江戸元禄期に王朝美を再現し、日本の雅を完成させた絵師・尾形光琳（１６５８〜１７１６）。京都の高級呉服商の家に生まれ、美に囲まれた幼少期。遊興にふけり没落し、弟の陶芸家・乾山の絵付けをする。俵屋宗達の『風神雷神図』との運命的な出合いは有名。◆やみ夜から金地の世界に照らし出された梅と水流−最晩年の傑作『紅白梅図屏風』など多くの作品の中から、光琳の作風、現代に通ずる写実とデザインを追う。◆【国宝】紅白梅図〔ＭＯＡ美術館〕、八橋蒔絵螺鈿硯箱〔東京国立博物館〕◆【重要文化財】風神雷神図屏風〔東京国立博物館〕◆【その他】竜田川図〔五島美術館〕

福岡の平和台球場一帯には、古代から中世にかけて太宰府の重要な役割を担う施設「鴻臚館」が置かれていた。１９８７年（昭和６２）から行われた発掘の成果を踏まえ、鴻臚館を紹介する。◆鴻臚館の歴史は古く、７世紀頃、那津（福岡市）にはすでに朝鮮半島や大陸との渉外にあたる館が置かれ、唐や新羅の使節、日本の遣唐使などの接待、送迎にあたっていた。太宰府鴻臚館はそれをひきつぎ、平安時代はじめに設けられた。遣唐使は太宰府と鴻臚館に立ち寄る習わしであった。遺跡の数々の出土品や観世音寺にのこる品々は鴻臚館の往時の華やかさを今に伝えている。

昭和初期、結核にかかったことが原因で婚家を追われた母と子の悲しい愛をサンゴ礁の海を舞台に描く。◆さわは前夫との間の子・稔を連れて、鹿児島の船員・平田のもとに後妻として嫁いだ。しかし結核にかかり、稔とともに追い出されてしまう。故郷の奄美大島に帰ったさわは老母・ちかと暮らすことにした。島の人々はさわたちに優しい。

没後５０年を迎えた作家・泉鏡花の幻想世界を豊かな水のイメージを通して描き、大地を崇拝し一木一草に神を見ていた日本人の失われた原風景への挽歌とする。◆鏡花の地元・金沢をはじめ、各地で“鏡花ルネッサンス”とでもいうべき動きが高まりつつある。竜神を封じた池の物語「夜叉ヶ池」、飛騨深山幽谷での怪異な行脚を語る「高野聖」など、鏡花が描いた世界はついこの前まで日本人の多くが持っていた妖怪や天変地異への恐れと根源的に結びついている。

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆藤林益三：元最高裁長官。１９０７年京都生まれ。弁護士、司法研修所教官、最高裁判事を経て、１９７６年最高裁長官。のち日本法律家協会会長。

大阪府の南部、南河内の富田林に残る旧杉山家を中心に、古い民家が残る町並みを紹介する。◆富田林は戦国時代の１６世紀半ばに成立した「寺内町」、すなわち寺院を中心に構成された宗教自治都市として知られる。ここでは今も古い時代の民家が生活の場として生きており、町並み保存地区のモデル地区として注目を集めている。そうした中で、かつて造り酒屋として栄えた旧杉山家が、保存修理作業によって江戸中期の姿に復元され寺内町最古の民家として公開されている。座敷や床の間、障壁画などの内装から、当時の生活がしのばれて興味深い。

インドに住む８億人のヒンズー教徒の信仰の拠り所・ガンジス河。この全長２６００ｋｍのガンジス河の雄大な自然と、信者たちと河との関わりを、２回にわたって紹介する。◆第２回。南インドを出発し、ガンジス河を河口まで下りながら、辺りに住む人々の生活やその精神世界をリポートする。

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆河合雅雄：日本モンキーセンター所長。１９２４年兵庫生まれ。日本モンキーセンター生態研究部部長を経て、京大霊長類研究所教授、所長。