「一期の晴れを飾る」甲胄は戦に命をかける武者の晴れ着。源平時代から燃え立つ赤の鎧が多用された。敵を威圧する赤糸威鎧は晴れがましく、死んで辱めを受けまいと武士たちは華々しさを競った。壇ノ浦で鎧二領をまとって海に身を投じた平知盛。源義経の鎧と伝えられる赤糸威鎧は今も大山祇神社に残る。◆栄光と滅んだものの対比を無言で物語る鎧。赤色にこだわった武士たちの美意識と心情を解析し、甲胄の歴史を振り返る。◆【国宝】赤糸威鎧〔大山祇神社〕、赤糸威鎧〔春日大社〕◆【重要文化財】鉄黒漆五枚胴具足〔仙台市博物館〕◆【その他】壇之浦合戦絵図〔赤間神宮〕

所作事とは舞踊のことで、女形の舞踊の中でも大曲とされる『京鹿子娘道成寺』を中村富十郎の解説で鑑賞する。◆初代中村富十郎が初演して以来、その華やかさで人気演目となった。十代の娘の初々しさから、恋の炎に焼かれる女心まで、１０通りの衣裳の早変わりを見せながらの踊りは、道成寺物の中でも大きな花である。

“秋田名物、八森鰰、男鹿では男鹿ぶりこ、能代春慶、檜山納豆、大館曲げ輪っぱ…”。秋田音頭にしたがって、名産を紹介しながら、秋田県北部を旅する。奥羽本線の大館は秋田犬の故郷でもあり、天然の秋田杉を曲げて作る“曲げ輪っぱ”が有名。檜山納豆は、藩主佐竹氏が常陸から水戸納豆を持ち帰ったことに由来する。能代春慶塗も佐竹藩御用達の伝統工芸品。他に、きりたんぽや新産物のマルメロなどを紹介する。旅人は村田香織。◆第１０２５回　◆羽州街道

アメリカ西海岸のシアトルは、日本から一番近いアメリカ。黒潮が回遊して日本とシアトルを結ぶ。２０世紀初頭、既に定期航路が就航していた。日本人も多く住む。シアトル美術館には、日本美術の逸品が多く収蔵されている。絵画は周文、蕪村、大雅や宗達と光悦、光琳など日本を代表する画家の名が見られる。神秘的な東洋美術に刺激されて新しい潮流を生み出したマーク・トビーなど、アメリカ「北西派」の巨匠への影響を追跡する。◆山水図屏風（尾形光琳筆）〔シアトル美術館〕、山水図（伝周文筆）、山水図（池大雅筆）、山水図（与謝蕪村筆）、山水図（岡田米山人筆）、蛇行（マーク・トビー作）、秋草文様皿（尾形乾山筆）

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆なだいなだ：作家・精神科医。１９２９年東京生まれ。医局員時代に「文芸首都」に参加する。井の頭病院精神科を経て、都立荏原病院精神科研究員。作品に「海」（１９５９）、「お医者さん」（１９７０）など。

日本人の心象風景、富士の山容。山頂の３つの峰、「三峰」は無意識に富士の姿として心に刻み込まれた。絵画における富士は平安時代に登場する。４００年にわたって「三峰の富士」が描かれ、イメージの中に定着した。山岳信仰の対象として神と仰ぎ、多くが山頂に臨み、また画題としてきた。三峰型富士の伝統は長く続いたが、江戸中期尾形光琳によって書き換えられ、北斎や広重によって写実化されていく。富士図の変遷と富士信仰の歩みを描く。◆【国宝】聖徳太子絵伝〔東京国立博物館〕、一遍上人絵伝〔歓喜光寺・清浄光寺〕◆【重要文化財】、富嶽図扇面（尾形光琳筆）〔大和文華館〕

石川の古代について、橋本澄夫さん（県立埋蔵文化財センター所長）に聞く。◆日本列島の中央部、日本海に突き出た半島の形の石川県は、古代から海との結びつきが強かった。そうした見地から、甲小寺遺跡、真脇遺跡が紹介される。特に、イルカ漁が盛んだった真脇の文化が珍しい。◆さらに、古墳時代の須曽蝦夷穴古墳、朝鮮半島とのかかわりの深い奈良・平安時代の福浦港、祭祀で有名だった寺家遺跡などがとりあげられ、石川県と日本海の深い関係がわかる。

原子力発電所立地のための可能性調査の段階から始まっている住民と電力会社側との攻防を土地という観点からさぐったドキュメンタリー。◆能登半島突端の石川県珠洲市。人口２万６千人足らず、これといった産業のない典型的な過疎の市で、財政難を打開するため１０数年前から原発の誘致を始めた。能登半島は中部・関西圏の将来の電源地帯とされ、既に北陸電力の志賀原発が建設中、珠洲市は寺家、高屋の２地区が候補地となった。関西電力は高屋地区に１０年前から住みこみの担当者を派遣し、土地賃貸借契約金の前払いを説得材料に用地買収のための借地権交渉を進める。住民は居住地が候補地とされたことを重要視し、個別交渉阻止のために共有地をつくって対抗する。