江戸時代の画家・円山応挙は、日本画の世界に写実主義の新風を巻き起こした。国宝の雪松図は、その画業のひとつの頂点である。この写実的技法がいかにして獲得されてきたかを、細密なイラストで知られる舞台美術家・妹尾河童さんが探訪する。◆松は古くから不老、繁栄などの象徴とされ、絵の題材となることも多かったが、それらは様式的・平面的な表現にとどまっていた。応挙は若年の頃に西洋渡来の遠近法を学び、さらに真剣な写生を繰り返して写実の技法を身につけた。雪松図は、当時新興の豪商であった三井家のために描かれたもので、厳寒の中に力強く立つ豪快な雄松と、雪の中で優雅にたたずむ雌松が生き生きと描かれている。

交通事故による死者が激増して１万人突破は確実とされ、第２次交通戦争といわれる状況が生じている日本。一方西ドイツでは死者を６割も減らすことに成功している。西ドイツの例を参考に、日本の安全対策を検証する。◆かつて交通戦争といわれ史上最悪の死者数を記録してから２０年、順調に減り続けていた死者が１９８８年（昭和６３）を境に増加に転じた。ヨーロッパの自動車王国西ドイツでは車の数は２０年前の２倍になったが事故は逆に半分に減った。１９５０年代自動車事故が深刻な社会問題となった西ドイツでは、効果的対策を求める国民の声に応えて国や州や民間が一体となって安全対策を一元化、ドイツ交通安全協議会を組織して徹底した安全対策に取り組んできた。

スペインの建築家、アントニオ・ガウディの設計になるサグラダ・ファミリア（聖家族）教会は１００年前に建築が始まり現在も建築中。人間の一生をはるかに超えて建て続けられる建築物は現代に何を語りかけるのかを探る。◆スペインのバルセロナには古い建物が数多く残っている。なかでも有名なサグラダ・ファミリアは１世紀の昔から現在まで建築中で、その完成はさらに１世紀先とも２世紀先ともいわれている。

スリーマイルから１０年、チェルノブイリから３年。２１世紀に向けて、人類の最大の課題となった「原子力」についてあらためて考える。シリーズ２１世紀。（１９８９年４月５日〜４月７日放送、全３回）◆第１回は、英国や青森県六ケ所村などの核燃料サイクルの現状を報告し、問題を探る。原子力発電は１９５４年にソ連で実用化され、１９８９年現在４２０基が運転されている。これらの原発から出る使用済み核燃料の処理については、未解決の課題が多い。

われわれの遠い祖先からのメッセージといえる装飾古墳は、九州の北部に多く残っている。大和朝廷に反抗し敗れる前の巨大古墳や、暗い石室に直孤文や同心円文で表現された装飾性あふれる壁画など。番組では謎を秘めた文様、大胆な彫刻、極彩色の壁画を主なモチーフに、古代の原風景を生き生きと写し出す。◆また大陸との交流の様子や、地勢的に農耕生活と海洋性に別れたそれぞれの特徴などを分析する。◆チブサン古墳、井寺古墳、千金甲第一古墳、弁慶ケ穴古墳〔熊本県〕、石人山古墳、岩戸山古墳、王塚古墳、珍敷塚古墳〔福岡県〕

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆生江義男：桐朋学園理事長。

環境基準の統一を阻む国境の壁、国情の差を探り、地球環境がもはや自国の内側をクリーンにしていればよいではすまされない段階にきていることを検証する。◆今、先進国では酸性雨などの汚染が国境を超えて広がり、途上国では３０年前日本が経験した以上の公害が急速に環境をむしばんでいる。先進国に比べてゆるい環境基準が先進国企業の進出を招き、進出企業の多くが本国では認められない排煙・排水、廃棄物処理を行っている。途上国では貧しさから抜け出すため、こうした公害輸出をあえて受け入れている。（１９８９年１０月２日〜４日終了、全３回）

満月は地球に、そしてそこに住むあらゆる生物に影響を及ぼしてきた。太陽と地球と月が一直線に並ぶ満月大潮のとき、月の引力は地上の水を支配し不思議な現象を引き起こす。アマゾン河口の大逆流“ポロロッカ”。アメリカ・サンタモニカ海岸に押し寄せ、産卵する魚“グルニオン”の群れ。神々が住むというバリ島の月に寄せる信仰。世界各国の月へのイメージ。オーストラリア・グレートバリアリーフのサンゴの産卵などを紹介する。◆満月祭（バリ島）、仲秋管絃祭（日枝神社）、日月武蔵野図、月夜山水図、松月図鐔、グレートバリアリーフ、アマゾン川