日本人の心象風景、富士の山容。山頂の３つの峰、「三峰」は無意識に富士の姿として心に刻み込まれた。絵画における富士は平安時代に登場する。４００年にわたって「三峰の富士」が描かれ、イメージの中に定着した。山岳信仰の対象として神と仰ぎ、多くが山頂に臨み、また画題としてきた。三峰型富士の伝統は長く続いたが、江戸中期尾形光琳によって書き換えられ、北斎や広重によって写実化されていく。富士図の変遷と富士信仰の歩みを描く。◆【国宝】聖徳太子絵伝〔東京国立博物館〕、一遍上人絵伝〔歓喜光寺・清浄光寺〕◆【重要文化財】、富嶽図扇面（尾形光琳筆）〔大和文華館〕

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日～１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆妹尾河童：舞台美術家。１９３０年兵庫生まれ。１９５４年オペラ「トスカ」の舞台美術でデビュー、１９７４年に「喜劇新四谷怪談」で芸術祭優秀賞を受賞。このほか随筆家としても活躍をみせる。

妻と娘を捨ててまでも夢を実現させようとパリへ行ったが夢破れ、１８年後に帰国した男と、幸せな暮らしを掴んだ娘が織りなす深い親子の絆を描く。◆加納慎吾（蟹江敬三）は妻と娘を捨ててパリへ渡った。シャンソン歌手になる夢を持った直美を育てようとしたのだが叶わず、帰るに帰れなくなった慎吾は、古楽器のリュートを作る職人になった。自分の作った楽器をみやげに１８年ぶりに帰国したが、妻・幸代は死んでいた。娘の圭子（宮崎萬純）に対面した慎吾は父と名乗れず、昔世話になった男として妻や娘のことを聞くのだった。

第２次大戦中にアメリカの手で開発された核兵器が、戦後にソ連をはじめとする各国にどう広がっていったか、また朝鮮戦争やキューバ危機などの国際紛争や外交の舞台で核がどんな役割を果たしたかを描く。（１９９０年３月４日～９日、全６回）◆第３回は、１９６２年１０月、ソ連によるキューバのミサイル配置計画に端を発するキューバ危機を取り上げる。核戦争の瀬戸際での米ソのやり取りを、世界はかたずをのんで見つめた。関係者の証言を軸に１３日間を再現する。

茶道の大成者・千利休の生きざまと人間的魅力を、最大の理解者である妻・りきと、父を愛するがゆえに厳しい批判者となる娘・加奈の２人の女性の視点を通して描く。毎日放送開局４０周年記念特別企画。◆物語は１５６８年、信長の矢銭強要で、自由商業の場・堺の茶湯が危機に見舞われた混乱から始まる。堺の商人として、ある意味では俗人として、茶も遊芸のひとつと考えていた宗易（のちの利休）を、信長との出逢いが大きく変えていく。一方その混乱のなか、りきとの出逢いもあった。信長の死によって秀吉の茶頭となり、天下一の茶の湯者に登りつめる利休に、栄達を捨ててほしいと訴える加奈、心を痛めるりき。利休の心は揺れ、秀吉との対立は深まる…。

３年前に制定された総合保養地域整備法、いわゆるリゾート法によって日本各地がリゾート開発ブームに沸いた。その現状を検証する。◆日本人の余暇を拡大して民活による内需拡大に向ける、過疎や農業不振に苦しむ地方を活性化する、などを眼目として制定されたリゾート法。スポーツ、レクリエーション施設などへの特別償却制度や税の減免などの特例措置、資金支援、地方公共団体への助成などを内容とする。ＮＨＫのアンケート調査の結果、開発構想があると答えた自治体は６４．５パーセントにも達していた。ゴルフ、スキー場、ホテルやマリーナなどの造成によって変わってゆく日本の景観。その裏にひそむ問題点を探る。

１９８８年、交通事故死者は１３年ぶりに１万人を突破した。以来死者は増え続け、第２次交通戦争とまでいわれる。日本で交通事故を減らすにはどうしたらいいのか。緊急レポートと徹底討論の２部構成で問題を探る。（第２部は同日２１時４５分から放送）◆乗車中の死者の多さが目立ち、高速道路では２年連続で３０パーセントを超えている。車自体の安全性はどうなっているのか日米の基準を比較したり、道路の問題点、大型トラックと乗用車との衝突事故の多発という日本独特の現象の検討など、多角的に問題を提起する。

１９８８年、交通事故死者は１３年ぶりに１万人を突破した。以来死者は増えつづけ、第２次交通戦争とまでいわれる。日本で交通事故を減らすにはどうしたらいいのか。緊急レポートと徹底討論の２部構成で問題を探る。（第１部は同日１９時２０分から放送）◆第１部での問題提起を受けた討論には、５つの省庁から行政責任者が６人、メーカー３社とＪＡＦ、日動研から一人づつ、自動車、交通評論家、弁護士、学者など専門家７人の１８人が参加。交通安全対策の多面性を示す多人数討論となった。