銭湯を舞台にしたホームコメディーのスペシャル版で、人物はそのままに時代設定をずらしたミステリー。大正末期、風呂屋の女湯に悪徳金貸しの死体が浮かんだ。探偵小説家志望の女が真相を追求する。◆大正１２年、東京・根津の銭湯“梅の湯”に女主人・ウメの姪の徳子が居候しに来た。徳子は新進作家の江戸川乱歩に心酔し、自分も探偵小説を書こうと題材を探している。金貸しの金蔵があこぎな手段で梅の湯界わいの商店主たちに金を貸し、返済を迫っていた。ウメの息子の英太郎が土地の権利書を持ち出して大金を借りていたことが発覚、今月中に返さないと店も家も明け渡さなくてはならない。その夜、徳子は女湯の湯舟に金蔵の死体が浮かんでいるのを見つける。

野辺にあって人々に語りかける「微笑仏」。民芸家・柳宗悦によって見出され、そう呼称された木喰上人の仏像である。木喰行とは木の実を食し修行すること。◆木喰上人・五行（１７１８〜１８１０）は行を終え、貧しい民衆救済を志して全国を行脚した。北海道で円空仏と出合い、６３歳から仏像制作を始める。本願成就の後も精力的に全国行脚を続け、笑いこそ衆生を救う道と９３歳で死ぬまで微笑仏を彫り続ける。残された多くの仏像からその軌跡をたどる。◆如意輪観音、大黒天、行基菩薩〔小栗山観音堂〕、地蔵菩薩、木喰自刻像〔日本民藝館〕、薬師如来、子育地蔵、子安地蔵〔太田山霊場〕

千利休の後継者・古田織部（１５４３〜１６１５）。戦国大名のそうそうたる教養人の中から利休によって最も高い評価を与えられた、武将にして茶人。しかし師を敬いつつも、全く異なる茶道へと向かう。端正なわびから、明るい奔放へ。織部好みのいびつな茶器の制作、静から動への茶室の変化など。そして方広寺鐘銘事件や家人の謀反が発覚し、家康から切腹を命じられる。◆時代の転換期に心の揺れた茶人織部の人生遍歴を追う。◆【国宝】圜悟克勤墨跡〔東京国立博物館〕◆【重要文化財】浄土寺露滴庵、御所丸黒刷毛茶碗の銘夕陽〔藤田美術館〕

日本の歴史を決定づけた重要な事件・出来事を取りあげ、その事件が日本人のものの考え方や生活にどのような影響を与えたかを多角的に検証する番組。この回は日本の土地から決定的に公共性を失わせた「地租改正」を取りあげる。◆明治６年、政府の財政基盤確立のため「地券（土地に対する権利証）」が発行されて日本に「地価」が生まれ、地価に対して３割課税が行われた。日本中に一揆が多発し税は２割５分に引き下げられたものの、それまでは考えることもできなかった「土地の私有化」により土地は売買の対象になり商品化された。

大都市を中心に高騰し続ける地価。歴代内閣の最大の課題といわれながら、有効な解決策は示されないままである。番組では「地価は下げられる」という前提に立ち、５夜連続・計１２時間の生放送でその方策を考えていく。テレビ世論調査を交え、現状リポートと討論により、解決への具体的な道筋を探る。（１９９０年１０月１０日〜１０月１４日放送）◆第３回。土地住宅政策が無力になっている実態を探り、今後の実行システムの確立を政治家・行政責任者に迫る。出演は加藤六月、伊藤茂、内田健三、早川和男、中谷厳、神崎武法、佐々木憲昭、中野寛成の各氏ほか。

豊かな自然や各地に暮らす人々の風景を、美しい映像と人間味豊かな内容で伝える紀行番組。◆異国情緒と庶民的な暮らしの交錯する港町・横浜市本牧を訪ねる。ペルー来港以来、外国との関わりが深い横浜本牧の戦後は、アメリカ軍の接収など外国の香りが強く漂う町である。しかし一方では、昔ながらの港町の暮らしやしきたりが今も受け継がれている。番組では、本牧ジャズ祭、外国の旗がはためく町並み、そして漁師町や本牧漁港、秋の気配漂う三渓園などを訪れる。

江戸時代、伊勢伊賀の領主であった藤堂家。城代家老の家に伝わる日誌をもとに、いつの世も変わらない仕え人の哀歓を描く。◆時は享保。八川佐次右衛門（小林薫）は伊賀上野城代家老・采女家に仕える祐筆、つまり記録係だが、名張の出身で婿養子である。藤堂家の当主が亡くなり、若殿の家督相続を幕府に認めてもらうため、城代家老の高稠（中村梅之助）は小藩の金をかき集めて江戸へと向かった。そんな折、佐次右衛門の故郷・名張では独立騒動が持ち上がっていた。佐次右衛門は幼馴染みの小沢正浮（三浦浩一）から相談をうけて心が揺れる。やがて独立の企みは露見し、首謀者とされた名張の家臣たちが切腹を命じられ、騒動は治まった。しかし、佐次右衛門は主である若き家老・元社（黒田アーサー）から「不熟につき」という理由で突然職を免ぜられる。それは職務上で書き残した不都合な記録を抹消するための措置であった。

　山形県小国町にある日本一小さい高校・基督教独立学園で書道を教える９８歳の現役・桝本楳子先生の生き方を通し、人間の幸せとは何かを浮彫りにする。◆亡くなった二男の嫁で音楽を担当している６９歳の華子さんと２人暮らしの楳子先生はますます意気盛んで、内村鑑三のまな弟子だった先生の夢は「自分を愛するようにすべての人を愛せるようになること」だという。へき地医療に尽くしたいと医学部を目指し３年間浪人生活を続けている卒業生との先生の師弟関係を中心に、学園生活での生徒たちとの交流、卒業生たちとの絆を映し出し、本当の教育とは何かを考える。