標題の講談の中から「飛鳥山・父子の別れ」の一席を聞く。身分を隠して別れる父子の愛をテーマにした人情話である。吉松という職人が、若い時の過ちがもとで、昔仲間の悪党から折角の平穏な暮しを壊される。再出発したある日、別れたままで探していた子供に偶然出会う。その日暮らしの母子の話を聞いた吉松は、立場を隠して金を渡し、子供を見送って去る。

加賀百万石の文化振興で生まれた「古九谷」。佐賀の有田・伊万里の亜流といわれながら、北陸の風土を生かし独自の制作技法“青手”を創造し陶芸史上に光彩を放ったが、わずか６０年で姿を消す。１００年後に再興した再生九谷と区別して呼称される。大胆なデザインと独創的な色付け技法の青手によって、重厚にして迫力ある名品を世に送り、こつ然と消えた。当時の生産体制変化の波にのまれた結果だった。◆【重要文化財】江沼神社長流亭◆【その他】古九谷大皿〔石川県立美術館〕、染付大皿〔石川県立埋蔵文化センター〕、孔雀文鉢〔本善寺〕、鳳凰文鉢〔山中町資料館〕

一介の薬行商人だったメディチ家に風雲児が現れる。商業技術の才に長けた開祖ジョバンニ（１３６０〜１４２９）の登場により、巨大な富を築き経済を支配する。初代の死後、二代コジモの公共投資による散財、三代ロレンツォの人文主義など経営体質は悪化する。世界初の共和制都市国家・フィレンツェの栄光保持派とメディチ家との確執。その間、ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』など美の世界は休みなく高揚する。◆サン・マルコ修道院、捨子養育院、メディチ家カレッジ別邸（プラトン・アカデミー）、受胎告知（フラ・アンジェリコ作）、ヴィーナスの誕生（ボッティチェリ作）

信州の飯田市に３００年前から伝わる伝統芸能「今田人形」が、フランスで開かれる「世界人形フェスティバル」に招待され、初の海外公演を行った。高校生から老人までと広い年齢層で構成された座員の姿を通してフランス公演を描き、国際交流、伝統芸能のありかたを探る。◆フランスのシャルルビル・メジュール市で３年に１回催されるフェスティバルは世界中の人形劇関係者の憧れとなっている。この年は世界３６か国１２０の劇団が参加した。同市と飯田市との交流から招待された今田人形座は故・木下迪彦氏によって育てられた人形浄瑠璃劇団で座員は２１人。農家、公務員、会社員、高校生など職業も年齢もさまざまな座員たちはそれぞれの思いを胸にフランスへ渡った。

娘が姑とうまく折合わず、実家に帰ってくる。心配した父が、人は出方一つで変わるもの、今一度姑に仕え、それでも駄目だったらこの薬で姑を殺しなさい、と、うどん粉を劇薬だと偽って娘に渡す。父の言った通りで、娘と姑は近所も羨む仲になる。うどん粉で殺したら今頃は手打ちだろうというオチがつく。

人間国宝を中心に第一線で活躍中のベテラン出演者で構成された、初春らしい舞踊と長唄の演奏を紹介する。◆「常磐の老松」は、能の「老松」から題材を借り、四季の移り変わりを花や行事でつづった祝いの曲。◆「梅の栄」は、梅を中心にのどかな初春をうたった上品な曲。◆「連獅子」は、能の「石橋」をもとにした、親子の獅子が舞う勇壮な曲。天竺清凉山のありさまを描き、千丈の断崖絶壁から子獅子を突き落とす親獅子の試練を語る。

重量と動きの反比例・つまり重いものは動きにくいという原理を各種の実例や実験を通して考える。

パリ証券界好況の１９世紀後半、優秀な株式仲買人として働いていたゴーギャンは、いわゆる日曜画家だった。画家として独立した当時は、後期印象派に属するが、やがて反抗し独自の道を歩み始める。１８８６年から７年間、ブルターニュ地方のポン・タヴェンを制作の場として、野性的な絵を多く描く。その後タヒチに向かうことになるが、終生彼の心をとらえていたのはポン・タヴェンの町だった。◆ポール・ゴーギャン（１８４８〜１９０３）「ヴァイルマティ」１８９７、「海辺の二人の女」１８９１、「白い馬」１８９８、「神秘的に」１８９０、「雪の庭」１８８２−８３、「黄色いキリスト」１８８９、「緑のキリスト」１８８９