４月中旬、信濃高遠では、「高遠小彼岸」という名の桜が、町のいたるところで咲いている。その名のとおり高遠でしか見ることのできない桜で、関東などで多い「江戸彼岸」と静岡の「富士桜」の自然交配で生まれたもではないかと云われている。人口８千の高遠の町に、この桜を見たい３０万の人たちが詰めかけるが、高遠町の人たちにとっても、長い冬の雪から開放されて、春作業にとりかかる前の花見の宴は何ものにも変えがたく、高遠小彼岸こそ春の象徴であり、町の宝だという。

アメリカ総領事ハリスと唐人お吉の恋物語で知られる下田は、そのお吉が身を投げた「お吉が淵」が、今や、桜の名所となっている。毎年、お吉の命日の３月２７日頃には大島桜が満開になるという。松崎町は、行き交う船が嵐を避ける「風待ち港」として栄えてきた。山の斜面では露地栽培のマーガレットの収穫作業中の女性に話しを聞く。松崎の町に懐古的な情緒を醸し出すなまこ壁、左官職人・長八の独特の芸術の世界は「伊豆の長八美術館」で紹介される。

白血病にかかり余命の短い女と、人生に悩み始めた男が出会う。生きる目的と人生の充足感を求めて苦しむ彼らが、やがて真実の愛に気づくまでを描く。（１９９５年７月１７日～８月１１日放送、全１６回）◆学生時代はプロ級のサックス奏者、いまは一流商社のエリート社員・白井瞬平（仲村トオル）は同期の出世頭だったが、ミスをして降格されてしまう。自分の人生に疑問を感じ始めた瞬平は立ち寄ったバーで保坂灯（葉月里緒菜）という女性と出会う。彼女は２年前にジャズマンの兄を亡くし、いまはニューヨークへ行く夢のために毎日バイトに励んでいる。バーを出たところで灯がいきなり倒れ、瞬平はあわてて救急車を呼び、病院に付き添っていった。◆解説副音声あり

お茶どころ静岡県でもとりわけよいお茶がとれる川根、５月の連休明けとともに一番茶の摘み取り作業が最盛期を迎える。手で摘むのは、何よりもお茶の質を守るためで、朝早くから、やわらかい新芽を摘みとる作業をしている人に、その苦労と喜びを聞く。又、東海道本線金谷駅を起点に、本川根町（ほんかわねちょう）の終着駅までおよそ４０キロ、１時間１５キロのＳＬの旅、乗務員に窓外の自然について話を聞く。

宮崎県椎葉村は人口４，２００人、村の９０％は山林である。色濃く残る平家落人伝説も人が容易に近づけない森の深さを物語り、昔ながらの生活の中に生きている。◆正月行事であるヤナギモチの飾りから始まり、火伏地蔵への代参、茶摘み、日本最古の焼き畑農業、翌年の焼き畑準備の木おろし、木渡りの妙技、イノシシ狩猟など１年の村の暮らし。すべて山の神からの授かりものと感謝を込めて、昔と変わらない伝承の四季の世界を生きる。◆【記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財】日向の焼畑習俗〔宮崎県〕

広く関心をもたれる食や健康、次々に登場する最先端の品物について視聴者の疑問や興味に、科学的なＶＴＲとユーモラスでわかりやすいスタジオ解説とで答え、暮らしに役立つ知恵を合点がいくまで紹介する。司会は立川志の輔と山本志保アナウンサー。◆第１回は、最近注目が集まっている東洋医学の一つ「ツボ」に迫る。ツボとはいったい何なのか、人間以外の動物にも効果があるのかなど。また自宅で、自分でできるツボ健康法も紹介する。

静岡県清水市で開かれた無声映画の上映会で、昔取った杵柄を鮮やかにふるってみせたかつての活動弁士・渡邊錦聲さんの半生を綴る。◆映画１００年の年「無声映画を体験する会」で上映されたのは「瞼の母」。渡邊錦聲さんは９１歳、大正から昭和にかけての無声映画全盛の時代に活動弁士として大活躍、人気芸能人の３位に入ったこともあるほどだった。しかし間もなくトーキーが出現、絶頂期は短かった。渡邊さんは活弁をやめ、京染店を始める。このたび清水映画サークルに頼まれて、６０年ぶりに弁士を務めた。声も出る、台詞がつかえることもない。生演奏をつける楽士は静岡在住の音楽家、増田義孝さんが家族４人で引き受ける。

戦後の日本文学を代表する作品といわれる「死霊」の作者、埴谷雄高さんの創作と思想形成の内面を描き、１０日間、５０時間におよぶインタビューを通して、その独白をじっくりと聞く５回シリーズ。◆「死霊」第８章の発表からまる９年。埴谷雄高はいまその第９章で行き詰まっている。ここは未だこの世に生まれ出てない「人類にとっての最高宇宙」のイメージを死霊のひとりに語らせる章である。最終回では、この第９章に埴谷雄高が描こうとしている「理想の宇宙」についてと、未完に終わるかもしれない小説「死霊」に込められた「未来へのメッセージ」を語る。