ぜひ結婚をと思っているわけではないけれど良縁となれば心も動く、３０代後半の女性の微妙な思いを描く。◆純子（桃井かおり）は３７歳のフリーライター。１５年前に結婚と離婚を経験し、それ以来独身を通してきた。「結婚生活は性にあわない」と言っているが。恋人の大野（並木史朗）が上司の娘との結婚を決めたと別れ話を切り出したのにはショックを受けた。北へ行くといい縁がくると占われ、半信半疑で旅した日光でもの静かな中年紳士・山形（佐藤慶）と知り合う。その時は気にとめなかったものの、数日後にお見合い相手として再会し、最後のチャンスと心が揺れる。

ある幼稚園で園児や母親に生きたカニやカエルをつかませる。いかに外で遊ばなくなった子供達が多いか問う。◆人間は幼いころから遊びながら多くのことを学び、体力をつけていくのが本来の姿である。しかし、遊びの道具がぜいたくになっていくのとは反対に、ひ弱な子供が増えたのも事実である。自然と接する機会が極端に少なくなった都会人は、昆虫や小動物への愛着が薄れている。外に出ず、圧倒的に家の中で遊ぶことの多くなったことが子供達に与える影響と、その問題点を指摘する。◆第４１週

古希を越えてなお、漆芸の第一線で活躍している大場松魚さん。カメラは大場さんのち密な手作業を追う。大場さんは、文様に切り抜いた薄い板金を、漆を塗った器の表面にはりつける技術・平文の第一人者。下絵描きにはじまって金粉・銀粉蒔きまでいくつもの工程がある中で、器の曲面に板金の反りを合わせる＜なじませ＞が、「平文の作業の中で一番大事な仕事だと思っている」と、大場さんは語る。

京都・西本願寺の一画、滴翠園の池に面した三層の楼閣・飛雲閣を演出家の蜷川幸雄さんが訪ね、その美を探る。◆飛雲閣の外観は二層、三層を左に寄せた左右非対称で、変化に富み自由な造形である。「柳の間」「茶室」などのある一層は静かな落ち着いた雰囲気、二層の「歌仙の間」は壁に三十六歌仙の「歌仙図」が描かれ、ここで人々がにぎやかに詩歌に興じた様がしのばれる。天井、壁すべてを金色に施した三層の「摘星楼」は、その輝きで客人の眼を奪ったに違いない。「各層それぞれに違う宇宙が広がり、不思議な体験を連続的にさせられる。まるで一つの芝居を見るような建物で、大変な演出だ」と蜷川さんは感動する。

瀬戸大橋の建設で、瀬戸内海をとりまく地域の状況は激しく動き始めた。検証・瀬戸大橋時代をメインテーマに、瀬戸内エリアの観光・経済などの新しい動きをタイムリーに伝える。（１９８８年５月７日～１９８９年９月３０日、全６９回）

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆塚本幸一：ワコール会長。１９２０年、滋賀に生まれ、１９４６年和江商事を創業。１９４９年株式会社に改組（社長）、婦人洋装下着の生産販売を開始。１９５７年ワコール販売を設立（社長）。１９６４年両社を合併、ワコールと改称し社長に就任した。

老いた作家と認知症の症状を示す妻との３年間の心の軌跡をたどったドキュメンタリー。私小説など一連の作品を朗読でつづる。◆最後の白樺派作家といわれた耕治人さんと妻のヨシさん。詩や小説を書くことしか知らなかった耕さんを支え続けたヨシさんだったが、３年前から認知症の症状をあらわしはじめた。症状が進むにつれて耕さんが家事一切を引き受けざるを得なくなる。この生活を綴った私小説「天井から降る哀しい音」は人々に衝撃を与えた。

熊本県内各地で歌い継がれる「ふるさとのうた」を紹介するシリーズ（１９８８年４月３日～１９８９年３月１９日放送、全５０回）。『肥後シリーズ』は１９８６年日本民間放送連盟賞（放送活動部門）受賞。◆「東雲のストライキ…」という一節が知られる「東雲節（しののめぶし）」。明治三十三年、娼妓たちがストライキをし、舞台となったのが熊本市二本木の東雲楼であった。そのことを歌った「東雲節」は明治時代の労働歌とも言える。