遺言状をめぐり鋭く対立する長男と異母弟を描く。◆長田立夫の義母・則子が入院した。陽子が差し出した古い千円札を見てショックを受けたのだった。陽子はその千円札で長田家の土地を全部売ってくれといった。陽子に理由を聞こうとアパートを訪ねた立夫はそこで意外な事実を聞かされる。陽子の出した千円札は戦後、新円封鎖の直前に発行された幻のような短命な札で、立夫の父はその金で陽子の祖母から土地を奪うように買ったのであった。（１９８９年１２月１６日開始、全２回）

東京・神田生まれで渋谷育ちの俳優・花澤徳衛さんが、すっかり変貌した思い出の街・渋谷で、かつての面影を尋ねて歩く。幼い日の花澤役の少年も登場するドラマ仕立ての異色ドキュメンタリー。◆花澤さんは明治末の生まれ。１９１３年（大正２）２歳のときに渋谷に引っ越してきた。そのころの渋谷は豊玉郡渋谷町といって東京の市内にも入らないところだった。大阪に移って俳優を志す２３歳までをこの街ですごした。

太陽系誕生のシナリオを探る。◆１９８９年８月２５日惑星探査機「ボイジャー２号」は最終目的地海王星に到達した。火星より外側の４つの惑星の木星、土星、天王星、海王星は地球とは違う巨大なガス惑星である。太陽系誕生の謎を解くには、この異質な巨大惑星たちの素顔に迫る必要があり、ボイジャーはこの４つの巨大惑星を１２年間にわたって訪ね終えた。人類の想像をはるかに超えた新発見の数々は巨大惑星誕生のプロセスを物語り、地球型惑星だけでなく木星型惑星を含めて太陽系誕生のシナリオが初めて描けるようになってきた。（１９８９年１０月２日〜４日終了、全３回）

「天皇に戦争責任はあると思う」と発言した長崎市の本島等市長に寄せられた７３００通の投書から、それを綴った人々の体験や考えを訪ね歩き、昭和・戦争・天皇への思いを探る。◆本島市長の発言は、長崎のみならず全国に大きな波紋を広げた。手紙の内容は共鳴・激励から失望・非難までさまざまだが、昭和という時代の中の、自らの体験に裏うちされ率直に語られていた。これらの投書が一冊の本にまとめられる動きを追う。

第２時世界大戦を、日本と手を組んで戦ったドイツ。日本同様に、忘れてはならない過去を背負った国を、ノンフィクション作家の澤地久枝さんが旅し、「昭和」という時代を検証する。◆いまも戦争の傷痕を深く残す東ドイツの各地で、澤地さんは自らと同世代、戦争当時少女だった女性たちにインタビューする。特に、過激な人種差別政策をとったナチス・ドイツの迫害にあい、ジプシー（ロマ）であるというだけで強制収容所に送られた女性、１６歳で無実の罪を着せられ死刑を宣告されながら、九死に一生をえた女性などから証言を得る。

１２月９日の「障害者の日」に、障害者と健常者がともに支えあえる社会の実現をめざして、障害者問題を多彩な角度から取材し、スタジオへ電話・ＦＡＸ・電子メール等で意見を募って考える。２部構成。◆第２部は、障害者の自立を受け入れる街・アメリカのバークレーの実情や東京で自立を目指す女性のレポートを紹介、障害者が自立して生きられる社会の条件を探る。

北緯６６度３３分の緯線、またはそれ以北を「北極圏」と呼ぶ。アジア・アメリカ・ヨーロッパを最短距離で結べる交通ルートとして、また資源の宝庫として注目されるこの地域を取材、北極圏の姿を伝える。（１９８９年４月３０日～１９９０年３月２５日、全１２回）◆第７回は、厳寒の中で進む巨大開発が、国家の経済改革に揺れる現状を探る。西シベリアの開発都市ノリリスクは、銅やニッケルの鉱山を基盤に建設された都市。酷寒の地での開発を促進するため、労働者には通常の３倍の給料が払われるなど国家の手厚い保護のもとで成長してきた。しかし１９８８年１月の「国有企業法」施行で独立採算、自己資金調達を行わなくてはならなくなり、問題点が浮上しつつある。

昭和２０年、被爆直後の広島・長崎を訪れたアメリカ調査団が集めたデータは、軍事機密として徹底的に管理された。アメリカの新史料をもとに、原爆被害の情報管理を追う。◆原爆投下の直後、日本の参謀本部はアメリカ軍捕虜を使って被害の悲惨さを全世界へ向けて放送した。世界の報道機関は一斉に非人道的行為としてアメリカを非難し、世論の高まりをおそれたマンハッタン計画の首脳陣は打ち消しにつとめた。その結果、日本からのアピールはデマとして葬られ、世界に原爆の悲惨さは伝わらなかった。