１７世紀大航海時代のスペインの窓口セビリアは、聖母マリア信仰が特に篤かった。それまでのマリア像を一変させた２人の画家が、スルバラン（１５９８〜１６６４）とムリーリョ（１６１７〜１６８２）である。穏やかで人間的で慈悲に満ちたマリアの表情を描いた。◆コロンブスの新大陸発見で海上交通の守り神はマリアだった。ペストの流行で没落するスペインの国情に厳しい祈りの世界を描いたスルバラン、優しさに満ちた絵を描いたムリーリョ各々の生涯を重ねて、時代を映す。◆聖ペテロ・ノラスコに現われた使徒聖ベドロ、聖女カシルダ、ボデゴン（スルバラン作）、無原罪の御宿り、小鳥のいる聖家族、よき羊飼い、ロザリオの聖母（ムリーリョ作）

温泉の町として知られる熊本県山鹿市は、町のあらゆる場所に“金灯篭”が金色に輝く。山鹿灯篭にまつわるさまざまな話を大宮神社灯篭館で聞き、町の灯篭師の仕事場を訪れる。国指定重要文化財・八千代座の建築は、幕末から明治にかけての繁盛ぶりを示している。郊外にはチブサン古墳などの装飾古墳群がある。歴史の痕跡が見られる町でもある。旅人は渡辺文雄。◆第１０８４回　◆八千代座【国指定重要文化財】山鹿大宮神社灯籠殿チブサン古墳鍋田横穴群金剛乗寺

軍隊が政治の道具に使われるのには反対だと主張した、信念と情熱にあふれた海軍大将井上成美の物語。終戦記念ドラマスペシャル。◆１９４８（昭和２３）年、井上成美は夫に先だたれた娘と二人暮らしで、子供に英語を教えている。兵学校長時代、英語廃止に反発して授業を続けた硬骨漢。角が立つことを平気で言う井上は三角定規とあだ名されている。海軍大学を卒業するとき、義姉の勧めで見合いをして喜久代と結婚したが、スイス駐在を拝命し、帰ってみると妻は結核に冒されていた。妻を看病してやるひまもなく、彼は軍の中枢として戦争に巻き込まれていく。

大航海時代の末期、ヨーロッパの人々が初めて見たサムライ、仙台藩士・支倉六右衛門常長（洗礼名＝ドン・フィリッポ・フランシスコ・支倉）の謎多き半生を探る。仙台放送３０周年記念特別番組。◆藩主・伊達政宗の代理として、通商と宣教師派遣などを実現すべく、支倉常長は二つの海を越え、スペイン国王やローマ法王を相手に外交交渉を操り広げた。しかし日本国内でのキリシタン弾圧などの情報が伝わり、７年後無念の帰国をしている。◆数多くの時代劇に主演、自らも侍の生き方に関心を抱く俳優・仲代達矢と、２９年間の在日経験を持つローマ・グレゴリアナ大学総長（元上智大学総長）ヨゼフ・ピタウ神父が、日欧それぞれの視点からこのサムライの生き方に迫る。

１９８７年６月１日の放送開始以来、６０００回を超えて続く長寿ミニ番組。列車での旅を通して、美しい風景とそこに住む人々の生活を描く。◆今回は、「頂上が平らな山」と題して、アメリカ合衆国・カリフォルニアゼファー号、大陸横断鉄道（デンバー・ウンターパーク・グレンウッド・スプリングス・ルビー・キャニオン）を紹介する。

１９９２年８月、ウラジオストックと福井県敦賀港を結んで初めて開催された「ジャパンシーヨットレース’９２」の発端からフィニッシュまでを追う。◆１９９１年８月、福井県のヨットマンと旧ソビエト連邦沿岸地方スポーツ委員会の間で国際ヨットレースについての１枚の覚書が交わされた。ところがその後事態は急転、ソ連の共産党支配が終わり冷戦の象徴ともいわれたウラジオストックの軍港も開放されて自由な出入りが許され、ジャパンシーヨットレースは平和理に実行できることとなった。弾みのついたヨットマンは日本海を取り巻く全ての国に参加を呼びかけ、日・露・中・韓・北朝鮮の５か国の混成チームを含む１７艇が４日間９００キロのレースに挑んだ。

新年の３日間、伝統芸能の中からめでたい演目を選んで紹介し、あわせて出演者の芸談を聞く。第３日は箏曲「初音の曲」、生田流箏曲「越後獅子」「松上の鶴」、尺八三重奏曲「風動」、長唄「外記猿」「那須野」、義太夫「花競四季寿」より「万歳」「鷺娘」など、広い分野から祝儀物の数々を紹介する。◆申年にちなんでの「外記猿」は、猿回しが大道からお屋敷に呼びいれられて芸をするというもので、その芸として「お染久松」のくだりが入るなど、変化も多く華やかな曲である。

世界で約２０か国が保有し、「貧者の核兵器」として今もなお人類の脅威となっている化学兵器の素顔を暴くシリーズの後編。◆全世界で８トンの量を残す化学兵器も、その９割は製造後十数年を経て使用不可能。が、それを安全に廃棄する技術を人類は持たない。化学兵器の大半を２分する旧ソ連とアメリカの苦悩は大きい。人類にとって負の遺産として重くのしかかるこの恐るべき兵器の影響と取り扱いについての現状を見ながら世界のこれからを考える。