ラジオのＤＪを担当している夏子（岸本加世子）は、脳血栓で倒れた父の見舞いに故郷へ帰り、不倫の恋を清算する決心をする。そのドラマの中で、向田邦子の９編の作品が朗読される。（１９８５年８月５日〜８月９日放送、全５回）◆第二回。朗読する作品は「マンハッタン」。無気力な性格で妻にも見放された男が、「マンハッタン」というスナックに通いはじめる。ママとも気が合い、なにくれとなく面倒をみたりしていたが、店がつぶれてしまうとまたもとの無気力に戻ってしまう。

わずか２２歳の生涯を火だるまの如く駆けぬけた個性豊かな画家・村山槐多と、彼によって自らの魂を揺り動かされ、人間本来の生き方を模索する現代のひとりの男の、６０年という歳月を超えてふれあう魂の物語。◆上田市の郊外にある「信濃デッサン館」には早逝した画家の作品が数多く集められている。そのなかでひときわ異彩を放つのが大正時代の詩人画家・村山槐多の作品。１８９６年横浜生まれで、京都一中に学ぶ。従兄弟に当時売出し中の画家・山本晶がおり、その影響もあってか両親の反対を押し切って画家を志し上京、日本美術院に学んだ。個性豊かで自由奔放な若者を大正前期の時代風潮が迎えた。１９１９年、２２歳５ケ月で短い生を終える。

時局の焦点となっている日米貿易摩擦について、日米のスタジオを衛星中継で結び、事態を考察する。ドキュメントと討論の２部構成で、両国の実体を見ながら当事者の見解を聞き、今後を展望する。◆１９８５年７月、日本国内はもとより世界の注目をあつめた貿易摩擦解消の「アクションプログラム（行動計画）」が発表された。大きな柱となっている関税引き下げ、規格基準の見直しなどの線にそって日本とアメリカの言い分をぶつけ合う。第１部は、ＮＨＫ取材のアメリカ報告、ＡＢＣ取材の日本レポートにより、テレビを通じてどれだけ相互理解のために努力してきたかを検証しあう。また、双方の基準認定制度の違いを具体的に品物を比較することで明らかにする。

原爆の惨禍がもっとも激しかった半径５００メートル圏内の爆心地で被爆した人々はこれまで全滅したと考えられていた。しかし広島放送局原爆プロジェクトの調査によって現在５６人の人びとが生存していることが判明した。爆心地で被爆しながら奇跡的に生存しているこれら５６人はどのようにして今日まで生きぬいてきたのか。４０年前の被爆の現場を精密に再現し、彼らの証言を加えて科学的に分析、解明していく。

児童合唱団の東ドイツ演奏旅行に同行取材し、団員たちのさまざまな表情をとらえたドキュメント。創立４０周年を迎えた静岡児童合唱団（戸崎裕子さん主宰）が、その優れた芸術性に高い評価を受け、東ドイツ政府から「バッハ・ヘンデル生誕３００年祭」に招待された。東ベルリン、ライプチヒをはじめ１１都市での演奏会の模様や、子供たちが肌で感じた東ドイツを紹介する。

明治１８年、山梨県東山梨郡日下部町に、５６０９円９８銭という民間の寄附金によって郡役所が建てられた。これは費用といい、様式といい、３１カ村が集まった当時の東山梨郡においては破格なものであった。しかしながら山里だった甲府盆地や山間部には、明治初期を代表するハイカラな洋風建築が２００余りを数えたという。背景には、文明開化を山国にもという進取の気性をもつ甲府人気質と、近江同様、行商によって富を得た甲府商人の財力があった。◆東山梨郡役所

温かくユーモラスな母と子の再会の旅を通して、愛情の深さを再確認するまでを詩情豊かに描くドラマ。東芝日曜劇場・第１５０７回。◆北海道の大地でたくましく、おおらかに生きる母がいる。そして、トランペッターだったという父親のイメージを、美しいトランペットの音色とともに、日々ふくらませている少年がいる。秋も深いある日、母と子は５年ほど前に別れた、夫で父親である男との再会の旅に出る。

第四高等学校物理化学教室は、西洋技術の導入を急務とする明治政府の意気込みを背景に、明治２３年、金沢に竣工した。教室は階段式という斬新な構造だった。また、同じく移築保存されている武術道場「無声堂」は、明治にはじまる洋風道場建築の貴重なもので、道場内には剣道場と柔道場が併置され、弓道場もある。６３年間の歳月に、１万２千人をこえる四高健児を世に送り出した。旧制学校生の青春を、二つの建物から回想する。◆第四高等学校物理化学教室・無声堂