所作事とは舞踊のことで、女形の舞踊の中でも大曲とされる『京鹿子娘道成寺』を中村富十郎の解説で鑑賞する。◆初代中村富十郎が初演して以来、その華やかさで人気演目となった。十代の娘の初々しさから、恋の炎に焼かれる女心まで、１０通りの衣裳の早変わりを見せながらの踊りは、道成寺物の中でも大きな花である。

大コンツェルンの後継者争いに翻弄される若き未亡人を描く。◆政財界に大きな影響力を持つ有富コンツェルン。総師の晋吉（若山富三郎）は有富家の婿養子で、妻の扶佐子に頭が上がらない。長女・佳子は大蔵省の高官・米崎と、次女の暢子は代議士の横谷と結婚。有富家は女系で閨閥（けいばつ）を築いている。そんな中で、長男・要一の２度目の妻になった槙子（大原麗子）は元看護婦という地味な経歴で、いわば異色の存在。要一が事故で急死しコンツェルンの後継者争いが起きて、未亡人になった槙子はマスコミ報道の渦に巻き込まれる。

６年続いた「戦争を知っていますか」に代わるシリーズ。戦後に生まれ、繁栄の日本しか知らない若者たちが身近なところで戦争体験者に出会い、“戦争”を知る「発見の旅」を描くドキュメント。案内役は作家の立松和平。◆新良幸人さん（２１歳）は那覇のライブハウスで三線をひき、島歌を歌っている。沖縄の人にとって三線は単なる楽器ではなく、生活必需品にちかい。蛇皮と黒檀で作られるが、戦争中には空缶とベッドの脚とパラシュートのひもで作られたこともあった。屋嘉にあった日本兵捕虜の収容所で奏でられた“かんからさんしん”。どんな状況でも歌い続ける沖縄のこころをたどって新良さんは旅する。

東洋美術に造けいの深かったアメリカ人、アーサー・Ｍ・サクラー氏が１９８２年にワシントンに建てたサクラーギャラリー。ここで横浜浮世絵展が開かれた。幕末、横浜開港の情報を伝えた浮世絵師たちによって描かれたもの。横浜を主題に異人風俗を活写した当世風浮世絵である。開港直後から１０年足らずの間、爆発的な人気を博し風俗資料としての価値も高い。しかし、やがて文明開化、写真技術や新聞の登場などで浮世絵時代は終わりを告げた。◆西洋人荷物運送之図（五雲亭貞秀筆）、五箇国人物行歩図（五雲亭貞秀筆）、波止場の帰帆亜米利加人（一猛斎芳虎筆）、横浜異人屋敷之図（一川芳員筆）〔サクラーギャラリー〕

戦時中、大陸から日本へ強制連行された中国人労働者への過酷な労働と虐待、拷問などを当時の生き残った中国人の証言から探り、今に残る問題点を描く。◆終戦間際、秋田県大舘市花岡鉱山に強制連行された中国人が空腹と虐待に耐えきれず蜂起し、その多くが虐殺された「花岡事件」から４５年が経過した去年、生存者と遺族が来日した。来日の目的は、慰霊祭に参列することと当時の雇い主である鹿島建設と賠償交渉を行うことであった。

日本テレビと読売テレビの交互制作でおくる平日深夜のワイドショー番組。（１９９０年４月２日～１９９４年４月１日放送）◆この回は火曜「ＥＸ　Ｏｓａｋａ」第２回。コーナー「Ｎｅｗｓ　ＥＸ・ＴＶ」に続き、テレビ論について語る特集で「視聴率」を取り上げる。視聴率は全国３０００万世帯から無作為に２６００世帯が選ばれ、その各々の家庭で見ている番組をもとにして出される数字。年間、スポンサーが番組に提供する広告費は１兆３０００億円。その膨大な金額を左右し、テレビ界の動向に重大な影響を及ぼす視聴率の意味を考える。視聴率調査機がある世帯に向けて送るという形で進行し、番組の最後では無茶なお願いが飛び出す。司会は上岡龍太郎と島田紳助。

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆吉田静子：元東京Ｉゾンタクラブ会長。

１９３８（昭和１３）年、トップスターだった女優・岡田嘉子と新劇の演出家・杉本良吉が、サハリンの日本とロシアの国境線を越えた。当時の２人の軌跡を追いながら、モスクワで暮らしている岡田さんのインタビューと、人々の証言からこの越境を検証すると共に、岡田さんの半生を通して時代の波に翻弄されながらも、強く生きてきた姿を描く。