ポーランドの戦争博物館にある１体の日本人形から、その人形のモデルとなったオペラ歌手・喜波貞子の生涯を追う。◆その人形を作ったのはパビアック強制収容所で獄死したカミラ・ジュコフスカ、人形の名はタイカ・キワ。モデルの喜波貞子は、当時ヨーロッパで「蝶々夫人」を演じて人気を博していた。明治３５年横浜生まれ、１７歳の時に単身渡欧。日本ではほとんど知られていない彼女の足跡をたどって、デビューしたリスボンの劇場へ、そしてかつての共演者を訪ねてミラノへ、ニースへと追う。

「昭和の歌」の大集成。当時のニュース・フィルムを織りまぜ、時代を彩った数々のメロディーを紹介していく。第２回は昭和２０〜３０年代。（１９８９年４月２９日〜５月４日放送、全３回）◆戦後の日本歌謡界に現われた天才少女、美空ひばりの「東京キッド」「悲しき口笛」ほかを紹介。そして、雪村いずみ、江利チエミ、島倉千代子、三橋美智也、春日八郎、青木光一、フランク永井、菅原都々子、初代コロムビア・ローズ、藤島桓夫、ペギー葉山、若山彰、大津美子、石原裕次郎、小林旭、橋幸夫、吉永小百合、加山雄三、こまどり姉妹、五月みどり、松尾和子、和田弘とマヒナスターズ、花村菊江、トニー谷、植木等、浜村美智子、越路吹雪、ザ・ピーナッツ、梓みちよ、西田佐知子、アイ・ジョージ、田端義夫、三沢あけみ、水原弘、坂本九、西郷輝彦、舟木一夫、三波春夫、村田英雄、倍賞千恵子、城卓矢、デュークエイセス、ダークダックス、水前寺清子、北島三郎、都はるみの歌を紹介する。

日本に帰国した中国残留孤児の家族が久しぶりに夫の実家へ里帰りの旅に出る。一家は皆それぞれの思いを胸に定期航路便「鑑真号」に乗り込んだ。◆克子は中国残留孤児で、養父であるタンロンの長男・ツンと結婚。５年前に家族を説得し、夫や子供らと日本に帰国していた。慣れぬ日本の暮らしは一家にとって大変な苦難であった。日本語の話せない夫は定職に就けず克子がパートを掛け持ちして家計を支えていた。３人の子供はいじめにあった。「一度中国に帰ってみたい」という夫の言葉に一家は短い帰省を決意した。

奈良の壺阪寺長老常盤勝憲さんが５０代半ばで急死した。氏は目の不自由な老人たちやインドのハンセン病患者たちの為に生涯を捧げた社会福祉家でもあった。長老の足跡を国内とインドに訪ねる。◆文楽「壺阪寺観音霊験記」で有名な奈良県高取町の壺阪寺は１３００年の歴史を持ち、壺阪高野と呼ばれて高野山と並び称された名刹である。昔から目の不自由な人の信仰を集めていたこの寺の境内にある養護盲老人ホーム「慈母園」は、常盤さんの奔走で開設された。インド救らい運動にも力を入れ、アグラ地方に小学校を創設したり、ハンセン病患者のコロニーを作ったりしていたが、胃がんのため志半ばで急逝した。

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆辻村ジュサブロー：人形作家。１９３３年、中国生まれ。１９５６年歌舞伎小道具の＜藤波＞に入社、のち人形製作を行う。１９７６年芸術選奨新人賞受賞＜真田十勇士＞（ＮＨＫ）。ほかに＜新八犬伝＞（ＮＨＫ）など。

北緯６６度３３分の緯線、またはそれ以北を「北極圏」と呼ぶ。アジア・アメリカ・ヨーロッパを最短距離で結べる交通ルートとして、また資源の宝庫として注目されるこの地域を取材、北極圏の姿を伝える。（１９８９年４月３０日～１９９０年３月２５日、全１２回）◆第３回は、１９３０年代にスターリン政治の中で行われた“大粛清”を物語る厳寒の地、極東シベリア山間部のコリマを訪ねる。マイナス７１度を記録したこともあるコリマ街道は、金の採掘のために建設されてきた。採掘を行ったのは政治犯とされた人々で、寒さと飢えのために百万人以上が死んだともいわれている。体験者の証言、今も残る収容所の様子から、半世紀前の悲劇の真相を明らかにする。

１９８８年（昭和６３）、「北海道電力泊原子力発電所運転の是非を住民投票にかけてほしい」という直接請求が提出された。有効署名は有権者の約３０パーセント、９０万人に及んでいる。請求を受けた横路知事は賛否を明らかにせぬまま道議会にゲタを預け、その議会は２票の僅差で直接請求を否決してしまった。原発問題の住民投票請求を通して、民主主義の原点を考える。

１９３９（昭和１４）年、ソ蒙国境で起こったノモンハン事件。その後の戦闘で捕虜になった兵士たちが、日本へ帰れないまま暮らしているという。日本へ渡る鶴に託し、彼らの望郷の思いを描く。◆瀘溝橋事件以降、戦火は中国南部へと拡大していったが、北部では国境があいまいだったソ連・モンゴルとの紛争が絶えずついにノモンハン事件が起こった。およそ５か月続いた戦闘は激烈なもので、日本軍は大きな犠牲を出して敗れた。負傷して捕虜となった兵士たちは、生き恥をさらしたという当時の教育を受けていたため日本へ帰れず、異国で名を変えて生きのびた。シベリアやモスクワで彼らと出会った人々の証言を聞く。