雪舟筆「山水長巻」は、四季の移り変わりを描いた日本の水墨画の名品である。画家の丸木さん夫妻が毛利博物館にこの絵巻を訪ねる。◆１１歳のころから京都の相国寺で禅の修業を積んだ雪舟（１４２０〜１５０６）は、４０歳を過ぎ一切を捨て旅に出る。そして１４６７年、応仁の乱の年、水墨画の源流である中国・明に渡り３年間研さんを積んだ。帰国の後、さらに旅を続けることおよそ２０年。雪舟６７歳の時、「山水長巻」は成った。ここには遠近自在の山水表現が四季の変化のうちに展開し、雪舟独自の個性が発揮されている。

５００年前から現在まで、島根県の奥出雲地方に広大な山林を所有し、絶大な権力を持ち続けている山林大地主がいる。主の名は代々田部長右衛門、今の当主で２４代を数える。この田部家では、今も昔のままに村人たちが納戸方や山方として働き、１９の蔵を管理するとともに、戦国時代からの伝統行事を厳密に守り続けている。◆番組は、田部家独特の行事が集中する年末年始に焦点を絞り、日本で最後というべき戦前の色を濃く残す大地主と村人の暮らしを克明に追った。

レギュラー講師の児童文化研究家吉岡たすく氏をはじめ、各界の著名人を講師に、家庭教育をテーマにしたトーク番組。公開録画会場は小中学校の体育館や公民館など。（１９７７年４月２日放送開始）◆第５４２回

オープンして４年で入園者数が４千万人を超え、国民的な人気の遊園地・東京ディズニーランド。パークのいたるところで繰り広げられるミュージカルショーはどのようにつくられているのかを紹介しつつ、ディズニーランドという夢舞台で働く人たちにスポットを当て、“夢と魔法の王国”の魅力と人気の秘密に迫る。

日本に近代西洋医学をもたらしたオランダ人医師とその弟子たちの情熱的な取り組みを描くドキュメンタリー。◆１８５７年（安政４年）１１月１２日、長崎奉行所西役所の一室で講義が行われた。長崎大学医学部の誕生ともいえるこの講義の講師は、遥かなオランダから長崎を訪れた２８歳の青年医師、ポンペ・Ｆ・メーデルフォルト。弟子たちは諸国から集まった俊才、松本良順ら１２名であった。

画家・安野光雅さんが「鳥獣人物戯画」が伝えられてきた京都の高山寺を訪ねて、その独創的なおもしろさ、風刺性を語る。◆サル・ウサギ・カエルなどが遊び戯れる姿を擬人化し、力強い線で描いた鳥獣戯画・甲巻は１２世紀半ばに鳥羽僧正覚猷（１０５３〜１１４０）によって描かれたとつたえられる。その技法や自由奔放な精神を受けついで、乙・丙・丁の３点が描かれた。「戯画の中の動物を仮に子供の姿と考えると、私たちにとってはもはや戻れない子供の世界、失われたものへのあこがれの世界が描かれているのではないか」と安野さんは思う。

奈良・東大寺の山門にあって寺を守る阿・吽２体の仁王像。画家の須田剋太さんが東大寺を訪ね、鎌倉初期の偉大な仏師、運慶・快慶の生涯ただ一つの競作と対面し、その力強い作風に迫る。◆あうんの呼吸という言葉のとおり、あたかも一人の仏師が作り上げたように息が合った２体の仁王像。しかしそこには作者の個性が色濃く反映されている。子細に見ると一旦彫り上げた後に様々な手が加えられている「吽形」、そこからは一歩でも理想の造形に近づけようとした運慶の執念が感じられる。一方快慶は自分の作「阿形」にまったく修正の手をいれていない。快慶は綿密な計画を練り上げ、あくまで設計図通りに仕上げている。

金属細工・彫金の技術は古墳時代に既に見られ、その源は古代エジプトといわれる。◆各種の技法の中でも、目切りの技法は鹿島家伝来のもの。鏨と金づちを用いて、地金に縦横斜めと細い布の織り目のように切り込んでいく。◆東京・下町で帯留め、かんざしなどをつくり生計を支えた経験のある鹿島一谷は、おう盛な研究心によって装飾を芸術にまで高めた。