日本画家の後藤純男さんが法隆寺の百済観音と対面。その由来をたずねる。◆百済観音。飛鳥時代を代表する日本の仏教彫刻の傑作といわれている。が、法隆寺の数ある仏像の中で、百済観音だけは由来が定かではない。寺の記録に現われるのも江戸時代初めになってからで、しかも「虚空像菩薩」として記されている。その像は百済の国から渡来したものだが、天竺すなわちインドで作られた像であると寺の記録は伝えている。◆風景画家として全国を旅する後藤さんは中でも奈良を好み、この２０年来毎年のように訪れている。後藤さんのアトリエでは、スケッチをもとに百済観音が描かれていく。

嵯峨野釈迦堂と呼ばれて親しまれ、庶民の信仰を集めてきた清凉寺。この寺の本尊である釈迦如来は、かつて宋に留学した僧によってもたらされたものである。詩人・吉野弘さんが、長い旅をしたこの仏像を訪ねる。◆清凉寺の向こうにそびえる愛宕山に、中国の五大山のような仏教の聖地を作りたいと志した僧は、宋でインドから伝来した仏像に出会って深く感動し、同じ姿を彫らせて日本へ持ち帰った。これがその釈迦如来像で、僧の死後、弟子たちによって造られた清凉寺に本尊としてまつられた。江戸時代には出開帳といって江戸から九州まで各地を旅し、拝まれた。信者たちが投げたお賽銭が当たってできた傷が、釈迦像の全身に残っている。

命をささえる人体は、いかなる形と機能によって維持されているのか。身近ながらほとんど知られていない“人体”を小宇宙になぞらえて、実写・特殊撮影・コンピューターグラフィックスなどを駆使しわかりやすく解き明かすシリーズ。（全６回）◆肝臓はアルコール処理、血糖調節など５００種類以上の化学処理を引き受ける壮大な化学工場といわれる。しかもその機能のほとんどが数十ミクロンの細胞の中に収められている。カメラはその細胞の中に入り込み、肝臓の機能を探るミクロの、さらに分子の世界を映し出す。

１９８８年（昭和６３）４月、三重県藤原岳のふもとの小学校に、都会から５人の５年生が山村留学のためにやってきた。山が迫り川も流れる豊かな自然環境の中、先生や友達との関係も都会とは違う。学校教育の理想のあり方ともいえる姿をつづるドキュメンタリー。◆テレビのニュースで見て自分から申し込んだ女の子、父親に勧められた男の子、きっかけはさまざま。契約は１年間、里親の家から小学校に通う、費用は月６万円というもので、５月１０日までは両親が会いに来てはいけないという約束も盛り込まれている。預ける親、預かる親双方の思いもまたさまざま。１年間で子どもたちはなにを得るのか。

日本人の戦後の歩みと思いを、戦後の廃墟の中から歌いはじめてついには女王とまで呼ばれた美空ひばりのヒット曲やエピソードに重ねあわせてふりかえるシリーズ。（１９８９年６月２９日〜７月１日放送、全３回）◆最終回は１９６６年（昭和４１）「悲しい酒」が世に出るまでのエピソードと、この曲に感慨を抱く人々の証言とで、高度成長の繁栄の陰に生まれたすき間を描く。

親子３代にわたる刑事一家を主人公に、事件を解決していく中で、ひよっこ刑事が成長していく過程を笑いと涙でつづる。◆警察は、高校に発煙筒をしかけたのは道夫（植草克秀）とみて由利（若村麻由美）を道夫の家に張り込ませる。と、こんどは地上げ屋に発煙筒がしかけられた。担任の三枝（岡田奈々）にかくまわれていた道夫は、学校に脅しをかけたが地上げ屋の事件は自分ではないという。（全２回）

小田原の伝統工芸のひとつ、佐波理による鋳物の研究と製作に半生を打ち込んできた柏木晴光さん（当時８０歳）を、小田原市中町の工房に訪ねる。◆室町時代の１４９５年、北条早雲の小田原進出築城以来、北条氏５代にわたるひ護の下、城下では職人たちがそれぞれ町をつくりさまざまな工芸文化を生み育てた。佐波理は銅に錫を加えた合金の一種。佐波理を用いた銅鑼や風鈴などの鋳物は天平の頃からその質感と音色の美しさが人々に好まれ、佐波理工芸は江戸時代に最も盛んになった。その澄んだ余韻を長く響かせるためには、材質や形だけでなく高度な技術が必要で、柏木さんの努力は続く。

真言宗御室派総本山、仁和寺。門跡寺の筆頭として、時の天皇の皇子が入山した寺。平安時代日本的美の開花する時期に創建され、祭られている仏像も優美で柔和な表情が芽生え始めた。仁和寺は皇室の雅の中心となり、文化的役割は絶大だった。仁和４（８８８）年創建を寺名とし、御室と敬称され地名となる。◆近世この地に仁清や光琳らの芸術家も居を構え、王朝文化の美を創出した。また仁和寺は遼廊亭・飛濤亭など、わびの自然感も併せ持った。◆【国宝】仁和寺金堂、阿弥陀如来及び両脇侍像〔仁和寺〕、薬師如来立像〔神護寺〕、薬師如来坐像〔新薬師寺〕、阿弥陀如来坐像〔平等院〕