文楽三味線一筋に、堅実で格調高く端正な芸は、そのまま野澤錦糸の生き方である。◆野澤・鶴澤・豊澤とあった三味線の流派の特徴も今ではほとんどなくなってしまったが、野澤錦糸のやわらかく、きれいな音はやはり野澤の音色である。どうしたら若い人に来てもらえるか、三味線弾きの後継者として文楽の将来に危ぐを抱く。

農産物輸入自由化を求める海外からの圧力が高まる中、重要な政治課題となっている「食糧」問題を３回にわたって考える。（１９８８年３月２０日〜４月３日放送、全３回）◆第１回は、なぜ今米国が日本に自由化の圧力をかけてくるのかを分析する。かつて米国に食糧援助を多く受けていたＥＣや発展途上国が次々に自給を達成、その多くが食糧輸出国に変わった。農産物の慢性的余剰を抱える米国が、豊かな大マーケット・日本をターゲットとするその実態に迫る。

ショートドラマと漫画の映像を組みあわせた、ヤング向け古典講座。宮仕えの女房たちを現代のＯＬに例えて、現代語で「枕草子」の世界を読みとく。“Ｓａｙ！Ｓｈｏｗ！ナゴン”（１９８８年８月２３日〜２６日放送、全４回）◆読みやすく、ちょっと教養もつくというので、専門分野の入門書を漫画にしたものが人気を呼んでいる。その中で、古典を現代の女の子の言葉で訳した橋本治「桃尻語訳・枕草子」を、ショートドラマと赤星たみこのキャラクターによる漫画で映像化する。◆「枕草子」を漫画で描くという難題を抱えた祐子（高見知佳）の前に、突如、清少納言（鳥越マリ）が出現。“宮仕え”すなわち平安版ＯＬであることを、現代ことばでとうとうと説明しはじめる。ゲストのピーコが平安ファッションを解説。

日本・中国・台湾、三つの国をふるさとと呼ぶ一家の歴史を追い、戦争、祖国、そして生きることについて問いかけるドキュメンタリー。◆１９３８年（昭和１３）吉崎芳さんは教師として中国大陸に渡った。台湾生まれの音楽家・董清海さんと結婚し５人の子供に恵まれ、音楽を生活の糧としながら満州国建国、日中戦争、文化大革命、日中国交回復という歴史のうねりの中を一家で生き延びてきた。清海さんの死をきっかけに一家は日本に居を定め、子どもたちも独立してそれぞれの道を歩み出す。

それぞれの国がもつ独自の教育方法には、歴史や文化の影響が大きい。外から一定の距離をおいて観察すると、教育の本質が見えてくる。◆キブツはイスラエルの集落の呼び名で、財産の共有などを原理とする非常に強い共同体。死海のほとりにあるキブツの小さな小学校は、少しばかりはみだす子がいても個性を大切にする自由な校風をもつ。生き生きと自分を主張し、遊び学んでいる子どもたちののびやかな表情を紹介する。◆シリーズ世界の学校〔３〕イスラエル編

作家・井出孫六さんが初夏の国東半島を訪れ、富貴寺大堂をたずねる。◆国東半島に仏教が伝えられたのは奈良時代。その険しい山々は、人々の厚い信仰心を養ってきた。平安時代の末、戦火が相次ぎ人身が荒廃する中、浄土を願う欣求浄土の思想が流行。富貴寺大堂もこうした浄土思想に基づいて建てられた。◆「僕は今まで中世に対してとかく貧しく暗いイメージを持っていましたが、ここに座って当時を想像してみると、豊かな、そして浄土への憧れという国東の民衆の精神世界が思い浮かびます」。９００年を超える富貴寺大堂の歳月を目のあたりにした井出さんは、本尊の前に座して感想を述べる。

大石内蔵助の妻・りくを軸に、女の側から描く「忠臣蔵」。赤穂浪士に関わったために多くの試練にあうものの、強く生き抜いた６人の女たちを描く。◆元禄１５年（１７０２）、大石りく（浅丘ルリ子）は但馬の実家から江戸に出てきた。前年の春、江戸城内で刃傷事件を起こして切腹させられた浅野長矩の旧臣たちの様子を知るためだった。亡君の敵を討とうとする浪士たち、その戦いの裏には女たちの哀しみがあった。

障害者福祉法の一部改正により導入された「費用徴収制度」により、自立を求めて働く障害者が収入を得るどころか出費を強いられるという事態が起きている。高知県にあるさくら福祉作業所の理事長の動きを通して、制度の矛盾を訴える。◆国に認可を受けた通所授産施設は、在宅の障害者がリハビリや経済的自立を目的に通う施設である。しかし昭和６１年度（１９８６年度）から施設の利用費を国に払うようにと「費用徴収制度」が導入され、そこでの賃金を上回る費用を徴収されるようになった。障害者の社会参加を拒むかのようなこの制度の問題点を指摘する。