殺人事件を描く。原作：井上ひさし（１９８７年７月６日〜７月２４日放送、全１５回）◆東北へ講演旅行する文壇の大御所・石上（中条静夫）に、作家の藤川（中村雅俊）も同行した。雨が降りしきる中、山奥にポツリと建つ古びた温泉旅館にたどりつく。二人が講演会場へ出かけようとすると、役場の職員・岡田（大竹まこと）が橋が流されたという知らせをもってくる。一本道なので、会場へ行くことはおろか東京へ帰ることもできないという。

茶の湯が確立される安土・桃山の時代、権力者が争って求めた“呂宋壷”。そのルーツをたどって作家・豊田有恒氏が京都、ルソン島さらに原産地へと旅し、壷の謎と歴史的背景、その価値に迫る。◆１６世紀の日本にルソン島から伝来した茶壷があった。豊臣秀吉をはじめとする権力者たちがこれを珍重したため、壷は富の象徴となった。しかし千利休に代表される茶人たちには俗界の欲望を具現したような壷は好ましくないものだった。利休の死の一因となった呂宋壷とは、いったいどのようなものだったのか。

国内に残された唯一の原生林地帯・知床、ここは国立公園でありながら大半の樹木が国有林でもある。この原生林の大規模な伐採を林野庁が計画している。原始の森を守れという声、経済苦況打開のため伐採せよという声など、激しく対立する意見の中、番組ではこの森は一体だれのものかを問う。

詩人・高橋睦郎さんが奈良・京都・東京の各国立博物館保管の地獄・餓鬼・病草紙を見ながら、六道絵の心を探る。◆平安時代中頃から、人間はその因果に応じて、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上の六道を輪廻するという思想が流布した。地獄・餓鬼・病草紙はこの浄土思想をもとに１２世紀末に描かれたもので、いずれも地獄の業火や現世の煩悩、病に苦しむ人間たちの悲惨で醜悪な姿が迫力ある表現で描かれている。「“死を見つめることにより生を見つめよ”、これが六道絵の心」と高橋さんは語る。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日〜１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第２８回はヤナセ会長・社長の梁瀬次郎さん（７１歳）。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日〜１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第２４回は漫画家・横山隆一さん（７８歳）。

東洋の精神世界に深い関心を持つ画家・前田常作さんが、自らの芸術の原点という宇治市の平等院を訪ね、鳳凰堂の美の世界の中に藤原氏の心を探る。◆関白藤原頼通は１０５２年、極楽浄土の世界をこの世に造りあげようと平等院を造った。外観は翼を広げた鳳凰を模し、堂内には定朝の作った金色に輝く阿弥陀如来が、精巧緻密な透かし彫りの天蓋の下に座す。四方の壁には５２体の供養菩薩が雲に乗って舞い、楽を奏したり礼拝したり様々な姿で配されている。「どんなに富と権力を持っていても人は孤独でなんらかの不安を抱きつづけ、光明を求めている。平等院にはそんな人間の切実な祈りの世界がある」と前田さんは語る。

現在、教育界はさまざまな問題を抱えている。学校の１００年をふり返り、学校とは何かを探る３夜連続のシリーズ。（１９８７年１２月１５日〜１７日、全３回）◆学校において子供ともっとも身近であり、人間的成長に影響を与えるのは何といっても教師である。第２回は、長野県の保科百助、赤羽五郎、岩手県の吉田六太郎の３教師の事績を通して教師像のあり方を探る。実物教育を実践し、工業立県を唱えた保科、白樺派の影響を受け、教師自身を子どもに近づけることを主唱した赤羽。吉田はいまも存命し、子どもたちを戦地へ送ったことに悩みつづけている。