旧廓町の風景と人々の暮らし、夏の日差しに光る浅野川など金沢の下町の風情を描く。◆長い年月、女の手が磨きこんできた木目の美しい家並みが続く東山１丁目。かつて人々が廓と呼んだ色町の面影が残る。当時の華やぎはないが、今も芸事のけいこの音が聞こえる。町売りの威勢のよい商いや和菓子屋の繁盛ぶり、廓の女たちが幸を念じた観音院、加賀藩の中級武士の武家屋敷などを紹介する。◆旧廓町〔石川県〕

岐阜県吉城郡上宝村の暮らしは湯煙と共にある。奥飛騨温泉郷の１つ、平湯温泉。町中に篠原無然記念館がある。兵庫県出身の無然（１８８８〜１９２４）は、平湯の分教場の教師として青春を過ごし、のち製糸工場の女工救済に全力を挙げた。そして各地で様々な社会奉仕を続ける一方、上宝村に温泉開発を進めるなど村のために生涯を尽くした。◆１９２４（大正１３）年、３６歳のとき安房峠で遭難。彼の遺徳は今でも村人に語り継がれている。◆上宝村〔岐阜県〕

世界中の人々の暮らしぶりや自然を紹介する、海外取材ドキュメンタリーシリーズ。全米写真家協会プロフェッショナル最高賞を受賞し、国際的にも評価された。（１９６６年１０月９日～１９９０年９月１６日、全１０００回）◆広大なチベット高原、その高原を東西に大河ヤル・ツアンポが流れる。この流域の村々では、ヤクの皮を舟底に利用した皮舟を使って漁をする。十月末、収穫を終えた村々では、脱穀に大わらわとなる。十一月のある日、村の女は男の子を生んだ。名付け親は、母方の叔父であった。チベット人は長寿者からの福を固く信じているのである。農閑期になると、結婚式が多くなる。嫁は大声で泣きながら婿の家に来る。泣き声が大きい程良い妻という。

子育てと教育という女性にとって重大な問題を、現代のＰＴＡママの奮戦のなかに明るくユーモラスに描く。東京のある小学校の４年生の教室でＰＴＡ委員の選出が行われたが、だれも気乗りしない。白羽の矢が立った４人の母親たちは、それぞれ家庭の事情をかかえたうえ、周囲からイヤミをいわれながらも活動をはじめる。その矢先、新任の中山先生への不満やイジメ問題が起きた。

航空力学の世界的権威となった今も、少年時代の夢そのままに、憧れのトンボの姿を求めて各地に旅するひとりの研究者のロマンに満ちたひと夏の姿を追う。◆東昭氏（東京大学工学部教授）の専門は航空力学である。その研究成果は航空機の開発などに応用され、世界的権威となっている。東教授は、子どもの頃からトンボの卓越した飛行能力に憧れを持ち、１９８４年の夏、その飛行メカニズムの解析に取り組んだ。日本でも有数のトンボの生息地である静岡県磐田市の桶ヶ谷沼の保護活動をする大庭俊司さんの協力を得て生きたギンヤンマを採集し、風洞実験で飛行を解析して論文をまとめた。一方、模型飛行機研究家の野中繁吉さんは、東教授にアドバイスを求めて、４枚羽根の模型飛行機の製作に挑戦する。再現するのは、３億年前の化石に残るトンボの祖先で史上最大の昆虫といわれる古代生物、メガニュラの飛行である。

世界中の人々の暮らしぶりや自然を紹介する、海外取材ドキュメンタリーシリーズ。全米写真家協会プロフェッショナル最高賞を受賞し、国際的にも評価された。（１９６６年１０月９日～１９９０年９月１６日、全１０００回）◆チベットの首都ラサにつぐ都市は、西チベットのシガチェである。シガチェには、西チベット一のラマ寺院であるタシルンポ寺がある。タシルンポ寺は、中央チベット一帯を統治していたダライ・ラマに対し、西チベットに勢力を持っていた歴代パンチェン・ラマの住職寺院である。１９５８年には４千の僧がいたが、現在は５百人。それでも他の寺に比べ断然多い。この番組では、ラマ僧たちの厳しい修行を紹介する。

砂漠に生きる小さな昆虫の一生を通じて、大自然のリサイクルを描く動物ドキュメント。「フンころがし」はコガネムシ科の昆虫で、アフリカ大陸だけでも２０００種ちかくが観察される。なかでも「スカラベ」とよばれる種類は、動物のフンを丸めて後足でころがし、地中にうめてそのフンを食べ、そのフンの中に卵を産む。卵は、そのフンを栄養分として育つ。

えん罪を晴らした後、社会復帰した免田栄さんの生活とその証言を軸に、えん罪事件の起こる構図と無罪が証明されるまでの軌跡を追ったドキュメンタリー。◆免田栄さんは、日本初の死刑囚に関する再審裁判（免田事件）の被告だった。２６歳から５７歳半ばまでを獄中で恐怖を背負って生き抜いた。◆戦前の自白強要の思想が残る中で起きた冤罪事件は数多い。