挫折を乗り越えて大きく飛躍し、捨て身で語る文楽・竹本越路大夫の芸に対する執念を聞く。◆義太夫の大夫と三味線は夫婦のようなもので、相性がある。相三味線に二代目野澤喜左衛門を得た竹本越路大夫は、逆境を乗り越えて自らを励ます。客をうならすような浄瑠璃を一生に一度語ってみたいと執念を燃やす。

障害者の自立を支援する夫婦の活動を紹介し、真の福祉とは何か、本当の人間らしさとは何かを訴えるドキュメンタリー。障害者でもさりげなく、当たり前に地域の中で暮らせないものかと考えたある夫妻は、知的障害者のための生活の家を自宅の横に個人の力で建設した。そこでは、施設での生活に終止符をうった三十代の６人の男性が、夫妻の支援を受けながら生活し、それぞれの職場に通っている。しかし、長い施設生活の癖が抜けず家出をしたり、円高不況で解雇されたり、社会の中で当たり前に生きていくには厳しい現実にぶちあたる。献身的な夫妻の援助と協力で、社会の一員として懸命に生きる６人を追う。

大阪・西成地区。人びとの暮らしは貧しいが、人情厚い街でもある。その街の一角にある松尾医院。木造のオンボロ医院だが、７２歳になる女医の与志（ミヤコ蝶々）が今もかくしゃくとして地域医療に携わっている。与志には男の子が４人いるが、医院に残っているのはおとんぼ（末っ子のこと）の春吉（村上弘明）ひとりだけ。ある日、妻と離婚したばかりの三男、冬樹（江本孟紀）が、春吉に自分の子供を預かってくれと頼む。（１９８７年１０月１２日〜１１月６日放送、全２０回）

義太夫節の太夫として女性で初めて人間国宝になった竹本土佐廣に、太夫の難しさを聞く。◆声を出すのに２０年。節回しに２０年。謡いの間に１０年といわれる義太夫節を歌い続け、至芸を師から後継者へ伝えようと励む毎日。今になって師に言われたことがよく分かり、語るのが面白いと、８９歳の太夫が話す。

平安三筆の一人・空海（７７４〜８３５）は唐様から和様へと展開する日本書道史の原点に立つ存在で、後世への影響ははかり知れないものがある。空海の遺墨中第一にあげられる「風信帖」を中心に彼の書の芸術性、創造性、精神性を前衛書家・榊莫山さんが語る。◆「風信帖」は空海が３９歳の頃、比叡山の最澄にあてた手紙３通を１巻にまとめたもの。中国の王義之の古典的書体と空海が唐で新しく学んできた顔真卿の丸く豊かな書体が混じり合い、華麗な調和を示す。榊さんは「最澄へのライバル意識がこの独特の書風を創造した。空海の人間的においがする。彼は精神の象徴として書をとらえていた」とみる。

子をもつ母親に育児や養育の手掛かりを提供する番組「おかあさんの勉強室」、この３回シリーズでは地域に根ざした児童館の役割を紹介する。（１９８７年６月２９日〜７月１日放送）◆東京都大田区池上にある徳持児童館は、子供たちがいつでも出入りできる汽車のようであろうと「あおぞらきしゃポッポ」と名付けられた。９人の職員は、いつでも子供と一緒に遊ぶ。児童館には近くの子供が１日平均１００人来て遊んでいるが、児童館のない地域への児童館出前を毎週金曜日に行い、遊びの指導を行っている。

日本人の生活の中で古くから親しまれた竹は、日用品の細工物としての印象が強く、美術工芸としての認識は浅かった。しかし、正倉院の宝物には竹工芸が残っており、伝統工芸の高い技術が証明されている。竹の繊細にして優美な編みの交差が、美しい光と影を演出する。◆油絵志向だった飯塚は、名人だった厳父に鍛えられ、この道を継ぐ。竹工芸でただ一人の人間国宝である。

戦国の世は徳川が制したが、幕府に対する不満や陰謀の火種はいまだくすぶり続けていた。太平を守らんとする徳川三代将軍・家光の活躍を、弟・忠長との継承争いや幾多の陰謀、由井正雪の慶安事変などを通して描く。長編時代劇ドラマ。原作：南原幹雄「寛永風雲録」。（全六部・１３話）◆徳川二代将軍秀忠の長男・家光（北大路欣也）は、城中での安逸な生活に飽き足らず、しばしばお忍びで江戸市中に出ては奔放に振舞っていた。秀忠はこれを嫌い、温厚篤実な次男・忠長を三代将軍の座にすえようと画策する。また、江戸市中では幕府への不満を抱いた旗本組が街中を荒らし、町奴たちも幡随院長兵衛をかしらに徒党を組んで対抗した。両者は事あるごとに抗争を繰り返し、町衆の生活にも影響が及んでいた。