ベネチア派最大の巨匠ティツィアーノ。１６世紀に描いた縦７メートルの、サンタ・マリア・ディ・フラーリ教会の祭壇画「聖母被昇天」は、誰も真似のできない魔法の赤色を使いベネチア画壇に君臨した。商才にも長け貴族にも列し、富と名声をほしいままにした。しかし、水の都もペストの猛威で町は力を失い、衰退に追いやられる。現在は水の浸食で危機に直面しており、人類の遺産である大祭壇は未来にいかにして受け継がれるのか、危ぶまれている。◆ティツィアーノ（１４９０？〜１５７６）「聖母被昇天」１５１６−１８、「カール五世の騎馬像」１５４８、「サピエンツァ」１５６０、「ピエタ」１５７０−７６

祖国をもてない女が父を捜し、心のすきまを埋める旅に出る。◆季美淑は生まれてすぐ孤児院に預けられ、３歳のときに在日韓国人の養女となり日本にやってきた。高校を卒業後、韓国の大学を出て就職。韓国人の夫と子ども、義母とともにソウル市内のマンションで暮らしていた。ある日、世話になった孤児院を訪ねた美淑は、実の父親・金秀一が生きていることを知る。日本の京都へ出稼ぎに行ったという父親を捜して、美淑は日本へと旅立つ。

大量消費社会が生み出す産業廃棄物が社会問題となっている。処分の追い付かない都会のゴミが、地方に暮らす人々の生活を脅かす。環境を守ろうとする人々の戦いを追う。◆一昨年、宮城県丸森町耕野地区で、水源のある山の頂上に廃棄物処分場が完成した。水道設備がなく地下水で生活する住民を無視し、宮城県は操業を許可。住民は裁判を起こす。これに対し、仙台地方裁判所は「処分場の公共性よりも住民たちの生きる権利を優先させ、操業の差し止めを命じる」判決を下した。

自閉症の息子の社会参加のために奮闘する母子を描く。障害者とその家族への応援歌として、浜木綿子主演で年一作制作された「おふくろシリーズ」第８作。◆菅原一恵は夫の亡き後、美容院を営みながら息子・朋と娘・あゆみを育ててきた。自閉症で養護施設に通っていた朋は１８歳になり、施設を卒業して鉄工所で働くことになった。しかし、朋は仕事に適応できず、たった一日で施設に逃げ帰ってしまう。一恵は朋を自宅に連れて帰ってあゆみと世話をしようとするが、朋が美容院に出てきて仕事の邪魔をする。一恵は休暇を取り、朋を伊豆に連れて行くことにする。そこで朋は、馬小屋で働いている重度難聴者の岩田に出会う。

東京から北海道・富良野に移り住んで、地に足のついた生活の中から人生を学んでいく子供たちを中心とした家族の物語。それぞれに成長して父親の元を離れていった子供たちと、ひとり富良野に暮らす父の姿を描くスペシャル第５作。◆純（吉岡秀隆）は東京へ出て、蛍（中嶋朋子）は旭川の看護学校に通っている。五郎（田中邦衛）は蛍が看護婦になって富良野に戻ってくるのを心待ちにしていた。しかし蛍は恋人の勇次（緒形直人）に札幌の病院への就職を進められ迷っていた。結局、蛍は父の思いを知りながらも札幌での就職を選ぶ。かたや東京も２年目の純は札幌のれいちゃん（横山めぐみ）との電話が楽しみだったが、新しいガールフレンド・タマコ（裕木奈江）に妊娠を告げられて驚き戸惑う。

１９９０年に南北統一された、アラビア半島南西端のイエメン共和国。誇り高いアラブ民族として、古代からの歴史を大切に受け継ぐイエメンの人々の生活を紹介する。

幡随院の武勇伝である。江戸の相撲取り、桜川は給金も安い下っ端の力士である。旅興業で母の急病を聞き、急いで江戸へ帰る途中、親方からもらった土産代も全てスリに取られてしまう。満足な食事にもありつけないところを折り良く店で休んでいた江戸の侠客、幡随院長兵衛が話を聞いて助けてくれる。桜川が発った後、鈴ケ森の盗賊の話を聞いた長兵衛は、桜川が危ないと後を追い、やはり桜川を襲っていた盗賊をこらしめ改心させる。◆脚色：野口哺堂、曲師：吉野静

　「場」には陽気の場と陰気の場があるが、弔いは陰気の場の代表である。悔やみの席での言葉は「何と申し上げたらよいのやら…」が一番という。悔やみの席に来た男が、何事につけても自分の女房ののろけを言うのが癖で、悔やみの言葉もどこへやら、自分の嫁ののろけを言い出す。