美術品の流転の歴史に焦点を当て、パッカード氏の収集歴と重ね合わせる。長年人々の信仰の対象だった仏像が一度美術品の名を冠すると、運命はあらぬ方向へと変転する。◆大阪・岸和田市の『神於寺縁起絵巻』が断簡となって世界各地で所蔵されている。彼はそのハイライト部分を寸断直前に救った。室町期の三幅一対の表現形態も無視され、離れ離れになっている美術品たち。投資目的ではなく美術品の持つ本当の価値に目を向けよと彼は強調する。◆老梅図（狩野山雪筆）〔メトロポリタン美術館〕、乗興舟（伊藤若冲筆）、神於寺縁起絵巻〔神於寺〕、神於寺縁起絵巻断簡〔バーク・コレクション、ネルソン・アトキンス美術館、メトロポリタン美術館〕

新印象派の創始者でパリ生まれのスーラ。ゴッホなどと印象派を超えることに人生をかけた。スーラは、彼らの表現方法を科学的理論的に発展させて点描画法を編み出した。絵の具で細かく描かれた“点”は、計算された構図の中できらめく光を放つ。大作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」は、１９世紀末の風俗と社会現象を忠実に描写した点描画として記念碑的な作品。３１歳という若さでこの世を去るが、スーラ死後、点描主義も姿を消すこととなる。◆ジョルジュ・スーラ（１８５９〜１８９１）「サーカス」１８９１、「パレード」１８８７−８８、「化粧する女」１８９０、「画家の母」１８８３、「杖にもたれる後姿のモデル」１８７７、「子牛をかつぐ男」１８７６

修行の道、峨山道について、東四柳史明さん（県立図書館加能資料編さん室主任）に聞く。◆峨山道とは永光寺と惣持寺を結ぶ１５里（６０ｋｍ）ほどの道を言い、鎌倉時代後期から南北朝にかけて、両寺の住職であった峨山が通った跡である。◆峨山は師瑩山（けいざん）に導かれ、教団経営に力を発揮し、民間信仰から霊山までさまざまな能登地方の信仰を、曹洞宗に統一した。その後、蓮如が来て浄土真宗が広がるが、峨山道は現在も生き、多くの人たちが修業に励んでいる。

北日本最大の川、北上川の一支流のほとりにある。小さな山里の小学生と先生たちの川との触れあいと暮らしぶりを描く。◆舞台は昔から信仰を集めてきた早池峰山の南西斜面を源流とする川が稗貫川と名を変えるあたり、岩手県稗貫郡大迫町内川目、大償地域。大迫町一帯は、多くの伝説や古い民俗芸能を伝えている。子どもたちの伝統の正月行事、夏の早池峰神社例大祭、大償神楽などを、豊かな自然とともに紹介する。

近代化の中で消えつつある伝統技能、今も脈々と受け継がれている職人技術を横浜市内各地に訪ね、手作りの工程や職人さんたちへのインタビューを交え、年一番組という地道なペースで記録しているシリーズ。◆県内でも、わずか２人だけとなってしまった「かつら職人」を訪ね、かつら合わせ、台ガネ作り、漆塗り、そして髪の毛縫いなど、職人芸ともいうべき全工程を紹介する。

ヨーロッパの多くの巨匠が好んで使ったプルシャン・ブルー。１８世紀初頭ベルリンで偶然の所産として発明されたこの絵の具は、たちまちにして全世界に広がった。幕末の日本で大きな影響を受けた浮世絵はのちにヨーロッパへ渡り、プルシャン・ブルーは特に印象派の画家の間で好んで使われるようになる。浮世絵に関心をよせたゴッホ。そして青の時代に多用したピカソ。しかし発色力が強く、使い方が難しいため、以後急速に人気は落ちる。◆司馬江漠「両国橋図」１７８７、ワトー「シテール島巡礼」１７１７、モネ「散歩・日傘をさす女」１８７５、ルノワール「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」１８７６、ゴッホ「タンギー爺さん」１８８７−８８、ピカソ「自画像」１９０１

強制連行され炭坑労働のすえ死亡した朝鮮人労働者たちの実態や遺族の生活を記録した記録作家の調査活動を通して、忘れられつつある強制連行の実態を明らかにする。◆筑豊の記録作家林えいだいさんは、終戦直前に作られた崎戸炭鉱・端島炭鉱で死亡した朝鮮人労働者の埋火葬認可交付名簿の存在をつきとめ、この名簿をもとに死者の故郷へ１７０通の手紙を送った。これに返事を寄せた２９遺族を韓国に訪ね、強制連行の様子、炭鉱の死者の取り扱い、その後の遺族の生活などの証言を記録した。

普通の家族から飛び出した女性ふたりが、他人の子どもを育てることで新しい家族のつながりを見つけだそうとする姿を描く。（１９９１年１月１０日終了、全４回）◆林圭子は灘の中小酒造メーカーの一人娘。養子の夫・昭三とは子どももなく別居状態である。圭子は神戸六甲のマンションを仕事場にして創作童話の執筆に取り組んでいる。そこへ友人のテレビキャスター・松本リエが転がり込んできた。その上ひょんなことから編集者黒沢の頼みで彼の遠縁にあたる明を預かることになった。