隠れキリシタンの信仰を培ってきた精神風土を浮かび上がらせ、西洋文明を消化する日本的受容の仕方を見るドキュメンタリー。今、長崎県外海町では、隠れキリシタンをやめて檀那寺に集団改宗するなど、隠れキリシタンの組織の崩壊が続く。一方、生月島では、隠れキリシタンの教会ともいえる御堂建設がはじまった。

高松塚をしのぐ大発見といわれる“束明神”を完全復元した実験考古学の試みをつぶさに記録、当時の築造技術に迫ろうというドキュメント。あわせて古代史上のロマンに満ちた被葬者推定もくりひろげる。取材班は、３カ月がかりで復元を追い続けた。

男たちが出稼ぎに出、残された老女たちが奥能登の厳しい冬に耐え、雪や風と辛抱強く闘う。そんな奥能登・上大沢町西保の冬の生活風景を描く。◆男たちが出稼ぎに行く冬、奥能登の集落はひっそりとたたずみ、間垣が風に泣く。海に接していながら舟を持つ人は少なく、土地を支えてきたのは農業。女は危険な岩ノリ採りに、滑らぬようわらじをはいて用心する。◆奥能登〔石川県〕

浅間山を望む信州・佐久平の素朴なフナの飼育風景を紹介する。◆佐久では、江戸天保のころから稲田でコイを飼う伝統が続いてきた。しかし、農業の有り様が変わってコイがフナになった。コイを懐かしみながらフナを稲田に放つ、一人の老人の夏の仕事を追う。５月に産卵した稚魚を育て、稲が実る９月まで、フナの習性に気を配りながらの老人とフナだけの世界が進行する。佐久の小さな風物詩である。◆佐久平のフナの飼育〔長野県〕

沖縄の地酒・泡盛の見直しを図るべく、そのルーツを探すために、タイ国や鹿児島、沖縄県内各地を訪ねる、そして琉球王国が東シナ・南シナのふたつの海をまたにかけて栄えた、１４世紀から１６世紀の大航海時代を探る。◆１４６０年、貿易風と黒潮に乗って伝来したという泡盛。以来、沖縄の先人たちは独特の黒こうじをつくり出し、製造法を根づかせ、伝統の酒にまで高めた。戦後はアメリカの占領によって洋酒文化が流入してきたが、“島酒”はいまも人々に愛されている。琉球放送創立３０周年記念特番。

愛知県北設楽郡東栄町は深い山ひだの中にある。天に至る石垣、切り開いた段々畑。人々はきつく辛い労働を強いられる。◆樹齢２５０年のしだれ桜で名高い龍洞院では、春の到来の遅い中で４月１０日の『潅仏会（花祭）』に御詠歌を歌う。うら淋しい音色が本堂を包む。山里に日差しが戻り山菜採りが始まる。寺の裏山には満開のしだれ桜。点々と座る石仏の回りを、霊場を訪れる人々が春風に乗って巡る。◆【重要無形民俗文化財】花祭〔愛知県〕

人の命さえ奪う猛烈な攻撃力を持つスズメバチ。人をも殺傷するスズメバチとは一体どんな昆虫なのか、その生態の謎に迫る科学ドキュメント。晩秋、スズメバチの行動は最も盛んになり、守りから攻めに転じ見事な組織行動を見せる。１９８３年（昭５８）にハチに刺されて死んだ人は全国で４７人。取材スタッフがスズメバチの攻撃を受けながら撮影する様子を織り込みながら、スズメバチの生態を紹介していく。

かつて鎌倉に入るには７つの道しかなかった。俗にいう切り通し、すなわち『鎌倉七口』をいう。険しい山を険しいまま削りとった道である。南を海に、三方を山に囲まれた鎌倉は天然の要さいだった。幕府跡を見下ろす丘に頼朝が眠る。◆武士たちのおん念を秘めて眠る幾つかの墓を軸に、禅寺のりんとしたたたずまいや風土の険しさを織り混ぜながら、「失われた都」の精神と格調を描く。◆鎌倉七口〔神奈川県〕